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謎の俺様男①

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「キャーー専務よ!」


遠くからざわつく声が聞こえると思ったら専務か……



今日から次期社長がくるって周りの女性社員は騒いでいた。



次期社長な上にイケメンだってーー



だけど私は違うことでずっとソワソワしていた。



2番目の女だってわかっていたけど、



その彼氏が……職場の上司が



今日職場に結婚を発表するって言われていたから………



『結婚………?』



昨日いつものようにホテルに泊まって夜景を見ている時だった



目の前のキラキラと宝石のように輝く夜景が



一瞬で真っ黒になった瞬間ーー



『あぁ……』



待って、別れるって言ってたじゃん。



……やっぱり嘘だったんだ。



『………おめでとうございます。私帰ります。』



荷物をまとめてドアを開けようとした瞬間手首を掴んでくる



ズルい男。。。



『俺は君が好きだよ。』



『え…?』



『結婚はただの紙切れだ。でも俺が好きなのは君だけだ。』



8年間と長い年月の重みで別れの言葉が出てこない



30歳………これから部長以上の人が現れてくれるの?



『また来月ここで待っているから。』









そう言われて、もう2度と来ないですって言えずに去った私も………







ズルイ女………





「………おい!」



「え?」



「何度名前を呼ばせるんだよ!」



横にはさっきぶつかってしまった社長の息子、専務が強張った表情をして立っている。



専務が私みたいな一般OLに話しかけてくるってことはさっきぶつかったこと怒っているのかな…?



「………あの先ほどは申し訳ございませんでした。」



「は!?………あぁ、ぶつかったことか。」



あれ?違った………?



「ところで……俺のこと知ってる?」



「え……会長のお孫さんで専務…ですよね?」



「……」



「あの……?」



なぜ沈黙?睨んでいる目が怖くて見れない……



「専務、どうかされましたか?」



「葛木部長……」



よかった、助け舟出してくれて……



いつも部下のミスとかをフォローしてくれる葛木部長



入社してからずっとこの部署に私も部長もいて



その頃は課長だったけど葛木部長はいつも優しいからファンが多かった



みんな結婚したりして女性の同期は1人しかいなくなったーー



ここで働いてもう8年



部長にもう甘えてはいけないってわかっているのに甘えてしまう自分が情けないーー



いい加減独り立ちしないといけない


カツカツと音をたてて自分に近寄ってくる音が、なぜだか怒りの音に聞こえるのは何でだろう……



「……秘書になれ。」



「え…?」



「俺の秘書になれ。第一秘書だ!」



「あ、あの…秘書って私やったことないので…」



助け舟を出してくれた部長と私の間に割って専務が入ってきたから、部長の顔は見えない。




どんな顔をしているんだろう…



私がいなくなってホッとしている顔なら……見たくない。



「お前がぶつかったせいで右手が痛いんだ。」



「え!?」



「悪いと思うなら今すぐ荷物まとめて秘書課に来い。」



えぇぇぇ!?ぶつかったこと怒ってない感じだったのに…



でも…良い機会なのかもしれない。



専務が去った瞬間見えた部長の顔は…ホッとしていた。



「渡辺さん……大丈夫?」



「葛木部長…大丈夫です。もうここに8年いましたから、秘書のお仕事もやってみたいので……」



「……無理するなよ。いつでもここに帰ってこい。」



耳元で囁かれる部長の低くて甘い声は



ベッドにいるときの声と同じでーー



結婚したのに、1番にはなれないのに、あのホテルの部屋へ足が向いてしまいそう……



「……部長ッ」



「遅い!行くぞ!」



「あ……」



フラついて部長に向いていた足が前を向いて歩き出す。



ちゃんと前を向いて歩かないと早足の専務に追いつけないーー



よそ見をしている暇も隙もない。



「今からここがお前の仕事場だ。」



通された部屋にはモデルのように背が高く、スラリと伸びた手足は細いのにグラマラスで……



同じ女性とは思えない身体をしているのに、顔もお人形のようにまつ毛が長く目がぱっちりしている。



こんな綺麗な女性たちがいる部屋に入るのが怖い。。。



「気分でも悪い?」



「え……?」



話しかけてくれた女性はこの綺麗な女性達のなかでも特別なオーラがあって、目元にある小さなホクロが妖艶でボタンがはちきれそうな胸元に女性の私でも目がいってしまう。



「チーフの水戸です。これからよろしくお願いします。」



「あ、今日から配属になりました渡辺雪乃です。秘書は初めてなので至らない点が多々あるかと思いますが、頑張りますのでよろしくお願いいたします。」



「初めて…じゃあきっと緊張しているのね?こちらこそよろしくね。」



すごい。。。水戸さんはニコニコしているけど他の人達は突き刺さるような視線で私を見てる。



来ちゃいけないところだったかな?



「渡辺さん、荷物を置いて早速こっちに来てくれる?」



「あ、はい。」



若松さんと話すとすぐに秘書課の人達が専務にお茶はいかがですかと話しかけてる……すごい。




「専務の執事をしております、若松大輔と申します。専務のことなら何でも聞いてください。」



「よろしくお願いします。」



「私は会社の人間ではないので、フランクに接してください。同い年ですし。」



「同い年……」



「……どうかされましたか?」



「いえ……あ、あの…どうしてわたしなのでしょうか?ぶつかったからでしょうか?もっと謝ったほうがいいのでしょうか?」



「……雪乃さんをあの場所から助けてあげたかったんだと思います。」



「助ける……?どうして私を?」



「……あなた、覚えてないんですね。専務のことも……私のことも。」




「え……?」



「雪乃、コーヒー!」



いきなりガチャッという大きな音を立てて中に入ってきたかと思えば、椅子にドカッと座る。



機嫌悪いんですか?と聞かなくても音でわかってしまう。。。



ギロリと睨まれ返事をしていないことに気がついた。



「……あ、はい!」



ん?下の名前呼び捨て!?



さっきの若松さんの言ったこと気になるけど、こんな風に呼び捨てでコーヒー!なんて言う人がいたら覚えているはずなのに……



社会人になってから下の名前で呼ぶ人なんて部長以外いないのに――



「コーヒーは砂糖とミルクはたっぷりでお願いします。」



「は、はい…」



すれ違い様に若松さんにそっと囁かれて何か忘れている気がした。



そういえば前にもこんな風に耳元でそっと囁かれたことがある気がする……



「あら?コーヒー?」



「はい、専務のを…」



「じゃあ私がいれて持って行ってあげる!」



秘書課の皆さんが給湯室にぎゅうぎゅうに押しかけてきて、追い出されてしまった。



「あれ……このカップ…」



子供のころにみたアニメのキャラクターが描かれているカップが奥のほうにある。



「このカップは誰のですか?」



「さぁ?知らなーい。てかそんなダサいカップで専務にコーヒーなんか出せないよ~」



そういってみんな自分が用意した高級ブランドのカップにコーヒーを注いでいる。



「渡辺さん。専務にコーヒーを持っていくのはあなたの仕事だからあなたが持って行って。」



「はい……」



「ほらほら、専務は渡辺さんに頼んだんだからほかの人達は自分の仕事をしてください。」



「すいません、水戸さん。ありがとうございます。」



「これから少しづつ慣れていけばいいわよ。びっくりしたわよね、女性が集まるとこんな感じなのよ。」



ウィンクしながら微笑んでいる水戸さんは女神さまのように見える。



綺麗なのに可愛い…こんな女性になりたいな……



「なぁ、若松。」



「はい。」



「これでよかったのかな…」



「……よかったと思います。」



「……って無言があるってことは思ってないだろ。」



「本音を言ってもいいんですか?」



「いや、言わなくていい。わかってる、ちょっと横暴だったかな…いきなり秘書課って……でもあいつの下で働くのは………」



「……」



「若松、やっぱり言ってくれ。無言が怖い。」



「秘書課もですが……それよりも下の名前の呼び捨てのほうがどうかと思います。」



「え…俺下の名前で呼んでた!?」



「やっぱり自覚なかったんですね。下の名前で呼び捨てで呼んでましたよ、さっき。」



「マジかよ~自覚なかった……」



ノックとともに雪乃がおどおどした表情で中に入ってくる。



「あの…カップこれでよかったでしょうか?」



「これ……ほかにもカップはあっただろう。何でこれにした?」



「専務のじゃないかなと思いまして……」



「え?」



「お好きなんですよね?私も……好きなんです。」



「はぁ!?」



いきなりしかも仕事中に何聞いてくるんだ?



しかも雪乃のほうから告白!?



「別に好きとかじゃなくてただ気になるだけっていうか……でもお前が好きなら付き合ってもいいぞ。」



「え!?本当ですか!?嬉しい……」



え!?何!?こんなにも簡単に付き合えちゃうわけ!?



でも頬染めて照れている姿はやっぱり可愛い……/////

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