夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜

梵天丸

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第百八十六話 そういえば…今夜は新月…(※挿絵あり)

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ラウルから届いたメッセージの解析を進め、翌日には新月に向けての作戦会議が行われていた。
メッセージは城の最上階に魔女の居室があること、魔女が集めた人間たちの『代償』は、その居室の近くの部屋に保管されていること、さらに、リリアたちが城に入った時点で、エグラー伯爵令嬢がシャーレットに対して何か仕掛ける可能性があることなどが書かれていた。

「たぶん魔女の契約を利用して、シャーレットに危害を加えようとするのでしょうね」
「それが一番心配ですね。大丈夫でしょうか?奥様は妊娠中ですし…」

マルティンが心配そうに言う。

「一応、お守りを渡してきたのと、シャーレットの部屋の浄化はしてきたけど…ラウルにも頑張ってもらうしかないわね…」
「閣下も対策は考えているようで、あらかじめ時間を知らせてくれたら、それに合わせてエグラー伯爵令嬢が動けないようにすることはできるそうです。ただ、長時間は無理かもしれないと」
「突入の時間に関しては、今夜にでもメッセージを送りましょう」

ディルクが伝えると、リリアはうなずいた。

「城に入ったら、私は魔女の居室のある最上階に直行するわ。できるだけ、早く終わらせる」
「皇女殿下の前後の敵は我々にお任せください」
「頼りにしてるわ。私の身辺の護衛は、いつも通りイザークに任せる。それと、イザークには最上階についたらやってもらいたいことがあるの」
「はい、何でもおっしゃってください」
「なるべく危険はないようにするつもりだけど、多少危険かもしれない」
「問題ありません」
「魔女が集めている人間の『代償』…それが置いてある部屋を、破壊してほしいの。『代償』には実体はないけど、保存する場所を作っているということは、そこが『代償』をとどめておくのに必要な場所だからと思う。だから、部屋を破壊することで、魔女が『代償』を利用した力は使えなくなるはず…」

魔女が集めている『代償』については文献も少なく、手探り状態のところはあった。
ただ、魔女の力を弱める可能性があることは、すべてやっておきたかった。
イザークもそれが分かっていたから、ためらいなくうなずいた。

「分かりました。火薬を使うのが手っ取り早いと思います。少し危険もありますが…」
「城が崩れたりもするかしら?」
「可能性としては否定できません。そうならないようにはしますが…」
「魔女は『代償』をなくすと力が弱まるのよね?」

問われたエトガルは、神妙な顔でうなずいた。

「はい、おそらく。過去の文献にも、代償を失った魔女が力をなくした事例が紹介されていましたから」
「それなら、やるしかないわね。私たちが上にあがったら、なるべく城の中の民間人たちを外へ避難させるようにして。最悪、城が崩壊する可能性も考えて」
「分かりました。でも、あまり無理なことはなさらないでください」
「大丈夫。なるべく早く決着はつけるようにするわ」

たとえ魔女との決着がついたとしても、城が崩れたり、火が回ったりするようなことがあれば、最上階にいるリリアたちの身は危ない。

「炎が出たり城が崩れるような状態にならないように、火薬の量や配置は調整します」

建物の一部を破壊するようなことは、イザークはこれまでにも何度も行ってきた。
ただ、今回は高所であるということ、建物の状態がよく分からないこと、魔女という不確定要素があることなどから、自信を持って「大丈夫」とは言えなかった。

「とりあえず、明後日までにできる限りの準備をして挑みましょう。やれることを、やるしかないわ」


北部の城では、今日も私の部屋にカイルの姿があった。
今日は、お腹の赤ちゃんに、歌を歌って聴かせてくれている。
カイルはチェロの才能もあるけれど、歌も上手だった。



「赤ちゃんに聞こえてるかなぁ」
「うん、喜んでるよ」
「赤ちゃんが、そう言ってるの?」
「言ってる気がするの。お兄ちゃん、歌上手だねって」
「えへへ…」

カイルは照れくさそうに笑った。

「師匠たちや皇女様…まだ戻ってこないのかなぁ」
「そうね…セルデアはけっこう遠いから、もう少しかかるかも」

皇女様たちが北部の城を出発してから一週間が経過しようとしていた。
魔女の霧を見てすぐに戻ると言っていたから、あと数日もすれば戻ってくるだろう。
私は皇女様からもらったブレスレットを見つめる。
これには魔女よけの効果があるらしく、肌身離さず身につけるように言われていた。

(そういえば…今夜は新月…)

エトガルさんは、魔女の力は新月にもっとも弱くなる可能性が高いと言っていた。

(まさか…)

少しいやな予感がした。
あの会議の時、新月に合わせて魔女の封印を行う提案もされていた。
それは確実な方法ではないとうこともあり、行わないことになっていたはずだ。
私も、そんな危険なことはしないでほしいと皇女様に言った。
だから、大丈夫だとは思うけれど…。

(皇女様…どうか無茶なことはしないでください…)

私は祈るような気持ちで、皇女様からもらったブレスレットに触れた。
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