クロスな関係。

かのん

文字の大きさ
10 / 27

近いのに、遠い……④

しおりを挟む
私はあの人にまた会えるのだろうか…?
手に持っているハンカチの匂いをかいで気持ちを落ち着かせる。
お父さんとお母さんと、お姉ちゃんと…そしてその婚約者の礼人さんが待っている家に帰らないといけない。




逃げても逃げても逃げられない。
だって、家族だからーー



『男は世の中にたくさんいるよ』
この言葉を何度もリピートさせて家に着くまで言い聞かせていた。




変わった人だったかもしれないけど
この時の私を落ちつかせてくれたのは
あの男が言ったありきたりな言葉と
ハンカチから香る金木犀の香りだった。




「未亜!どこ行ってたの?心配したじゃない!電話にも出ないで!礼人が見つけてもどこかに知らない男といったって言うから…何かされてない!?大丈夫!?」



「お姉ちゃん…大丈夫だよ。悪い人じゃないよ。知り合い……だし。」



「でも礼人がホストの人とって…本当に知り合いなの?」



「…みんな心配していたんだぞ。」



体に突き刺さるぐらい冷たい目で礼人さんは見つめてくる。
呆れているのかな……



「未亜、お姉ちゃんも礼人君もお前のこと心配して探していたんだから、何か言うことがあるんじゃないか。それにお前がいなくなってから食事会どころじゃなくなったんだぞ。」



お父さんが言っていることは正しい。
自分の行動でみんなを心配させたことは事実だ。





「お父さん、お母さん、お姉ちゃん……そして……っ…先生、ごめんなさい……」







私が“礼人さん”と呼べたのはたったの一日だけ。



“先生”から解放されたのはたったの一日だけ…お姉ちゃんはこれからたくさん礼人さんの名前を呼べるんだ。




私には、これからはもう“お義兄さん”としか呼べない日々が続くのだろうか。








「顔色が悪いようだけど…気分悪いんじゃないか?」



「そんなこと……っ」



「大丈夫か!?」



「未亜!?」



目の前の世界がグラっと揺らいで足元がふらつく。
礼人さんが支えてくれる肩と頭が熱い…。



「熱があるみたい。お母さん何か冷やすもの持ってきて。」



「わかった。あ…薬とか何もないわ。」



「じゃあ私買ってくる。お父さん車出して。」



「あぁ、わかった。」



「礼人は今日は帰って…礼人?」



「部屋は2階?」




「うん…ドアの前にネームプレートがあるよ…」



お姉ちゃんの何か言いたげな顔が見えたけど
頭がボーっとしていて言葉が話せれない。
体がフワフワと動いて、耳元で心地よい鼓動が聞こえる。
この鼓動……礼人さんの鼓動だ。







ねぇ、礼人さん
私たち、もう学校を卒業して
先生と生徒の関係じゃなくなって自由になったはずだったよね?
だけど……お義兄さんになってしまったら
今まで以上に近い関係だけど、すごく遠くに礼人さんを感じる…。



ココロもカラダも本当はそばにいてほしい……。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

無表情いとこの隠れた欲望

春密まつり
恋愛
大学生で21歳の梓は、6歳年上のいとこの雪哉と一緒に暮らすことになった。 小さい頃よく遊んでくれたお兄さんは社会人になりかっこよく成長していて戸惑いがち。 緊張しながらも仲良く暮らせそうだと思った矢先、転んだ拍子にキスをしてしまう。 それから雪哉の態度が変わり――。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

密会~合コン相手はドS社長~

日下奈緒
恋愛
デザイナーとして働く冬佳は、社長である綾斗にこっぴどくしばかれる毎日。そんな中、合コンに行った冬佳の前の席に座ったのは、誰でもない綾斗。誰かどうにかして。

処理中です...