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序章 鬼の棲む処
第十二話 朴念仁
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あんまりにも思考が読めないので、問うてみる。こいつの生い立ちやら生き様やら、おれは何も知らねぇしな。
「あんた、妻子はどうした? その歳ならいてもおかしくねぇだろ」
俺たちは怪異だ。見てくれはあんまり頼りにならねぇかもしれねぇが、見てくれだけで言やぁ、少なくともおれとそこまで歳の差があるようには見えねぇ。
数百年前ならなおさら、誰かしらを娶ってるのが普通だろう。
「許嫁はいたが……顔も知らぬ。相手方は、乱によって没落の憂き目にあったゆえ……」
顔も知らねぇ許嫁……か。
そういや、平安や鎌倉の高貴な女は、男どもに顔を見せないのが当たり前なんだったか? 話には聞いたことはあるが、どうにもピンと来ねぇな。……別世界の話すぎてよ。
「……まあ、確かにな。あんたが祝言の前に手ぇ出す手合いにゃ見えねぇさ。……だがよ、そのツラだ。大層女にはもてたんじゃねぇのか」
「吾は歌が詠めぬ。恋文の類は返歌に困るゆえ、全て断った」
そういや和歌のやり取りが云々ってのも聞いたことはある。あるが……武士でそこまでするやつ、あんまり聞かねぇぞ……?
「あんた、やっぱりあれだろ。ドがつくほど真面目だが、びっくりするほど馬鹿だろ」
「やはり……歌を詠めぬは、問題であったか」
「そこじゃねぇよ」
……なんてことを話し、大きく天を仰ぐ。
朴念仁だとは思っていたが、ここまで酷いとは思わなかった。
おれだって仲間内では「色男」だとかなんだかんだと言われたが、別に大した遍歴があったわけでもねぇ。本心から好き合ったのはお貴ぐらいなもんだ。……だが、手は出した。嫁入り前だろうが関係ねぇ、やることはやった。
嫁のお綾とは愛された覚えも愛した覚えもねぇが、仲人の顔を立てるためにしっかりガキは拵えた。
それに対して刹鬼はなんだ。清廉潔白すぎて、逆に女泣かせだろ……!
「……わかった。わかった。あんたが色恋沙汰に疎い朴念仁だってのは嫌というほどわかった」
「左様か……」
おれが何を話したいのか、いまいち刹鬼には伝わっていないらしい。
合点がいかない顔っつーか……頭の上に「?」が浮かんでるのが見え見えっつーか……。
「おれは確かにあんたを欲望の捌け口にしたが、それはそうとしてできることなら気持ち良くなって欲しいし、あんたの眼に関しては純粋に心配だ。……ここまで言やあわかるか?」
「……髑髏殿は、お優しいのだな」
ふっと目を伏せ、しんみりと呟く刹鬼。
う……うわーっ、やめてくれマジで!
そりゃダメだ。真っ直ぐ過ぎてぶっ刺さる。優しさなんざ戦場にとっくに置いてきてんだよ!
「……そりゃナシだ。碌でなしにそんなこと言うもんじゃねぇ」
「ふ、ふむ……?」
照れ隠しに頭をガシガシと掻いてから、刹鬼の肩をしっかりと掴む。
刹鬼はビクッと犬か猫のように毛を逆立てながらも、あくまで冷静に「……どうなされた……?」と問うてきた。
「とにかくだ! その身体にゃおれのことを覚えてもらわなきゃならねぇ。今後もたっぷり刻みつけてやるから、覚悟しろよ」
「相分かった」
刹鬼はキリッと真面目な顔で、しゃんと背筋を伸ばして座す。
……おれは今、要するに「今後もあんたをいっぱい犯してやる」と言ったわけなんだが……。
本当にわかってんのかねぇ……?
「あんた、妻子はどうした? その歳ならいてもおかしくねぇだろ」
俺たちは怪異だ。見てくれはあんまり頼りにならねぇかもしれねぇが、見てくれだけで言やぁ、少なくともおれとそこまで歳の差があるようには見えねぇ。
数百年前ならなおさら、誰かしらを娶ってるのが普通だろう。
「許嫁はいたが……顔も知らぬ。相手方は、乱によって没落の憂き目にあったゆえ……」
顔も知らねぇ許嫁……か。
そういや、平安や鎌倉の高貴な女は、男どもに顔を見せないのが当たり前なんだったか? 話には聞いたことはあるが、どうにもピンと来ねぇな。……別世界の話すぎてよ。
「……まあ、確かにな。あんたが祝言の前に手ぇ出す手合いにゃ見えねぇさ。……だがよ、そのツラだ。大層女にはもてたんじゃねぇのか」
「吾は歌が詠めぬ。恋文の類は返歌に困るゆえ、全て断った」
そういや和歌のやり取りが云々ってのも聞いたことはある。あるが……武士でそこまでするやつ、あんまり聞かねぇぞ……?
「あんた、やっぱりあれだろ。ドがつくほど真面目だが、びっくりするほど馬鹿だろ」
「やはり……歌を詠めぬは、問題であったか」
「そこじゃねぇよ」
……なんてことを話し、大きく天を仰ぐ。
朴念仁だとは思っていたが、ここまで酷いとは思わなかった。
おれだって仲間内では「色男」だとかなんだかんだと言われたが、別に大した遍歴があったわけでもねぇ。本心から好き合ったのはお貴ぐらいなもんだ。……だが、手は出した。嫁入り前だろうが関係ねぇ、やることはやった。
嫁のお綾とは愛された覚えも愛した覚えもねぇが、仲人の顔を立てるためにしっかりガキは拵えた。
それに対して刹鬼はなんだ。清廉潔白すぎて、逆に女泣かせだろ……!
「……わかった。わかった。あんたが色恋沙汰に疎い朴念仁だってのは嫌というほどわかった」
「左様か……」
おれが何を話したいのか、いまいち刹鬼には伝わっていないらしい。
合点がいかない顔っつーか……頭の上に「?」が浮かんでるのが見え見えっつーか……。
「おれは確かにあんたを欲望の捌け口にしたが、それはそうとしてできることなら気持ち良くなって欲しいし、あんたの眼に関しては純粋に心配だ。……ここまで言やあわかるか?」
「……髑髏殿は、お優しいのだな」
ふっと目を伏せ、しんみりと呟く刹鬼。
う……うわーっ、やめてくれマジで!
そりゃダメだ。真っ直ぐ過ぎてぶっ刺さる。優しさなんざ戦場にとっくに置いてきてんだよ!
「……そりゃナシだ。碌でなしにそんなこと言うもんじゃねぇ」
「ふ、ふむ……?」
照れ隠しに頭をガシガシと掻いてから、刹鬼の肩をしっかりと掴む。
刹鬼はビクッと犬か猫のように毛を逆立てながらも、あくまで冷静に「……どうなされた……?」と問うてきた。
「とにかくだ! その身体にゃおれのことを覚えてもらわなきゃならねぇ。今後もたっぷり刻みつけてやるから、覚悟しろよ」
「相分かった」
刹鬼はキリッと真面目な顔で、しゃんと背筋を伸ばして座す。
……おれは今、要するに「今後もあんたをいっぱい犯してやる」と言ったわけなんだが……。
本当にわかってんのかねぇ……?
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