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第四話 会いたいのに — Longing for You
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涼介が福岡に行ってから、二週間が経った。
今も毎日欠かさず「おはよう」と「おやすみ」のメッセージは届いている。昼休みの一言や、夜のビデオ通話もある。
けれど最近は、既読がつくまでに何時間もかかることが増えた。夜の通話中に、涼介がうとうとし始め、こちらから通話の打ち切りを提案することもあった。
「忙しいんだろうな…」
碧はスマホを手に、何度も画面を見つめる。
昼に送ったメッセージに、まだ既読がつかない。
時刻を確認すると、20時を少し過ぎたところ。
碧も残業中だが、涼介も残業をしているのだろうか。
「……忙しいのは分かってる。わかってるけど」
昼に送ったメッセージぐらい、さっと確認してくれてもいいのに。
メッセージを確認するだけなら、数秒あれば済む話だ。
既読がつくだけでも安心できるのに。
それすらしないなんて。
(そんなに手が離せないことがある…とか? 気を取られている人がいる…とか?)
胸の奥に小さな棘のような不安が芽生える。
──もしかして、誰かと一緒にいるんじゃないか。
そんな考えが頭をよぎるたび、「いや、涼介に限って」と自分を戒める。
信じたい。信じている。けれど、心は思うようにはいかない。
スマホを握る指先に、自然と力がこもった。
信じているはずなのに、ふと「自分の知らない誰かと笑っているんじゃないか」と想像してしまう。
そんな自分が情けなくて、深く息を吐いた。
◆
仕事は相変わらず忙しかった。
新しい案件の修正が重なり、朝から晩までパソコンに向かう日々。
デザイン事務所の同僚に声をかけられる。
「最近疲れてる? 大丈夫?」
「うん、ちょっと寝不足かな」
「彼女のこと?」
からかうような笑顔に、碧は苦笑するしかなかった。
さすがに「彼氏がいる」とは言えないので、会社の同僚たちには「彼女がいる」と伝えてある。
自分はまだ恵まれている、と頭では分かっている。
同僚は独立に向けて準備を始めているし、周囲のクリエイターたちも次のステージを模索している。
その中で碧は、仕事に追われながら、涼介との時間を思い出しては胸を支えていた。
独立を考えている同僚の背中を見ながら、「自分もいずれは何かを変える時期に来るのかもしれない」と思った。
けれど今は、それよりも涼介との距離に心を取られている。
夜、自宅に戻っても、隣に涼介の気配はない。
並んで置いた歯ブラシや、冷蔵庫の中に残っている同じブランドのヨーグルトが、かえって寂しさを募らせた。
会えないことが、こんなにも心を締めつけるとは思わなかった。
夜、涼介からビデオ通話が入った。
画面に映った彼は、少し痩せたように見える。
「大丈夫? 顔色悪いよ」
「仕事が、思ったよりハードで……でもなんとかやってる。LINE、確認するの遅れてごめん…」
「忙しいんだから、仕方がないよ」
碧は、少しでも涼介を疑った自分を反省した。
この様子では、本当に今にも倒れてしまいそうなほど、忙しいに違いない。
「無理しないで。今日はもう寝た方がいいよ」
「いや、大丈夫。おまえの顔を見てたら、元気が出てきた」
笑ってみせるけれど、目の下には薄い影。
「気を遣わせてるな。ごめん…」
「ううん、そんなこと気にしないで」
沈黙が落ちたあと、不意に涼介が唇を噛んだ。
そして、抑えきれないように声を洩らした。
「……碧に会いたい」
その言葉は、予想していたよりもずっと切実で、胸に響いた。
思わず言葉を失った碧の耳に、涼介の息遣いが生々しく届く。
「本当に……今すぐにでも会いたい」
静かな部屋に、彼の感情が溢れ出す。
碧の心臓が強く脈打った。
寂しさも不安も、その一言で溶けていくように感じた。
胸の奥に溜まっていたもやが、一気に晴れていくようだった。
──ああ、同じなんだ。
涼介も、自分と同じように会えなくて苦しんでいる。
その事実が、涙が滲むほど嬉しかった。
**************
今回のお話は、YouTubeで配信中の楽曲「会いたいのに — Longing for You」をベースに作成したものです。良かったら、楽曲のほうも聴いてみてくださいね♫
「会いたいのに — Longing for You」はこちら⇒ https://youtu.be/SaqgtRTOmgs
今も毎日欠かさず「おはよう」と「おやすみ」のメッセージは届いている。昼休みの一言や、夜のビデオ通話もある。
けれど最近は、既読がつくまでに何時間もかかることが増えた。夜の通話中に、涼介がうとうとし始め、こちらから通話の打ち切りを提案することもあった。
「忙しいんだろうな…」
碧はスマホを手に、何度も画面を見つめる。
昼に送ったメッセージに、まだ既読がつかない。
時刻を確認すると、20時を少し過ぎたところ。
碧も残業中だが、涼介も残業をしているのだろうか。
「……忙しいのは分かってる。わかってるけど」
昼に送ったメッセージぐらい、さっと確認してくれてもいいのに。
メッセージを確認するだけなら、数秒あれば済む話だ。
既読がつくだけでも安心できるのに。
それすらしないなんて。
(そんなに手が離せないことがある…とか? 気を取られている人がいる…とか?)
胸の奥に小さな棘のような不安が芽生える。
──もしかして、誰かと一緒にいるんじゃないか。
そんな考えが頭をよぎるたび、「いや、涼介に限って」と自分を戒める。
信じたい。信じている。けれど、心は思うようにはいかない。
スマホを握る指先に、自然と力がこもった。
信じているはずなのに、ふと「自分の知らない誰かと笑っているんじゃないか」と想像してしまう。
そんな自分が情けなくて、深く息を吐いた。
◆
仕事は相変わらず忙しかった。
新しい案件の修正が重なり、朝から晩までパソコンに向かう日々。
デザイン事務所の同僚に声をかけられる。
「最近疲れてる? 大丈夫?」
「うん、ちょっと寝不足かな」
「彼女のこと?」
からかうような笑顔に、碧は苦笑するしかなかった。
さすがに「彼氏がいる」とは言えないので、会社の同僚たちには「彼女がいる」と伝えてある。
自分はまだ恵まれている、と頭では分かっている。
同僚は独立に向けて準備を始めているし、周囲のクリエイターたちも次のステージを模索している。
その中で碧は、仕事に追われながら、涼介との時間を思い出しては胸を支えていた。
独立を考えている同僚の背中を見ながら、「自分もいずれは何かを変える時期に来るのかもしれない」と思った。
けれど今は、それよりも涼介との距離に心を取られている。
夜、自宅に戻っても、隣に涼介の気配はない。
並んで置いた歯ブラシや、冷蔵庫の中に残っている同じブランドのヨーグルトが、かえって寂しさを募らせた。
会えないことが、こんなにも心を締めつけるとは思わなかった。
夜、涼介からビデオ通話が入った。
画面に映った彼は、少し痩せたように見える。
「大丈夫? 顔色悪いよ」
「仕事が、思ったよりハードで……でもなんとかやってる。LINE、確認するの遅れてごめん…」
「忙しいんだから、仕方がないよ」
碧は、少しでも涼介を疑った自分を反省した。
この様子では、本当に今にも倒れてしまいそうなほど、忙しいに違いない。
「無理しないで。今日はもう寝た方がいいよ」
「いや、大丈夫。おまえの顔を見てたら、元気が出てきた」
笑ってみせるけれど、目の下には薄い影。
「気を遣わせてるな。ごめん…」
「ううん、そんなこと気にしないで」
沈黙が落ちたあと、不意に涼介が唇を噛んだ。
そして、抑えきれないように声を洩らした。
「……碧に会いたい」
その言葉は、予想していたよりもずっと切実で、胸に響いた。
思わず言葉を失った碧の耳に、涼介の息遣いが生々しく届く。
「本当に……今すぐにでも会いたい」
静かな部屋に、彼の感情が溢れ出す。
碧の心臓が強く脈打った。
寂しさも不安も、その一言で溶けていくように感じた。
胸の奥に溜まっていたもやが、一気に晴れていくようだった。
──ああ、同じなんだ。
涼介も、自分と同じように会えなくて苦しんでいる。
その事実が、涙が滲むほど嬉しかった。
**************
今回のお話は、YouTubeで配信中の楽曲「会いたいのに — Longing for You」をベースに作成したものです。良かったら、楽曲のほうも聴いてみてくださいね♫
「会いたいのに — Longing for You」はこちら⇒ https://youtu.be/SaqgtRTOmgs
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