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一章

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 次の日の朝。

 心を決めたからか、すっきりとした気持ちで目が覚めた。
 念の為鍛錬は一旦やめることにしたので、時間がある。

 今日は早めに学院行くことにして、朝食を取って家族にぎゅっとして回ってから館を出た。



 早めに学院に着くと、生徒はまだまばらだった。
 けれど、予測していた通りあちこちから不躾な視線を感じる。

 わたくしが一方的にやったことではないのだから、気にしない事!

 そう自分に言い聞かせて、以前と変わらぬ風に廊下を歩いた。
 そうして早めに教室に着くと、見知った顔がこちらに駆け寄りながら声をかけてきた。

「ーーっ、メルティ!!!」

 彼女は、二番目に婚約者だった方の婚約者。

 って、なんだか言葉にするとなんともややこしい感じね……。

 リリッサはヴァニラテ男爵家の令嬢で、桃色の髪に黒いつぶらな瞳が可愛らしいわたくしのお友達だ。
 二番目の元婚約者、ガイアーク=ルミナリクに言い寄られて悩んでいるところを目撃し、こっそり彼女の後をつけて声をかけ、知り合った。
 わたくしも婚約解消をしたい事を悩んでいたから、知ってもらって二人で協力した仲でもある。
 ルミナリク様はもう顔も見たくなかったので縁遠くなっているけれど、リリッサはとてもたおやかな優しい子で、時折お茶会をしたりしていた。
 そういえばルミナリク様も最終学年で在籍しているんだったかしら…。
 会わないようにしなくっちゃと思っていたら半べそのリリッサに抱きつかれていた。

「倒れたって聞いて、心配しましたの~~~~っ」
「心配してくれてありがとう、リリッサ」
「お元気な姿を見ることができて、わたくし、うれしい……っ。」

 花もほころぶような笑みに、思わずわたくしも抱き返す。

「メ、メルティ?!?」

 途端はわわわわと顔を真っ赤にするリリッサに、遠巻きにしていた男子生徒の何人かの顔が赤らむのが見えた。
 そうでしょうそうでしょう、リリッサはとっても愛らしいんだから。
 あの方にあげるのは勿体無いくらいなのに、人の心っていうのは不思議なものだわ、と改めて思う。
 もちろん、わたくしのこの心も含めて……だけれど。

 そうしながらふと教室を見回すと、教室が別なはずの体格の良い見知った美丈夫の背中が見え、嫌な予感にリリッサから手を離した。
 近づいて声をかける。
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