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番外編
嘘つきな魔法使いは、真実を愛したい(2)
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実はこの顔が見たかったのだ。僕は言ってませんでしたっけ、としれっと答えた。
「いちおう第一王子ということになっています。トリトン様のご案内が出来て嬉しいです」
「王子とは、もっと威厳があるものだと思っていた」
はっきりとそう言うトリトンは、悪く言えば尊大に見えるがその分言葉に嘘がなく、聞いていて小気味よい。自分が嘘ばかりついているせいか、余計に好ましく感じるのかもしれない。
「よく言われます。どうも生まれる場所を間違えてしまったようで」
「なるほど。陸の神は気まぐれというからな。だが、お前は王子で、国王が寿命を迎えればすぐに王となる身。そんなお前が私のことを様を付けて呼ぶことは理に反する」
「別によくないですか? トリトン様って、めちゃくちゃトリトン様って感じだし」
「だめだ。今後私のことを尊称を付けて呼んではならん」
「ん~、そしたらトリトンちゃんって呼びますね」
トリトンちゃんがちょっと目を剥いて僕を見る。やっぱりびっくりした顔をすると、ぐっと幼くみえて可愛いなぁ。
「それは…どういう? そう言った呼ばれ方は初めてだ」
「愛しい人に、付ける尊称ですよ」
「愛しい? お前が、私を?」
トリトンちゃんが形のいい眉をあげて怪訝そうに尋ねた。
「ええ、その美しさ。健やかな魂に。貴方をひと目見た時から僕の心はすっかり奪われてしまいました」
心からの言葉をトリトンちゃんに捧げる。トリトンちゃんは、ふーむ、と少し考えてから納得したように頷いた。
「なるほど。私の姿形は人間も好ましく思うのだな」
生真面目にそういうトリトンちゃんが可愛すぎてどうにかなりそうだったが、僕はそろそろ王子らしいところを見せようと、プリンススマイルで話しかけた。
「ところで、トリトンちゃんはどこか見たいものなどありますか? もしよろしければ、周辺を案内したあと宴を開くので今夜は城に泊まっていきませんか?」
「うむ。では世話になろう」
トリトンちゃんは鷹揚に頷き、それでは、と僕の方を見た。
「お前の部屋を見てみたい」
「えっ」
プリンススマイルなんてどこかに飛び去り思わず声を上げる。
「ぼ、僕の部屋ですか?」
「ああ、人間の生態が知りたい。お前の部屋に興味がある」
真っ直ぐな瞳でそんなことを言われれば駄目だと言えるわけがない。
「じゃ、じゃあ今日は市場でもみて明日にご案内するのはどうです? 夜のうちに片しておきますので」
「片さなくて結構。今見るのでよい」
なにかを要求して相手から拒否されたことなどないのだろう。トリトンちゃんは断られるなど微塵も思っていない態度で顎をしゃくった。
「あ、あー……分かりました。その代わり、散らかっていますからね」
仕方なく僕の部屋へとそのまま案内をすることにする。抱っこしようとしたが、少し足が慣れてきたらしいトリトンちゃんは、補助を断って少し頼りなげながらも僕の横についてきた。ちょっと残念だ。
階段を登り、長い廊下を抜け一番奥の部屋の前に立つ。
「ここが僕の部屋です」
「……嗅いだことのない匂いがするな」
部屋の扉の前でトリトンちゃんが眉を寄せた。
「臭いですか?」
「いや、決して不快な香りではないのだが。色んな匂いが混じっているような……不思議な香りだ」
「ご不快じゃないなら良かったです。どうぞ」
扉を開けると、隣でトリトンちゃんが目を見張った。それはそうだろう。床一面に転がったスケッチと絵の具。部屋の中心には大きなイーゼル。とても王子の部屋とは思えない。
「散らかっていて驚いたでしょう」
「……これは、お前が描いたのか?」
トリトンちゃんがイーゼルに立て掛けてあったキャンパスを指さして言った。そこには海の風景画が描かれている。
「まだ途中ですけどね。王子って言っても飾りでやることがないから、ここで日がな一日絵を描いて遊んでるんです」
少し寂しげに言ってみてたが、トリトンちゃんはそんなことは全く気にした風もなくキャンパスをくんと嗅いだ。
「魔法の匂いがする」
「いちおう第一王子ということになっています。トリトン様のご案内が出来て嬉しいです」
「王子とは、もっと威厳があるものだと思っていた」
はっきりとそう言うトリトンは、悪く言えば尊大に見えるがその分言葉に嘘がなく、聞いていて小気味よい。自分が嘘ばかりついているせいか、余計に好ましく感じるのかもしれない。
「よく言われます。どうも生まれる場所を間違えてしまったようで」
「なるほど。陸の神は気まぐれというからな。だが、お前は王子で、国王が寿命を迎えればすぐに王となる身。そんなお前が私のことを様を付けて呼ぶことは理に反する」
「別によくないですか? トリトン様って、めちゃくちゃトリトン様って感じだし」
「だめだ。今後私のことを尊称を付けて呼んではならん」
「ん~、そしたらトリトンちゃんって呼びますね」
トリトンちゃんがちょっと目を剥いて僕を見る。やっぱりびっくりした顔をすると、ぐっと幼くみえて可愛いなぁ。
「それは…どういう? そう言った呼ばれ方は初めてだ」
「愛しい人に、付ける尊称ですよ」
「愛しい? お前が、私を?」
トリトンちゃんが形のいい眉をあげて怪訝そうに尋ねた。
「ええ、その美しさ。健やかな魂に。貴方をひと目見た時から僕の心はすっかり奪われてしまいました」
心からの言葉をトリトンちゃんに捧げる。トリトンちゃんは、ふーむ、と少し考えてから納得したように頷いた。
「なるほど。私の姿形は人間も好ましく思うのだな」
生真面目にそういうトリトンちゃんが可愛すぎてどうにかなりそうだったが、僕はそろそろ王子らしいところを見せようと、プリンススマイルで話しかけた。
「ところで、トリトンちゃんはどこか見たいものなどありますか? もしよろしければ、周辺を案内したあと宴を開くので今夜は城に泊まっていきませんか?」
「うむ。では世話になろう」
トリトンちゃんは鷹揚に頷き、それでは、と僕の方を見た。
「お前の部屋を見てみたい」
「えっ」
プリンススマイルなんてどこかに飛び去り思わず声を上げる。
「ぼ、僕の部屋ですか?」
「ああ、人間の生態が知りたい。お前の部屋に興味がある」
真っ直ぐな瞳でそんなことを言われれば駄目だと言えるわけがない。
「じゃ、じゃあ今日は市場でもみて明日にご案内するのはどうです? 夜のうちに片しておきますので」
「片さなくて結構。今見るのでよい」
なにかを要求して相手から拒否されたことなどないのだろう。トリトンちゃんは断られるなど微塵も思っていない態度で顎をしゃくった。
「あ、あー……分かりました。その代わり、散らかっていますからね」
仕方なく僕の部屋へとそのまま案内をすることにする。抱っこしようとしたが、少し足が慣れてきたらしいトリトンちゃんは、補助を断って少し頼りなげながらも僕の横についてきた。ちょっと残念だ。
階段を登り、長い廊下を抜け一番奥の部屋の前に立つ。
「ここが僕の部屋です」
「……嗅いだことのない匂いがするな」
部屋の扉の前でトリトンちゃんが眉を寄せた。
「臭いですか?」
「いや、決して不快な香りではないのだが。色んな匂いが混じっているような……不思議な香りだ」
「ご不快じゃないなら良かったです。どうぞ」
扉を開けると、隣でトリトンちゃんが目を見張った。それはそうだろう。床一面に転がったスケッチと絵の具。部屋の中心には大きなイーゼル。とても王子の部屋とは思えない。
「散らかっていて驚いたでしょう」
「……これは、お前が描いたのか?」
トリトンちゃんがイーゼルに立て掛けてあったキャンパスを指さして言った。そこには海の風景画が描かれている。
「まだ途中ですけどね。王子って言っても飾りでやることがないから、ここで日がな一日絵を描いて遊んでるんです」
少し寂しげに言ってみてたが、トリトンちゃんはそんなことは全く気にした風もなくキャンパスをくんと嗅いだ。
「魔法の匂いがする」
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