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百十一話 自制なんて…
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2週間の北部滞在期間はあっという間に過ぎ、首都へと出発する日がやって来た。
今後は1ヶ月に一度程度の感覚で憲法改正の審議会が行われることもあり、当分の間は北部に戻ることはできなさそうだった。
憲法審議会での議論は順調に進めば半年ほどで終わる可能性もあるが、紛糾すれば1年以上かかる可能性もある。
憲法改正に賛成する勢力と反対する勢力は、今のところ半々ぐらいらしい。
ただ、平民の間ではリリア皇女様の人気が圧倒的に強いことや他の皇位継承権を持つ者の評判が悪いこともあり、会議を続けるうちに憲法改正派が有利になる可能性があると見られている。
それに、軍事面はラウル様が担当することになったことも、憲法改正の後押しをする可能性が高い。
(ただ…グリーン侯爵のような憲法改正反対派が何を仕掛けてくるか分からないのが怖いかも…)
それを警戒してか、首都の本邸の警備と護衛の数が大幅に増やされることになったとラウル様から聞いた。
今も、公爵家の騎士団だけではなく、皇軍の騎士たちや皇宮警察の警官たちが周りを取り囲んでいて、とても物々しい。
好奇心旺盛なカイルは、皇軍の騎士だけではなく皇宮警察の警官にも話しかけたりして交流を楽しんでいたようだ。
「カイル、そろそろ出発だよ」
「はーい!」
皇宮警察の警官と話をしていたカイルに声を掛けると、すぐにこちらに走ってくる。
カイルが話をしていた警官に、私は会釈した。
彼は、私がグリーン侯爵と話をした際に付いてきてくれたイザークという名の警官だった。
ラウル様にも、とても信頼されているらしい。
そのせいもあるのか、カイルも警官の中では彼に一番なついている。
見た目が少し童顔なのも、カイルを安心させる要素なのかもしれない。
(この景色とも、しばらくの間、お別れ…)
シャーレットは首都にいた時間のほうが長いのに、なぜかもうここが故郷のような感じがする。
過ごした時間はたった5ヶ月ほどだけど。
本当にいろんなことがあったから。
「お母さん、どうしたの?」
先に馬車に乗り込んだカイルが、首をかしげている。
「あ、うん、ごめん」
私は慌てて全ての感情を振り払い、馬車に乗り込んだ。
これ以上、景色を見ていると感傷的な気分になりそうだった。
北部を出発して1週間後、私たちは再び首都の本邸に戻ってきた。
途中で眠ったカイルをラウル様と一緒に部屋まで運び、荷物の整理なども終えて寝室に入る頃には、一週間の長旅の疲れを感じた。
私のすぐ後に寝室に入ってきたラウル様は、
「今日はさっさと寝ましょう」
と、私をベッドに促した。
「何もしないので、安心してください」
と、わざわざ付け加えるのは、北部に戻った翌日に私が熱を出してしまったことと関係しているのだろう。
私を布団の中に押し込んで抱き寄せると、額にキスをした。
「明日は早朝から皇宮に行かないといけないのですが、あなたは体をゆっくり休めておいてください。皇女にも呼び出すなと言っておきます」
「そんなに心配してもらわなくても、大丈夫ですよ。皇女様には戻ってきたことも報告しないといけないですし」
私がそう言うと、ラウル様は遠慮がちに言った。
「明日は…なるべく外へは出ないでいただけると助かります」
ラウル様のその言葉で、明日何が行われるのかということに気づいた。
あえて確認するまでもない。
そして、確認したところで、ラウル様は答えることができないはずだ。
「分かりました。お言葉に甘えて、明日はゆっくり休養させて頂きます」
たぶんこの返答が、ラウル様が何も気にせずに職務に集中できるものなのだろうと思った。
「すみません…」
ラウル様が私を抱きしめる腕に力を込めた。
「謝らないでください…私には難しいことは分かりませんが、ラウル様が国のために必要なことをしていることは理解しているつもりです。誰かがやらなくてはいけないことをやっているだけ…」
「もう休みましょう…」
ラウル様は私の話を切り上げるように言って、軽くキスをした。
「おやすみなさい」
私を腕から解放し、ラウル様は目を閉じた。
(眠れないのでは…)
ふと心配になった。
(呆れられるかもしれないけれど…)
私は目を閉じているラウル様の唇にキスをした。
軽いものではなく、深くて長いキスを。
キスを終えて顔をのぞき込むと、ラウル様が困惑したような表情を浮かべていた。
「だめです…自制できる自信がありません…」
「自制なんて…」
私は、もう一度ラウル様の唇にキスをした。
強く腕を捕まれたかと思うと、形勢が逆転していた。
驚く暇もなく、すぐに唇を塞がれた。
私のような生やさしいものではなく、全てを奪い尽くそうとするかのような激しいキスだった。
今後は1ヶ月に一度程度の感覚で憲法改正の審議会が行われることもあり、当分の間は北部に戻ることはできなさそうだった。
憲法審議会での議論は順調に進めば半年ほどで終わる可能性もあるが、紛糾すれば1年以上かかる可能性もある。
憲法改正に賛成する勢力と反対する勢力は、今のところ半々ぐらいらしい。
ただ、平民の間ではリリア皇女様の人気が圧倒的に強いことや他の皇位継承権を持つ者の評判が悪いこともあり、会議を続けるうちに憲法改正派が有利になる可能性があると見られている。
それに、軍事面はラウル様が担当することになったことも、憲法改正の後押しをする可能性が高い。
(ただ…グリーン侯爵のような憲法改正反対派が何を仕掛けてくるか分からないのが怖いかも…)
それを警戒してか、首都の本邸の警備と護衛の数が大幅に増やされることになったとラウル様から聞いた。
今も、公爵家の騎士団だけではなく、皇軍の騎士たちや皇宮警察の警官たちが周りを取り囲んでいて、とても物々しい。
好奇心旺盛なカイルは、皇軍の騎士だけではなく皇宮警察の警官にも話しかけたりして交流を楽しんでいたようだ。
「カイル、そろそろ出発だよ」
「はーい!」
皇宮警察の警官と話をしていたカイルに声を掛けると、すぐにこちらに走ってくる。
カイルが話をしていた警官に、私は会釈した。
彼は、私がグリーン侯爵と話をした際に付いてきてくれたイザークという名の警官だった。
ラウル様にも、とても信頼されているらしい。
そのせいもあるのか、カイルも警官の中では彼に一番なついている。
見た目が少し童顔なのも、カイルを安心させる要素なのかもしれない。
(この景色とも、しばらくの間、お別れ…)
シャーレットは首都にいた時間のほうが長いのに、なぜかもうここが故郷のような感じがする。
過ごした時間はたった5ヶ月ほどだけど。
本当にいろんなことがあったから。
「お母さん、どうしたの?」
先に馬車に乗り込んだカイルが、首をかしげている。
「あ、うん、ごめん」
私は慌てて全ての感情を振り払い、馬車に乗り込んだ。
これ以上、景色を見ていると感傷的な気分になりそうだった。
北部を出発して1週間後、私たちは再び首都の本邸に戻ってきた。
途中で眠ったカイルをラウル様と一緒に部屋まで運び、荷物の整理なども終えて寝室に入る頃には、一週間の長旅の疲れを感じた。
私のすぐ後に寝室に入ってきたラウル様は、
「今日はさっさと寝ましょう」
と、私をベッドに促した。
「何もしないので、安心してください」
と、わざわざ付け加えるのは、北部に戻った翌日に私が熱を出してしまったことと関係しているのだろう。
私を布団の中に押し込んで抱き寄せると、額にキスをした。
「明日は早朝から皇宮に行かないといけないのですが、あなたは体をゆっくり休めておいてください。皇女にも呼び出すなと言っておきます」
「そんなに心配してもらわなくても、大丈夫ですよ。皇女様には戻ってきたことも報告しないといけないですし」
私がそう言うと、ラウル様は遠慮がちに言った。
「明日は…なるべく外へは出ないでいただけると助かります」
ラウル様のその言葉で、明日何が行われるのかということに気づいた。
あえて確認するまでもない。
そして、確認したところで、ラウル様は答えることができないはずだ。
「分かりました。お言葉に甘えて、明日はゆっくり休養させて頂きます」
たぶんこの返答が、ラウル様が何も気にせずに職務に集中できるものなのだろうと思った。
「すみません…」
ラウル様が私を抱きしめる腕に力を込めた。
「謝らないでください…私には難しいことは分かりませんが、ラウル様が国のために必要なことをしていることは理解しているつもりです。誰かがやらなくてはいけないことをやっているだけ…」
「もう休みましょう…」
ラウル様は私の話を切り上げるように言って、軽くキスをした。
「おやすみなさい」
私を腕から解放し、ラウル様は目を閉じた。
(眠れないのでは…)
ふと心配になった。
(呆れられるかもしれないけれど…)
私は目を閉じているラウル様の唇にキスをした。
軽いものではなく、深くて長いキスを。
キスを終えて顔をのぞき込むと、ラウル様が困惑したような表情を浮かべていた。
「だめです…自制できる自信がありません…」
「自制なんて…」
私は、もう一度ラウル様の唇にキスをした。
強く腕を捕まれたかと思うと、形勢が逆転していた。
驚く暇もなく、すぐに唇を塞がれた。
私のような生やさしいものではなく、全てを奪い尽くそうとするかのような激しいキスだった。
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