踏み台令嬢はへこたれない

三屋城衣智子

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挿話

夏季休暇と避暑地 4

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 朝食の後一息入れてから、ベル様と二人、アンナと護衛の方を連れて湖畔へと向かうことになったので準備をする。
 夏の日差しは強いので、帽子と、アンナはお茶の入った水筒を用意していた。

 コンコン

「ベルですわ、入ってもよろしくて?」
「はい、大丈夫ですわ」

 今度はきちんと手順を踏んで、ベル様が声がけをしてくださったので、きちんとお返事をする。
 そろりとドアから入室した彼女も帽子を被り、喜色満面で早く出かけたそうにうずうずしてらっしゃった。

 ちなみにクリスは少し所用があるとの事で、後から合流することになっている。
 ついでに昼食も持ってきてくれるということで、散策というよりかはそれを兼ねたピクニックの予定になった。

「今支度が整いましたから、出られますわ。お待たせいたしました」
「急かしたようになってごめんなさい。けどメルティ様とお出かけするのが、楽しみで……」
「そう言っていただけて嬉しいですわ、ベル様。では、参りましょう。案内していただけるのでしょう?」

 言うとベル様はホッとしたように微笑んだ。

 こうしてみると、どことなくクリスとお顔立ちが似ているような気がしますわね。

 愛しい人を思い浮かべて思わず顔が緩む。
 ベル様もこれから向かう先が楽しみらしく、少しうきうきした様子でわたくしの言葉に返事をした。

「勿論よ!」



 それからわたくし達は湖畔に向けて出発した。
 馬車が走る中、ベル様は主にわたくし自身のお話を聴きたがり、わたくしはクリスの事をベル様に尋ねた。
 とても楽しい時間が過ぎてゆく。
 どれくらい走っただろうか、やがてゆっくりと馬車が止まった。
 目的地へと着いたらしい。
 馬車から降りると、清々しい水の香りがどことなくふんわりと漂ってきた。

「ようこそ王家所有の湖へ! 誰も居ないわたくし達だけの空間なので、足を浸したりと自由にできますのよ」

 ベル様はそう言うなり靴を脱いで裸足になり、湖畔のほとりから片足をとぷんとつける。
 今日は特に日が暑いから、その様子はとても気持ちが良さそうだ。

 わたくしも、湖畔のへりまで行くとベル様に倣って靴を脱ぎ、ドレスの裾を持ち上げるとそろりと足をつけてみた。

 冷たくて、気持ちいい。

 ひいやりとした感触をいっとき楽しんでから周りを見渡すと、ベル様が湖の縁に程よく並べられた岩に腰掛けていたので、そちらへと向かった。

「気持ち良いですわね」
「でしょう? ここは地下から湧き出る水でできてるんですのよ、だから程よく冷たいのです。秋にはこの周辺の領民に期間限定で解放されて、漁もされるんですよ。ほら、あそこに魚が」
「あ、ほんとですわ!」

 初めて見る泳ぐ魚につい、はしゃいでしまって前へ足を出す。
 と、少し急いだからか体のバランスを崩してしまった。

 倒れ込んでしまいますわ――!

 自分ではどうすることもできなくて、覚悟しつつ目をぎゅっとつぶったけれど、衝撃も水の冷たさも体には感じなくて。

「メルティ!!」
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