僕たちは永遠の時を与えられたので訳アリ魔女を倒してまわることにした

ぜろのいち

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【ゼロ章】時空の木こりたち(序-2)兄妹の小さな異変(本人たちは、まだ気づいてません)

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 その夜、ヴァルターは自室のベッドに横になりながら、父親の話を反すうしていた。
 時の見張り人……時空の狭間を感じ取る力……
 確かに、最近変なことが多い。
 例えば、薪を割っている時。斧を振り下ろす瞬間、時間がゆっくり流れるように感じることがある。まるで、自分だけが別の時間軸にいるような感覚。
 でも、それが特別な力だなんて、にわかには信じがたい。
「お兄ちゃーん、まだ起きてる?」
 隣の部屋から、イヴリンの声が聞こえてきた。
「起きてるよ。どうした?」
「なんか、眠れない。お父さんの話、怖かったから」
 ヴァルターは苦笑いを浮かべた。イヴリンは強がりを言うけれど、実は怖がりなのだ。
「大丈夫だよ。お父さんがいるじゃないか」
「でも……私たち、本当に特別な力なんて持ってるのかな?」
 実は、イヴリンも最近気になることがあった。
 人と話していると、時々相手の心の声のようなものが聞こえてくるのだ。「この子、変わってるな」とか「今日は疲れた」とか。でも、それを口に出したら変に思われそうで、誰にも言えずにいた。
「分かんないけど……でも、お父さんが嘘をつくとは思えないし」
「そうだね」
 兄妹はしばらく黙っていた。
 そんな時、家の外から奇妙な音が聞こえてきた。
 ヒュゥゥゥ……ヒュゥゥゥ……
 まるで風が何かを呼んでいるような、不気味な音だった。
「……お兄ちゃん、今の音……」
「俺も聞こえた」
 ヴァルターはそっとベッドから起き上がり、窓に近づいた。外を覗いてみると——
 森の向こうで、薄っすらと青白い光が揺らめいていた。
「イヴリン、ちょっと来てみろ」
「え? 怖いよぉ」
「大丈夫、一緒に見るだけだから」
 イヴリンも恐る恐る窓に近づく。そして、その光景を見た瞬間——
 二人の頭の中に、同時に声が響いた。
 ——『時が……歪んでいる』——
「今の声……」
「聞こえた?」
 兄妹は顔を見合わせた。
 その時、階下からドタドタと慌ただしい足音が聞こえてきた。どうやら父親が起きてきたらしい。
「ヴァルター! イヴリン! 窓から離れろ!」
 ハインリヒの切迫した声に、二人は慌てて窓から飛び退いた。
 すると、青白い光はスッと消えて、森は元の静寂を取り戻した。
 階段を駆け上がってきたハインリヒが、二人の部屋に飛び込んでくる。
「大丈夫か? 何か見えたか?」
「お、お父さん……青い光が……」
「やはりか」
 ハインリヒは険しい表情で窓の外を見つめた。
「ついに始まったな……」
「始まったって、何が?」
 ヴァルターの問いに、父親は振り向いた。その顔は、今まで見たことがないほど深刻だった。
「魔女の影響だ。この森にも、ついに歪みが現れ始めている」
 そして、ハインリヒは二人の肩をしっかりと掴んだ。
「いいか、お前たち。これからは絶対に夜中に外を見てはいけない。何が聞こえても、どんな光が見えても、決して外に出てはならない」
「で、でも……」
「でもも何もない! これは命に関わることなんだ!」
 父親の剣幕に、兄妹は縮こまった。
 でも、その時——
 一階から、マルガレーテの奇妙な笑い声が聞こえてきた。
 クスクス……クスクス……
 三人は息を呑んだ。
「……まさか」
 ハインリヒの顔が青ざめる。
 兄妹には分からなかったが、父親だけは理解していた。
 ——継母の心に、もう魔女の囁きが届いている。
 事態は、想像以上に深刻だった。
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