僕たちは永遠の時を与えられたので訳アリ魔女を倒してまわることにした

ぜろのいち

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【ゼロ章】時空の木こりたち(序ー4)継母の苦渋の決断(実は魔女の罠でした)

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 翌朝、マルガレーテが朝食の支度をしている姿は、どこかいつもと違っていた。
 ヴァルターは薪を割りながら、なんとなく継母の様子を見る。
「なんか、お母さんの雰囲気が変じゃない?」
 隣で洗濯物を干していたイヴリンも、首を傾げた。
「うん……なんというか、妙に決意を固めたような顔してる」
 確かに、マルガレーテの表情は昨夜までの迷いを振り切ったような、不自然な意志の強さを示していた。
 朝食の時間になると、マルガレーテは家族を呼び集めた。
「みんな、大切な話があります」
 その口調は、普段の優しい継母とは明らかに違っていた。ハインリヒが眉をひそめる。
「どうした、マルガレーテ?」
「ヴァルター、イヴリン。あなたたちは、もう立派な大人です」
 突然の宣言に、兄妹は顔を見合わせた。
「え? あ、はい……」
「だから、そろそろ自分の道を見つける時が来たのだと思います」
 マルガレーテは、まるで暗記したセリフを読み上げるように言葉を続ける。
「この家にいても、みんなで飢え死にするだけです。でも、あの森には不思議な力がある。きっと、あなたたちなら新しい運命を切り開けるはず」
「ちょっと待て、マルガレーテ!」
 ハインリヒが立ち上がった。彼の顔は青ざめている。
「まさか、子どもたちを森に送り出すつもりか!?」
「これは愛情です」
 マルガレーテの目は、どこか焦点が定まっていなかった。
「愛しているからこそ、自立の機会を与えてあげるべきなのです。いつまでも手元に置いておくのは、エゴでしかありません」
 その言葉を聞いた瞬間、ハインリヒの背筋に冷たいものが走った。
 ——これは、マルガレーテの言葉ではない。
 明らかに、何者かに操られている。
「マルガレーテ、正気に戻れ! それは魔女の——」
「お父さん、大丈夫だよ」
 ヴァルターが父親の言葉を遮った。
「お母さんの言ってることも、分からなくはないし」
「そうよ。私たち、もう大人だもん」
 イヴリンもうなずく。
 実は、兄妹も薄々感じていたのだ。このままでは家族全員が共倒れになってしまうかもしれない、ということを。
 それなら、自分たちが出て行って、家の負担を減らした方がいいのかもしれない。
「でも、ヴァルター、イヴリン……!」
 ハインリヒは必死に止めようとしたが、マルガレーテの決意は固かった。
「明日の朝、出発してください。私が、お弁当を用意します」
 その夜、ハインリヒは一人で考え込んでいた。
 ——東の魔女め、ついにマルガレーテの心を完全に操ったか。
 でも、今さら真実を話したところで、子どもたちが信じるだろうか。
 それに、もしかしたらこれは避けられない運命なのかもしれない。
 時の眷属の血を引く兄妹が、いつか試練に立ち向かわなければならない日は、必ず来る。
 だとすれば——
 ハインリヒは深いため息をついた。
 せめて、子どもたちが無事に帰ってくることを祈るしかない。
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