クロスな関係。

かのん

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近いのに、遠い……③

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「いってーな!気をつけろよ!」



「ごめんなさい…」



泣きながらあのお店を出て、鞄の中では携帯がずっと鳴っていた。
心配してくれているのはわかっていたけど
今は一人でこうやって気ままに歩いていたい。



街にはたくさんの人がいて
酔っ払っている人、大声で騒いでいる人、寂しそうに歩いている人、
いろんな人がいて、みんな誰もほかの人のことを気にしない。
私のことも気にかけてくれなくて、気持ちがいい。



「どうしたの~?女の子1人でこんなところで泣いちゃって。」



「え…?」



「まだ未成年でしょ?こんな時間にこんなところで泣いたら変なのにつかまっちゃうよ?」




後ろを振り向くと、黒のスーツにスラリと伸びた長い手足に透き通るぐらい白い肌に金髪がはえる見たこともない男性が立っていた。
スーツ姿は礼人さんでたくさん見てきたけど、この人はきっとホストだ。
綺麗なブラウンの瞳がじっと見つめてくる。



「私、お金ないんで……」



「あ、ごめん。そういうのじゃなくて、泣いていたから心配で。」



アイロンがキチンとかけられてある白いハンカチを男は差し出してきた。



「ありきたりな言葉だけど、男は世の中たくさんいるよ。俺も含めてね♪」



「フッ……」



「そうそう、女の子は笑ったほうが可愛いよ。」



「ホストって本当に女の子が喜びそうな言葉を言うんですね。」



「それが仕事だからね。」



ウィンクして言葉を返してくるこの男性は
自分が思い描いていたようなホストだ。
女の子を喜ばしてくれる人。



「未亜…!!」



「礼人…さん?」



嘘…額から汗を流しながらここまで探しに来てくれたの…?



「心配したんだよ…みんな君を探している。」



「……」



「未亜…話したいことがあるんだ。俺…」




「嫌!!」



自分でも驚いた。
だって礼人さんに会ったら
「何で」「どうして」って攻める言葉が出てくると思っていた。
だけど本当は真実を聞く勇気が私にはない。
だって、礼人さんが好きだからーー



「とにかくここではなんだから…」



「お兄さん♪彼女とどんな関係なの?」



「え…?」



「僕、今彼女と楽しくお話していたんですよね~だから横取りしないでくれませんか?彼女も嫌がっているし。」



「楽しく話って…この子はまだ未成年で君たちが働いているようなお

店にはまだいけないので…」



「もう一回聞きますけど、お兄さんはどういう関係なんですか?」



「それは……っ」



「俺のお店に行こうか、ね?」



「未亜!!」



何も聞きたくない。
何も見たくない。
もう……礼人さんのこと考えたくない。



「ほら、走って!」



「え!?」



腕を引っ張られて、どんどん前に進んで、礼人さんの声がどんどん聞こえなくなる。
人ごみにかき消されて聞こえなくなって、心のどこかでホッとする。



「はぁ~疲れた。久しぶりに走った。てか、酒飲んでるから気持ち悪い……」



「大丈夫ですか!?何か……あ、ちょっと待っててください。」



自販機がちょうどあって、そこでミネラルウォーターを買ってあげることぐらいしか思いつかなかった。



「はい、これ。」



「いいの…ありがとう。優しいね、未亜ちゃんはいつも。」



「え…?」



今「いつも」って言った…?



「あの、もしかして…」



男の人が手をあげると一台のタクシーが目の前に停まった。



「もう帰るのか?」



「違う、違う。この子送っていって。」



「え!?いや、私電車で帰ります。お金ないですし…」



「大丈夫だよ、俺につけとくから。自販機の水のお礼。」



「ダメですそんな!助けてもらったし、自販機の水とタクシー代じゃ……」



「じゃあ、今度また会ったら…その時でいいよ。」



「え…?でも私あなたの名前も知らない…」



「そのほうが運命感じるでしょ?」



半ば強引にタクシーに乗せられて発車してしまった。
優しいんだか、強引なんだか、わからない人。
でも…どこかで会った気がする。



「この香り……」



ハンカチから香る甘い金木犀の香り…どこかでかいだことがある気がする。



「アキラの知り合い?」



「え…?いえ、今日初めて会ったと思うんですけど…あのアキラさんっていうんですか、お名前。」



「いや、本名じゃないと思うよ。あの世界じゃ違う名前の子が多いからね。」



「そうですか……働いているお店とか知っていますか?」



「いや、お店とかそういうのはわからなくて…あの子自身はタクシーは使ったことないんだ。いつもお客さんをこうやって私に乗せてくれるだけで。」



「優しいんですね……」
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