【R18】墜ちた将校、恩讐に啼く【完結済】

譚月遊生季

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第一章 哀れみも、誉れも、愛も

第7話「酒を飲むと本性が現れる」※

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 翌日、聞かされていた通りフェルディナンドと同じ部隊に配属命令が下る。
 そこで、初めてエミリアーノ・マローネ中尉とやらと顔を合わせた。

「ジャコモくん、だったね。いきなりで悪いんだけど……倉庫の整理を手伝ってくれる? ついでにものの場所も教えるから」
「……はい、了解であります!」

 正直かったるいが、仕方ねぇ。
 いきなりサボるのもなんだし、今は好印象を稼いどくか。……正直、中尉の仕事じゃねぇ気もするが。

「いやぁ、ありがとうねぇ。助かるよ」

 正直なところ、軍人とは思えないくらい穏やかなおじさんだった。ゆるくウェーブのかかった栗毛に眼鏡って風貌で、外見もマジで軍人らしくねぇ。
「無理な作戦を決行した」ってのが信じ難いくらい、温厚なおじさんだ。……いや、まあ、人は見かけによらねぇか。
 知り合いにも、温厚に見せかけて平気でタマを取ってくる野郎はザラにいる。つっても、その手合いだったら、とっくに少佐あたりにでも昇進してるだろうけどな。

「しかし……あのフェルドくんが人を推薦するなんて、珍しいね」
「……そうなんですか?」
「うん。だって彼、他人に興味がないから」

 まあ、そうだろうよ。見てりゃわかる。
 しかし……しれっと愛称で呼ぶあたり、妙に勇気があるな、この人。家のことやら何やらを考えりゃ、中尉と少尉ぐらいの差ならフェルディナンドの方が立場が上だろうに。



 その後、片付けが一段落したあたりで、マローネ中尉からまた声をかけられた。

「……ああ、そういえば。今夜、酒場に行くよ。君の歓迎も兼ねてね」
「お、イイですねぇ!」

 返事は思い切り機嫌良く、ハッキリと。どんな時であっても、どんな場所であっても酒は良いもんだ。
 情報や信頼を得たいなら、酒をみ交わすのは基礎中の基礎だしな。

「それと、そろそろ昼休みの時間だね」
「あー……そういや、そうですね」
「私はゆっくり昼寝シエスタでもして来るから、君ものんびりしなよ」

 ぽん、と肩を叩き、マローネ中尉は「じゃあチャオ!」とにこやかな笑みで立ち去っていく。
 ……ま、「のんびり」する気はねぇけどな。
 同じ部隊に配属されたってことは、昼休憩の時間が把握できるってことだ。……少なくとも、上官にはな。



 ***



 倉庫から出たところで、フェルディナンドと鉢合わせた。

「……来い」

 あごで指図されたが、あえて動かない。

「おい、どうした」
「別にぃ?」

 すっと身体を近づければ、フェルディナンドは一歩、二歩と後ずさる。
 奴の背中が壁についたところで、背後の壁にもたれかかるようにして追い詰めた。



「……何のつもり……ンッ!?」

 憎々しげに見つめてくるので、唇を奪う。
 フェルディナンドは慌てて顔を離し、辺りを伺った。

「何を考えている……!」

 声を潜めて問われれば、ニヤリと笑って答える。

「愛情表現だよ」
「……ふざける余裕があって何よりだ」

 フェルディナンドは唇を噛んで拳を握り締め、今度こそ先導するように歩き出した。
 冷静な風を装ってはいるが、そろそろ仕方なくなってる頃だろう。そう思えば、憎たらしさより可愛らしさの方が断然勝ってくる。

「今日、ここは人の出入りがない」

 使われていない会議室に入り、フェルディナンドは内側からしっかりと鍵をかける。
 それを見届けて、背後から抱き着いた。

「ん……」

 軍服の上から胸を揉みしだき、ズボンにも手をかける。
 白い首筋に舌を這わせれば、「あっ」と、良い声で啼いてくれた。

「あ……ぁっ、ん……」

 指で中を擦り、唇をむさぼる。
 舌を絡め、更に奥深くへと口付ければ、とろとろと蜜が溢れて指の付け根にまで垂れてくる。
 軍服の前をはだけさせ、机の上に座らせて、ぷっくりと腫れた突起を吸った。

「ん……ッ、ぁ、むね……っ、んぁあっ」
「エッロい乳しやがって」

 じゅるじゅるとむしゃぶりつきながら、濡れそぼった孔の方も指でしっかりいじめてやる。
 フェルディナンドは片手で口を押さえながら、びくん、びくんと身体を跳ねさせ、手の隙間から熱い吐息を漏らす。
 指を締め付ける壁が細かく震え、軽くイッたと分かった。

「……っ、う……ふ、ぅううっ」
「続きは夜、ベッドでな」

 耳元で囁けば、フェルディナンドは不服そうにしながらも黙って頷く。
 さて、甘味ドルチェは酒盛りの後に取っておくか。



 ***



 酒盛りの席で、マローネ中尉は別人へと変貌した。

「さぁ!! 飲むわよー!!!」

 人は見かけによらねぇ。
 それは、常々思ってたことだ。
 ……けど、まさか本性が「こんな感じ」だとは思わねぇだろ。

「新兵くん、あたしのことはエミリアって呼んでね。堅苦しい態度もナシで良いわ!」

 ええー……呼びたくねぇーーーーー。
 めっちゃキスとかハグとかしたそうな顔してるーーーー。俺、こう見えて一途なんだよなぁーーーー。

「よっ! エミリア中尉!」
「さすが我らが万年中尉まんねんちゅうい!」

 待て待て、伍長やら上級伍長やら下士官連中が盛り上がってるが、良いのかそれで。仮にも将校に対してそれでいいのかあんたら。

「あらぁ、万年中尉だなんて失礼ね。昇進できないんじゃなくて、しないのよ。可愛い坊やたちラガッツィのためにね」

 いや、何のウィンクだよそれ。

「うおおおおぉ流石は俺たちの母ちゃんマンマだぜ!!!」

 どうした軍曹。もう酔い回ってんのか。早ぇよ。

「あたしは今の立場に満足よ。だって……若い子達の晴れ姿を見守っていられるんですもの。……ね?」
「あーはい、そっすかー 。楽しそうデスネー」

 こっちに話題を振られたので、ワインを飲みつつテキトーに相槌を打つ。
 温厚なおじさんだと思ってたら、まさかの皆の母親マンマだった。……いや、どういうことだよ。

「うふふ。あたしとは仲良くしてた方がおトクよ」
「……へぇ?」
「人呼んで『魔獣討伐軍の生き字引じびき』。恋バナでも人事でも、噂ならあたしに任せてちょうだい?」

 ……なるほどな。噂好きのたぐいか。
 そりゃ、フェルディナンドも貸しを作っとくはずだ。
「情報」ってのは貴族社会でも裏社会でも、強力な武器になり得る。

 さて、貸切の酒場の中、騒いでる連中を見渡すが、フェルディナンドはなかなか見つからない。……にしても、前回の作戦に失敗したにしては数が多いな。奴の配属も変わったのか……?
 こういうのは、貴族様の舞踏会とは訳が違う。すみっこで飲んでそうだな……と思ってたら、案の定ワイン樽の陰で物憂ものうげにワイングラスを傾けてやがった。

殿、このたびはご推薦どうも……」

 突っついてやろうと近づくと、周りが「マジかよ」という目で俺を見る。
 まあ名門貴族の出で領主の息子だもんな。普通は気が引けて当然か。

「今……」

 フェルディナンドはテーブルにグラスを置き、熱っぽい瞳で俺を見る。
 お、エロい。なんて思ったのもつかの間……

「なぜ、『名門のお前が少尉なのか』と……笑っただろう」
「え、誰もそんなこと……」
「ほう。なぜ『少佐ではなく少尉なのか』……とでも、言いたげな顔ではないか」
「思ってねぇですよ!?」

 いやいやいや、まだ24だろこいつ。将校なら少尉で普通じゃねぇ!? 馬鹿にされるようなことじゃねぇだろ、どう考えても……!
 周りが「あーあ」って顔でこっちを見ている。
 えっ、まさか、この野郎……酒癖悪いのか……!?

「軍に入るのが遅い、と。どうせ士官候補生の時期に落第らくだいでもしたのだろうと……そんな顔ではないか」
「えっ……いや全然そんなこと……」
「侮るなッ! 私とて貴様や父上に言われずとも理解している……!」
「話聞けよ!?」

 ベッドの上ではあんなに可愛いのに、今は殺気と迫力がすごい。しかも、どう考えても話が通じそうにないときた。

「こらこら、フェルドちゃん。噛み付かないの」

 ……と、そんな酔っぱらい野郎の首根っこを掴む男……いや、女(?)が一人。
 ……中尉殿ぉ!?

「ダメよ。新兵くんに変な絡み方しちゃあ」

 そのまま、彼……いや、彼女(?)は、自分より背が高い野郎の頭をナデナデ……
 ち……ちちちち中尉殿ぉおお!?

「……はい」

 撫でられたフェルディナンドは、怒るどころか素直に頷き、大人しくなった。
 ……嘘だろ……!?

「あー、やっぱり、酔った少尉殿は中尉殿にしか止められませんなぁ」

 そんな声まで聞こえてくる。
 ……こ、このオッサン(オバサン?)……。
 ぐぅ……! やるじゃあねぇか……!
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