クロスな関係。

かのん

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近いのに、遠い……②

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「未亜、こっちよ!」



「お母さん、今日は仕事早く終わったんだね。」



「本当はまだ仕事あったんだけどね…あ、お父さんこっち!」



「おお、今日はみんな早いな。逆にいつも早い美月が遅いのか。」



お父さんもお母さんも学者でずっと研究ばかり…
小さい頃はそれが寂しくて寂しくて…でもお姉ちゃんがそばにいてくれたから、その寂しさを紛らわせてくれた。



「今日はお前も来るのが早いじゃないか。」



「本当はまだやらないといけないことあったんだけど…美月がどうしても今日は遅刻しないでって言うから。」



お姉ちゃんが予約していたお店はフレンチレストランで個室をとっていたようで案内された。




「すごい…こんなお店初めて。」



「ねぇ、あなた、これって…」



「そうだな…そうかもしれない。」



「お母さん?お父さん?」



「ふふ、未亜にはまだわからないかもしれないわね。」



「?」




「美月は誰かを俺たち家族に紹介したいんじゃないか?」



「え!?だってお姉ちゃんそんなこと一言も…」



「遅れてごめんなさい。」



「あ、お姉ちゃん……」



「お父さんもお母さんも、そして未亜も今日は来てくれてありがとう。」



椅子に座っている私たちの顔を一人ひとりじっくりと見つめながら、お姉ちゃんはゆっくりと話す。



「私ね…結婚することにしたの。」




「ほらね。」とお母さんが耳元で囁いてきた。
お父さんとお母さんの勘は当たっていた。
お姉ちゃんが一人暮らしをするようになってからは
実家によく来るとはいえ、さらにお姉ちゃんがどんな生活をしているかなんてわからなかったら、彼氏ができたっておかしくない話だ。



「未亜は驚くと思うけど…」



「え…?」



私はこの時のお姉ちゃんの言葉のあとの出来事は
全部スローモーションにしか見えていなかった。



嬉しそうに、幸せそうに笑っているお姉ちゃんの横に立っていたのは
知っているはずの人なのに
全く知らない人にみえた。



「五ヶ瀬礼人さん。未亜が通っていた高校で教師をしているんだよ。」



知ってる、知っているよ。
だって私の大好きな人だもん。
もう先生と生徒の関係ではなくなったのにーー



「婚約したの、私たち。」



今日の昼間の仕返しなのだろうか。
先生と生徒の時は約束された未来があって
必ず顔を合わせれた、あの時は幸せだったと思ってしまったからなのだろうか。



まさか、これから義兄としての未来が待っているなんて……




礼人さんの驚いた丸い目が忘れられない。
もし、今日ここで会わなかったら、
一週間後あの場所に来たのだろうか?
今まで……どんな思いで私に触れていたのだろうか?



お姉ちゃんが何か話しているけど
私の耳には何も入ってこない。
でもお父さんもお母さんもお姉ちゃんも嬉しそうな顔をしている。



「未亜?驚いちゃった?」



「……え?うん……」



驚いたし…ここにはもういたくない。
お姉ちゃんの幸せそうな声も顔も見れないし
礼人さんがお姉ちゃんの隣にいるのも…耐えられない。



「私…ちょっとお手洗いに。」



「やだ、ごめんなさいね、この子ったら…礼人さん、座ってください。」



「あ、ごめん…」



急に立ち上がった私の肩が礼人さんの腕にぶつかった。
ぶつかったといってもほんの少し触れただけ
触れるか触れないか程度で謝るほどじゃない。
だからこそ、この「ごめん」がどういう意味なのか……



「あ、未亜!ごめんね、礼人。」



「大丈夫。」



「きっと美月が結婚するから寂しいんじゃないかしら。あの子昔からお姉ちゃん子だったから。」



「そうだな、私達がいつも忙しかったから、未亜は美月にベッタリだったからな。さ、座って座って。」




これから私はどんな顔をして礼人さんと会えばいいんだろう。



「何で…どうしてっ……」



「何で」「どうして」
礼人さんに会ったら、出てくる言葉はこれら以外の言葉はない。



何で私にあんなことしたの?
どうして私を抱いてくれないの?




それはお姉ちゃんと結婚するためだったの…?
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