49 / 81
49. 青春なんだそうです
しおりを挟む
ガリューシュとレイドリークス様は、ひとしきり昔話に花を咲かせているようで、あーだったこーだったと言っては、笑っています。
良いなぁ。
私は分不相応な想いがつい口をついて出そうになったことに、びっくりします。
あり得ないことです。
まだ今は、しきたりについて何もわかっていません。
けど、もしも……もしもしきたりがなんてことはない理由だったのなら。
期待しすぎてはいけないけれど、この想いを告げることが許されたら良いな、なんて思いながら二人に連れられて無事に教室へとついたのでした。
その後は、なるべく教室にいるようにし、用を足す際にはカシューリア様に付き添ってもらい、昼食は弟とレイドリークス様と一緒に食べて過ごします。
レイドリークス様には、婚約者のローゼリア様の意向もあると思い丁重にお断りを入れたのですが……。
「これは俺の我儘だから、いくらルルでもきけない、ごめん」
「嫌です、私もききません」
「きかないのは俺だよ、ルル」
「私です」
「っ、心配くらいさせてくれ!!」
「ちょ、殿下声が大きいです」
しーっと人差し指を口に当て声量を下げるよう忠告します。
「あんな思いは、もうしたくないんだ……」
「ローゼリア様の気持ちも、ちょっとは考えてください。それに私の立場も……困るんですとても」
言いたくはなかった一言で、彼を諌めることにしました。
「彼女には、申し訳ないことをしたと思っているよ。け」
「不誠実な男の人は嫌いですっ!」
い、言わせませんよ?!
ここをどこだと思ってるんですか、食堂へと向かう道中ですよ?!?!
こそこそとレイドリークス様に周りに聞こえてしまうと忠告すれば、よくわからない言葉が返ってきます。
「聞かせるように言っているから良いんだ。俺に限っての醜聞を、流す手筈は整っている」
「どういう、ことです?」
「まぁせいぜい元気に、今は俺のことを大船に乗ったつもりで振ってくれ、ってことだよ。……兄上は本気だ。しかも手段を選ぶ気があまりないらしい。あれでも有能なんだ、本人は気づいていないけれど……俺も手段は選んではいられない」
「……容赦、しませんよ?」
「良い。後できっちり回収する」
「? 何か、お考えがあるというなら、乗っかっておきます」
「よろしく頼むよ」
謎な計画に押し切られてしまいました。
なので昼食は三人一緒です。
「え、レイド公爵家の跡取りになったんだ?! そっか、なら姉上との結婚は無理だな」
「諦めたくないんだ! なんとか、どちらかの家を他の者に任せられないか、その手段が無いかを探したいと思ってる。それくらい俺は君の姉上を愛してる」
「友人としては応援したいけど、家の事情だからな。難しいぞ?」
「この体を焼き焦がすほどの想いに比べれば、その困難くらい引き受けるよ」
「ま、せいぜい頑張れや」
「ありがとう、君が味方なのはありがたい」
「勝手を言わないでください! 私、家継ぎますし無理ですからね?!?!」
これ巻き込まれ事故になってませんか?
大丈夫ですか?
移動が終わり食堂の注文口への列に並びながら、私は少し不安に思います。
けれど、弟も彼も何も気にする様子がなく話し続けました。
「わかっているよ。お互い家を継がなくてはいけない身。けれどどうか、想う自由の翼だけは、俺からもいでしまわないでおくれ」
「いや、それ不可能では」
「今だけでも」
「家継ぐんですよね?!」
「勿論」
「お断りしたいです」
「つれないなぁ」
会話が聞こえていたのか、食事を受け取る際に私とレイドリークス様はそれぞれ違うおばさまに、青春ねぇがんばんなさいね、と応援の言葉をいただきました。
席を探して座った後、こっそりと弟とレイドリークス様に尋ねます。
「私、この方向性で本当に大丈夫なんですか?」
「ああ、上々といったところ、かな?」
「悪くないと思うぜ?」
二人が言うならそうなのでしょう。
乗っかると言った以上はこの方向性で私も頑張ろう、と心を決めたのでした。
良いなぁ。
私は分不相応な想いがつい口をついて出そうになったことに、びっくりします。
あり得ないことです。
まだ今は、しきたりについて何もわかっていません。
けど、もしも……もしもしきたりがなんてことはない理由だったのなら。
期待しすぎてはいけないけれど、この想いを告げることが許されたら良いな、なんて思いながら二人に連れられて無事に教室へとついたのでした。
その後は、なるべく教室にいるようにし、用を足す際にはカシューリア様に付き添ってもらい、昼食は弟とレイドリークス様と一緒に食べて過ごします。
レイドリークス様には、婚約者のローゼリア様の意向もあると思い丁重にお断りを入れたのですが……。
「これは俺の我儘だから、いくらルルでもきけない、ごめん」
「嫌です、私もききません」
「きかないのは俺だよ、ルル」
「私です」
「っ、心配くらいさせてくれ!!」
「ちょ、殿下声が大きいです」
しーっと人差し指を口に当て声量を下げるよう忠告します。
「あんな思いは、もうしたくないんだ……」
「ローゼリア様の気持ちも、ちょっとは考えてください。それに私の立場も……困るんですとても」
言いたくはなかった一言で、彼を諌めることにしました。
「彼女には、申し訳ないことをしたと思っているよ。け」
「不誠実な男の人は嫌いですっ!」
い、言わせませんよ?!
ここをどこだと思ってるんですか、食堂へと向かう道中ですよ?!?!
こそこそとレイドリークス様に周りに聞こえてしまうと忠告すれば、よくわからない言葉が返ってきます。
「聞かせるように言っているから良いんだ。俺に限っての醜聞を、流す手筈は整っている」
「どういう、ことです?」
「まぁせいぜい元気に、今は俺のことを大船に乗ったつもりで振ってくれ、ってことだよ。……兄上は本気だ。しかも手段を選ぶ気があまりないらしい。あれでも有能なんだ、本人は気づいていないけれど……俺も手段は選んではいられない」
「……容赦、しませんよ?」
「良い。後できっちり回収する」
「? 何か、お考えがあるというなら、乗っかっておきます」
「よろしく頼むよ」
謎な計画に押し切られてしまいました。
なので昼食は三人一緒です。
「え、レイド公爵家の跡取りになったんだ?! そっか、なら姉上との結婚は無理だな」
「諦めたくないんだ! なんとか、どちらかの家を他の者に任せられないか、その手段が無いかを探したいと思ってる。それくらい俺は君の姉上を愛してる」
「友人としては応援したいけど、家の事情だからな。難しいぞ?」
「この体を焼き焦がすほどの想いに比べれば、その困難くらい引き受けるよ」
「ま、せいぜい頑張れや」
「ありがとう、君が味方なのはありがたい」
「勝手を言わないでください! 私、家継ぎますし無理ですからね?!?!」
これ巻き込まれ事故になってませんか?
大丈夫ですか?
移動が終わり食堂の注文口への列に並びながら、私は少し不安に思います。
けれど、弟も彼も何も気にする様子がなく話し続けました。
「わかっているよ。お互い家を継がなくてはいけない身。けれどどうか、想う自由の翼だけは、俺からもいでしまわないでおくれ」
「いや、それ不可能では」
「今だけでも」
「家継ぐんですよね?!」
「勿論」
「お断りしたいです」
「つれないなぁ」
会話が聞こえていたのか、食事を受け取る際に私とレイドリークス様はそれぞれ違うおばさまに、青春ねぇがんばんなさいね、と応援の言葉をいただきました。
席を探して座った後、こっそりと弟とレイドリークス様に尋ねます。
「私、この方向性で本当に大丈夫なんですか?」
「ああ、上々といったところ、かな?」
「悪くないと思うぜ?」
二人が言うならそうなのでしょう。
乗っかると言った以上はこの方向性で私も頑張ろう、と心を決めたのでした。
0
あなたにおすすめの小説
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。10~15話前後の短編五編+番外編のお話です。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非!
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。 ※R7.10/13お気に入り登録700を超えておりました(泣)多大なる感謝を込めて一話お届けいたします。 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.10/30に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。 ※R7.12/8お気に入り登録800超えです!ありがとうございます(泣)一話書いてみましたので、ぜひ!
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ
しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”――
今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。
そして隣国の国王まで参戦!?
史上最大の婿取り争奪戦が始まる。
リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。
理由はただひとつ。
> 「幼すぎて才能がない」
――だが、それは歴史に残る大失策となる。
成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。
灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶……
彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。
その名声を聞きつけ、王家はざわついた。
「セリカに婿を取らせる」
父であるディオール公爵がそう発表した瞬間――
なんと、三人の王子が同時に立候補。
・冷静沈着な第一王子アコード
・誠実温和な第二王子セドリック
・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック
王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、
王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。
しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。
セリカの名声は国境を越え、
ついには隣国の――
国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。
「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?
そんな逸材、逃す手はない!」
国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。
当の本人であるセリカはというと――
「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」
王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。
しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。
これは――
婚約破棄された天才令嬢が、
王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら
自由奔放に世界を変えてしまう物語。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
悪役令嬢の役割は終えました(別視点)
月椿
恋愛
この作品は「悪役令嬢の役割は終えました」のヴォルフ視点のお話になります。
本編を読んでない方にはネタバレになりますので、ご注意下さい。
母親が亡くなった日、ヴォルフは一人の騎士に保護された。
そこから、ヴォルフの日常は変わっていく。
これは保護してくれた人の背に憧れて騎士となったヴォルフと、悪役令嬢の役割を終えた彼女とのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる