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第5話 距離を越えて — Break the Distance
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金曜日。
碧は朝から胸が高鳴っていた。
有休をとり、鞄ひとつを持って新幹線に飛び乗る。
窓の外に流れていく景色を眺めながら、胸の中では何度も同じ言葉を繰り返していた。
──会いたい。
福岡に着くと、東京とは違う街の匂いがした。
知らないビル、知らない人々。けれど、この街のどこかに涼介がいる。
そう思うだけで、胸の奥が熱くなる。
◆
涼介のマンション前。
スマホで時間を確認する。もうすぐ彼が帰ってくる頃だ。
「仕事が終わったら教えて」とだけ伝えてあるから、涼介はきっと東京にいると思っているはず。
数分後、見慣れた背中が現れた。
スーツ姿の涼介。疲れているのか、歩みは少し重い。
「……涼介」
名前を呼んだ瞬間、彼が驚いたように顔を上げた。
「……碧?」
信じられないものを見るような目。
「有休とって、来ちゃった」
碧が笑うと、涼介はしばらく立ち尽くしたまま、そしてゆっくり息を吐いた。
「……そうか。びっくりした」
「怒ってる?」
「いや」
そう答えたものの、涼介はそれ以上は多くを語らず、碧を促してマンションのオートロックを解除する。
(もしかして、急に来たから怒ってるのかな…)
碧は少し心配になる。
エレベーターの中でも、涼介はほとんど口をきかなかった。
碧の心配が、大きくなる。
◆
玄関のドアが閉まり、カチャリと鍵が回る音がした、その瞬間だった。
手に持っていたビジネスバッグが床に落ちる鈍い音と共に、涼介が碧の腕を掴み、壁に強く押し付けた。
息が詰まるほどの熱量で唇が塞がれる。
「ん……っ、りょおすけ……!」
声にならない声が漏れる。
いつもなら丁寧に触れてくるはずの手が、今は焦りと渇望に満ちて、碧の身体を貪るように彷徨っていた。
靴を脱ぐ間もなく、ジャケットが乱暴に剥ぎ取られる。首筋に顔を埋められ、歯を立てられるほどの激しいキスに、碧の背中がぞくりと震えた。抑えきれない欲求が、一気に弾けたのが分かる。
廊下の壁に押しつけられ、首筋に涼介の唇が触れると、久しぶりの熱に、碧の口から思わず甘い声が漏れた。
「んぁっ…」
自分の身体が驚くほど敏感になっているのを感じ取り、碧は一瞬だけ、理性を取り戻した。
「……待って、ここじゃ……声、響く……っ」
碧が喘ぎながら囁くと、涼介が一瞬動きを止めた。
はっと我に返ったように顔を上げる。その瞳は熱っぽく潤み、理性のタガが外れかけていた。
「……ベッド」
碧がその一言を告げると、涼介は碧の身体を抱き上げた。
そして、そのまま寝室まで運ばれる。
◆
ベッドにそっと碧の身体を横たえると、涼介は再び獣のように唇を塞いだ。
普段はどこまでも優しく、碧を気遣ってくれる彼が、今日は違う。
押さえつける腕の力も、絡みつく舌の熱も、飢えたように碧のすべてを求めていた。
「涼介……っ、いつもと、ちが……っ」
「我慢、できなかった……おまえを見たら…っ…」
低く掠れた声が、命令のように耳元に落ちる。
シャツのボタンは引きちぎられんばかりに外され、熱い素肌が露わになる。そこに触れる涼介の手のひらは火傷しそうなほど熱かった。
驚きつつも、身体の奥が痺れるように疼き出す。
──こんな涼介、知らない。
けれど、たまらなく興奮している自分がいた。
会えなかった時間、募らせた寂しさ、電話越しでは埋められなかった渇望。
それらすべてが、言葉よりも先に身体をぶつけ合わせることで満たされていく。
涼介の熱が、波のように幾度も押し寄せる。
そのたびに碧の身体は甘い痺れに呑まれ、息を詰まらせ、そして彼の名を叫んだ。
絡み合う指先も、熱く濡れた肌も、互いを確かめるように離れなかった。
まるで遠距離という隔たりを、互いの身体で埋め尽くそうとしているかのように。
碧はその熱に溺れ、深い海へ沈んでいくような感覚に身を委ねていった。
◆
やがて嵐が過ぎ去り、二人はシーツの上で汗ばんだ身体を寄せ合った。
涼介の呼吸はまだ荒く、乱れた髪が碧の額に触れている。
「……ごめん。乱暴だったよな…」
低く掠れた声で呟く。
碧は首を振り、涼介の逞しい胸に額を押し当てた。
「嫌じゃなかった。むしろ……涼介が、どれだけ我慢してたか分かって、嬉しかった」
本心からの言葉に、涼介が安堵の息を漏らす。
「本当は……大丈夫だって、自分に言い聞かせてたんだ」
「……」
「毎日声を聞けてるし、連絡もしてる。それで十分なはずだって。でも……全然、違った」
碧の背中に回された腕が、ぎゅっと強さを増す。
「おまえの顔を見た瞬間、全部どうでもよくなった。ずっと触れたくて、どうにかなりそうだった」
その告白に、碧の胸がじんと熱くなる。
「……俺もだよ。涼介に会えなくて、寂しくて死にそうだった。だから、来たんだ」
小さな声でそう告げると、涼介がゆっくりと碧の髪を撫でた。
「来てくれて、本当にありがとう」
その声は微かに震えていて、碧は思わず彼を強く抱きしめ返した。
夜の静けさの中、二人の心臓の音だけが重なって響いていた。
会えなかった時間を埋めるように。
もう二度と、この腕の中から離したくないと互いに願いながら。
************
今回のお話は、YouTubeで配信中の楽曲「距離を越えて — Break the Distance」をベースに作成しています。良かったら、楽曲のほうも聴いてみてくださいね♫
「距離を越えて — Break the Distance」はこちら⇒
碧は朝から胸が高鳴っていた。
有休をとり、鞄ひとつを持って新幹線に飛び乗る。
窓の外に流れていく景色を眺めながら、胸の中では何度も同じ言葉を繰り返していた。
──会いたい。
福岡に着くと、東京とは違う街の匂いがした。
知らないビル、知らない人々。けれど、この街のどこかに涼介がいる。
そう思うだけで、胸の奥が熱くなる。
◆
涼介のマンション前。
スマホで時間を確認する。もうすぐ彼が帰ってくる頃だ。
「仕事が終わったら教えて」とだけ伝えてあるから、涼介はきっと東京にいると思っているはず。
数分後、見慣れた背中が現れた。
スーツ姿の涼介。疲れているのか、歩みは少し重い。
「……涼介」
名前を呼んだ瞬間、彼が驚いたように顔を上げた。
「……碧?」
信じられないものを見るような目。
「有休とって、来ちゃった」
碧が笑うと、涼介はしばらく立ち尽くしたまま、そしてゆっくり息を吐いた。
「……そうか。びっくりした」
「怒ってる?」
「いや」
そう答えたものの、涼介はそれ以上は多くを語らず、碧を促してマンションのオートロックを解除する。
(もしかして、急に来たから怒ってるのかな…)
碧は少し心配になる。
エレベーターの中でも、涼介はほとんど口をきかなかった。
碧の心配が、大きくなる。
◆
玄関のドアが閉まり、カチャリと鍵が回る音がした、その瞬間だった。
手に持っていたビジネスバッグが床に落ちる鈍い音と共に、涼介が碧の腕を掴み、壁に強く押し付けた。
息が詰まるほどの熱量で唇が塞がれる。
「ん……っ、りょおすけ……!」
声にならない声が漏れる。
いつもなら丁寧に触れてくるはずの手が、今は焦りと渇望に満ちて、碧の身体を貪るように彷徨っていた。
靴を脱ぐ間もなく、ジャケットが乱暴に剥ぎ取られる。首筋に顔を埋められ、歯を立てられるほどの激しいキスに、碧の背中がぞくりと震えた。抑えきれない欲求が、一気に弾けたのが分かる。
廊下の壁に押しつけられ、首筋に涼介の唇が触れると、久しぶりの熱に、碧の口から思わず甘い声が漏れた。
「んぁっ…」
自分の身体が驚くほど敏感になっているのを感じ取り、碧は一瞬だけ、理性を取り戻した。
「……待って、ここじゃ……声、響く……っ」
碧が喘ぎながら囁くと、涼介が一瞬動きを止めた。
はっと我に返ったように顔を上げる。その瞳は熱っぽく潤み、理性のタガが外れかけていた。
「……ベッド」
碧がその一言を告げると、涼介は碧の身体を抱き上げた。
そして、そのまま寝室まで運ばれる。
◆
ベッドにそっと碧の身体を横たえると、涼介は再び獣のように唇を塞いだ。
普段はどこまでも優しく、碧を気遣ってくれる彼が、今日は違う。
押さえつける腕の力も、絡みつく舌の熱も、飢えたように碧のすべてを求めていた。
「涼介……っ、いつもと、ちが……っ」
「我慢、できなかった……おまえを見たら…っ…」
低く掠れた声が、命令のように耳元に落ちる。
シャツのボタンは引きちぎられんばかりに外され、熱い素肌が露わになる。そこに触れる涼介の手のひらは火傷しそうなほど熱かった。
驚きつつも、身体の奥が痺れるように疼き出す。
──こんな涼介、知らない。
けれど、たまらなく興奮している自分がいた。
会えなかった時間、募らせた寂しさ、電話越しでは埋められなかった渇望。
それらすべてが、言葉よりも先に身体をぶつけ合わせることで満たされていく。
涼介の熱が、波のように幾度も押し寄せる。
そのたびに碧の身体は甘い痺れに呑まれ、息を詰まらせ、そして彼の名を叫んだ。
絡み合う指先も、熱く濡れた肌も、互いを確かめるように離れなかった。
まるで遠距離という隔たりを、互いの身体で埋め尽くそうとしているかのように。
碧はその熱に溺れ、深い海へ沈んでいくような感覚に身を委ねていった。
◆
やがて嵐が過ぎ去り、二人はシーツの上で汗ばんだ身体を寄せ合った。
涼介の呼吸はまだ荒く、乱れた髪が碧の額に触れている。
「……ごめん。乱暴だったよな…」
低く掠れた声で呟く。
碧は首を振り、涼介の逞しい胸に額を押し当てた。
「嫌じゃなかった。むしろ……涼介が、どれだけ我慢してたか分かって、嬉しかった」
本心からの言葉に、涼介が安堵の息を漏らす。
「本当は……大丈夫だって、自分に言い聞かせてたんだ」
「……」
「毎日声を聞けてるし、連絡もしてる。それで十分なはずだって。でも……全然、違った」
碧の背中に回された腕が、ぎゅっと強さを増す。
「おまえの顔を見た瞬間、全部どうでもよくなった。ずっと触れたくて、どうにかなりそうだった」
その告白に、碧の胸がじんと熱くなる。
「……俺もだよ。涼介に会えなくて、寂しくて死にそうだった。だから、来たんだ」
小さな声でそう告げると、涼介がゆっくりと碧の髪を撫でた。
「来てくれて、本当にありがとう」
その声は微かに震えていて、碧は思わず彼を強く抱きしめ返した。
夜の静けさの中、二人の心臓の音だけが重なって響いていた。
会えなかった時間を埋めるように。
もう二度と、この腕の中から離したくないと互いに願いながら。
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