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挿話
夏季休暇と避暑地 5
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気付けば、クリスに腰を抱かれ助けてもらっていた。
「クリス!」
「足元に気をつけないと危ないぞ」
役得だけどな、とウインクした彼は格好をつけたのが恥ずかしかったのか頬が少し赤い気がする。
急だっただからだろう、彼の足元は靴のまま入ったから濡れてしまっていた。
「クリス、足元が……」
「気にするな、メルティが濡れるより余程良い。遅くなってすまない、そろそろ昼食の時間だそうだから一緒に行こう。ベルもな」
「ついでみたいに言わないでくださいな。ま、メルティ様がいる場では当たり前かしらね」
ベル様に言われた言葉に、なんだかわたくしまで気恥ずかしくなってしまう。
「お兄様ったらほんと、いっつもメルティがメルティがって、話してますのよ。だから、お姉様と初対面な気がしなくって。すぐ仲良くなれましたから、良かったのかもしれませんけど」
そう言って笑う彼女は、確かにクリスの妹とわかる面立ちだった。
その後は設えられたピクニックの場で楽しくご飯をいただきながら、色々なおしゃべりをした。
クリスのご兄弟のこと、ベル様の趣味の刺繍のこと、クリスが、わ、わたくしの事を日頃どう言って、いるか、など。
照れることもあったけれど、とても楽しい時間を、過ごしたのだった。
別荘へと帰った後。
わたくしとアンナはクリスに彼の滞在している部屋へと呼ばれた。
ノックをして許可を貰い部屋へと入る。
と、その時。
わたくしの眼前に、鮮やかなあの日ズタズタになったものと同じ青が広がった。
パフ・スリーブの袖に、背にはシフォン生地が充ててある部分などその上半身はそのままだったけれど。
スカート部分を体の左側五分の一くらいは変えず、また背側の腰からのドレープもそのまま、後ろ右少しと前側の大部分に大幅な変更がされていた。
その変更がされた部分はというと、上から下までシフォン生地の、何重だろうか? 六、七段はあろうかという重なりのそれは繊細に色味が上から下へと水色から白へ。
まるで輝く雪のような、なめらかさで。
その布端にはそれぞれに銀から紺色へと微妙な色の変化をしていくビーズの刺繍があしらわれていた。
――なんて、綺麗。
単純な言葉しか出てこないくらい、わたくしは感極まってしまって。
思わず、目から涙がぽろぽろとこぼれていた。
「気に入ってくれた……ってメルティ?!」
慌てた彼の声と、近寄ってくる靴音が聞こえるけれど。
どうしよう、クリスの姿が見えにくいですわ。
わたくしの涙は止まってくれなかった。
場の空気を察して、アンナがドア付近で待機したままなのを感じる。
クリスは、近くへ来た後、見える足元が逡巡しているのが見てとれた。
その気持ちが、また嬉しくて。
動けないでいると彼の足元がぐっと一歩踏み出し、わたくしは次の瞬間には腕の中に柔らかく包まれていたのだった。
「クリス!」
「足元に気をつけないと危ないぞ」
役得だけどな、とウインクした彼は格好をつけたのが恥ずかしかったのか頬が少し赤い気がする。
急だっただからだろう、彼の足元は靴のまま入ったから濡れてしまっていた。
「クリス、足元が……」
「気にするな、メルティが濡れるより余程良い。遅くなってすまない、そろそろ昼食の時間だそうだから一緒に行こう。ベルもな」
「ついでみたいに言わないでくださいな。ま、メルティ様がいる場では当たり前かしらね」
ベル様に言われた言葉に、なんだかわたくしまで気恥ずかしくなってしまう。
「お兄様ったらほんと、いっつもメルティがメルティがって、話してますのよ。だから、お姉様と初対面な気がしなくって。すぐ仲良くなれましたから、良かったのかもしれませんけど」
そう言って笑う彼女は、確かにクリスの妹とわかる面立ちだった。
その後は設えられたピクニックの場で楽しくご飯をいただきながら、色々なおしゃべりをした。
クリスのご兄弟のこと、ベル様の趣味の刺繍のこと、クリスが、わ、わたくしの事を日頃どう言って、いるか、など。
照れることもあったけれど、とても楽しい時間を、過ごしたのだった。
別荘へと帰った後。
わたくしとアンナはクリスに彼の滞在している部屋へと呼ばれた。
ノックをして許可を貰い部屋へと入る。
と、その時。
わたくしの眼前に、鮮やかなあの日ズタズタになったものと同じ青が広がった。
パフ・スリーブの袖に、背にはシフォン生地が充ててある部分などその上半身はそのままだったけれど。
スカート部分を体の左側五分の一くらいは変えず、また背側の腰からのドレープもそのまま、後ろ右少しと前側の大部分に大幅な変更がされていた。
その変更がされた部分はというと、上から下までシフォン生地の、何重だろうか? 六、七段はあろうかという重なりのそれは繊細に色味が上から下へと水色から白へ。
まるで輝く雪のような、なめらかさで。
その布端にはそれぞれに銀から紺色へと微妙な色の変化をしていくビーズの刺繍があしらわれていた。
――なんて、綺麗。
単純な言葉しか出てこないくらい、わたくしは感極まってしまって。
思わず、目から涙がぽろぽろとこぼれていた。
「気に入ってくれた……ってメルティ?!」
慌てた彼の声と、近寄ってくる靴音が聞こえるけれど。
どうしよう、クリスの姿が見えにくいですわ。
わたくしの涙は止まってくれなかった。
場の空気を察して、アンナがドア付近で待機したままなのを感じる。
クリスは、近くへ来た後、見える足元が逡巡しているのが見てとれた。
その気持ちが、また嬉しくて。
動けないでいると彼の足元がぐっと一歩踏み出し、わたくしは次の瞬間には腕の中に柔らかく包まれていたのだった。
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