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日本防衛編
ノアの最終試練その1
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「さぁ、来なよ。ボクを止めてみせろよ!ニンゲン!!!」
もはや神の北上を止めるものは無かった。水を操る最大の質量攻撃は50メートルを超える大波を引き連れ人の文明の証を均した。
「ヤツは波の頂点でサーフィンのように待機してやがる。見晴らしがいい、不意打ちは基本不可能だ。」
なら、と癒瘡木が続けて凄む。
「最高速度、最小面積、最大威力の一点集中!!」
敵が巨大なら核を狙う。プラント討伐の基本である。
八重筒はしゃがみ込み剣を上段に、正面へと向けて身体を癒瘡木に委ねた。
「お前が一番槍だ!人体射出機癒瘡木!!ファイアッ!」
ソニックブーム。八重筒の構えた剣先は空気が作る分厚い壁すら貫いた。
「また投擲?芸がないんじゃない?」
ノアには攻撃が手にとるように分かっていた。操る雨全てがノアの触角であり、身体の一部。
『創世記の選別』
ノアは全力を出した時の世界の変容をそう名付けた。これは過去に起きた大量絶滅の一つの要因である。
全神経を大気と世界に同期させる。雨に当たるあらゆる情報がノータイムで彼女の脳に入ることになる。
知覚とは手に入るものの全ての掌握といえるだろう。つまり、ノアは雨に当たる全てを原子の構造までを理解し、浸透し、意のままに操る。
ソレが引き起こす視覚的な情報は箱舟の顕現。人間の文明である建造物は船の芯材となった。
「ウソだろ?!」
癒瘡木の投擲により高速度でノアに接近する八重筒は、目の前で急造される戦艦のような舟に恐怖した。
0.1秒ずつにも満たない視覚情報の更新は10メートル、100メートル、1000メートルと段々と巨大になる舟を映す。
「(防御間に合うか?!)」
舟との衝突タイミングを合わせて、船底に剣を突き立てる。
─キィィィン!刹那に閃光と金属音が響く。
「かってぇええ!!元はビルだろ?!」
「益々規格外だな、神の子は。」
─ドオォン!船底を殴る者がいた。歪な程に右腕を膨張させた癒瘡木である。
彼の一撃は見事、大穴を開けることに成功した。
「規格外は隊長もですよ…バケモノ。」
「褒め言葉として受け取っておこう。」
彼らが侵入した舟は既に内装が完成している。
「ノアは甲板だ。急いで上がるぞ。」
「待ってください隊長。…何かいる。」
八重筒が気づいた異変、それは直ぐに姿を見せた。
『グルルルル…』
「方舟にはあらゆる生物の番が乗せられていたらしい。」
「じゃあ、これは先客ですね。」
2人の前に姿を見せたのは頭が獅子、背中に翼が生え、尾が蛇の怪物である。
体長は有に5メートルを超える。
「六郎太。コイツを任せてもいいか。この腕は温存しておきたい。」
「…貸し一つでもいいですか?」
「フッ、いいだろう。」
癒瘡木は次の階層に向けて走り出す。もちろんソレを怪物が黙って見逃すはずも無く、癒瘡木に飛び掛かる。
「まぁ、落ち着きなよ。あの人鈍いから俺と戦ったあとでも追いつけるんじゃない?」
『ギャッ!ギャウ!!』
敵の初撃。鋭い爪での薙ぎ払いをいとも容易く受け流す。
『グルル…』
キメラは目線を落とす。自分の体長の5分の1にみたない劣等種があろうことか自慢の攻撃を流したのだ。
コノニンゲンハ敵なのだ!と、認めざるを得ない。
「そうか、君はそういうヤツなのか。」
臨戦体制に入ったキメラは翼を広げる。昆虫のような剛性のある翼。そしてその中心にはこちらを見つめる二つの目があった。
『グオオオオ!!!!』
身が揺れるほどの咆哮。衝撃波は八重筒の行動を狭める。
身体の痺れる八重筒に巨大な手の振り上げの攻撃が来る。
「(タイミングを合わせて刀を回すッ!)」
幸いキメラの腕は丸太のような巨大な円柱であった。それならば避けることは可能。
『グワッ!!』
避けた八重筒。回避の最中、彼が残したのは螺旋状の切り傷である。
「お返し。じゃあ次はこっちから行くよっ!」
身体の痺れが取れた八重筒は素早く攻勢に出る。幸い速度でなら、キメラに太刀打ちできる。2度も攻撃を受けて実感した。
ブォン!ブォン!
右腕、左腕、口、連撃をキメラは行う。それを間一髪で避け続ける八重筒。
『グ!ガウ!』
当たりそうで当たらない。そのもどかしい状態でストレスで大振りになっていく。
「今ッ!」
その隙を八重筒が見逃すはずがない。
─カァン!…ボト。
『グッギイいい!!!?!』
「まずは右腕もらいっ!」
──偶に空間に響く衝突音。八重筒が後ろで戦っていることを示す。癒瘡木は方舟の甲板目指すべくフロアの探索を行っていた。
「広いな。扉が一定間隔にある。客室か?」
試しに一つ破壊してみる。その一室は奇妙なほど涼しく強い風が吹いていた。
「…本部。」
癒瘡木は血の気が引くような眼前の事実を正確に伝える。
「大砲だ。同様の部屋がいくつもある。恐らくこのフロアで数百、次の階層も含めると数千門が設置してある…」
─ブチブチッ!
「蔦だ。おそらく、ヤブガラシ。大砲に巻きついて発射準備をしてやがった。」
「(ノアは何と戦うためにこんなモノを。)」
事実、海を操り陸を奪い、遂には制空権までを奪うこの戦艦。明らかに人類に向けてのものではない。
「進もう。少なくともこの大砲で犠牲者は生まれない。」
──次第に空は灯を灯す。空が瞼を開ける寸前に、雲を割る塊が彼らの元に接近してくる。
「蓮…!!」
「舟?」
情報は無かった。俺達は【水を操る】ことがノアの能力だと誤解させられていたのだ。
「これじゃあ、阿波木副隊長の支援が期待できない…」
八重筒と癒瘡木隊長の2人では根本的に相性が悪い。能力者が早く出ないといけないのかもしれない。
「蓮。待機よ。2人の通信は切れていないし、未知の能力まで確認できた。動くのはリスクが大きい。」
「…そうだな。」
冷静になれ。八重筒なら大丈夫だ。侵入も舟が一番近づいてきたタイミングでいいんだ。
友を思うが故の焦燥と不安を押し殺す。そう、作戦成功の為に。
──2人の判断は正しかった。ノアの【創世記の選別】はノアの潜在能力全て解放する。
「侵入者は2人。一名はキメラと交戦中、一人は大分奥まで入られたな。癒瘡木硬樹どんだけタフなんだよ…」
次にノアは意識を上陸地へと向けた。
「やはり神木蓮と氷室玲衣はいないか。」
何処かで雨宿りをしているのだろう。
「だが、もはや関係ない。あらゆる力を束ねても今の私を止められるモノは存在しない。」
ノアを包むのは全能感。人類が束になったとしても彼女を討ち取ることはできないと思う自信。
「バアル。おねえちゃんが全て終わらせてあげるからね。」
船首にて、ノアは手を振る。空気中の雨粒が至る所で集合し始めた。一つ、二つと巨大な球が完成していく。
『ニンゲンヨ。これは最後の選択ダ。私を殺すか、キサマラガ滅ぶか。選べ。』
それは隕石。それは落水。滝であり、只事ではない。地球の名の下に重力がそれを可能とする。絶対的な質量による大規模破壊。
今まで耐えたのは癒瘡木硬樹のみ。
『隕水ッ!!』
もはや神の北上を止めるものは無かった。水を操る最大の質量攻撃は50メートルを超える大波を引き連れ人の文明の証を均した。
「ヤツは波の頂点でサーフィンのように待機してやがる。見晴らしがいい、不意打ちは基本不可能だ。」
なら、と癒瘡木が続けて凄む。
「最高速度、最小面積、最大威力の一点集中!!」
敵が巨大なら核を狙う。プラント討伐の基本である。
八重筒はしゃがみ込み剣を上段に、正面へと向けて身体を癒瘡木に委ねた。
「お前が一番槍だ!人体射出機癒瘡木!!ファイアッ!」
ソニックブーム。八重筒の構えた剣先は空気が作る分厚い壁すら貫いた。
「また投擲?芸がないんじゃない?」
ノアには攻撃が手にとるように分かっていた。操る雨全てがノアの触角であり、身体の一部。
『創世記の選別』
ノアは全力を出した時の世界の変容をそう名付けた。これは過去に起きた大量絶滅の一つの要因である。
全神経を大気と世界に同期させる。雨に当たるあらゆる情報がノータイムで彼女の脳に入ることになる。
知覚とは手に入るものの全ての掌握といえるだろう。つまり、ノアは雨に当たる全てを原子の構造までを理解し、浸透し、意のままに操る。
ソレが引き起こす視覚的な情報は箱舟の顕現。人間の文明である建造物は船の芯材となった。
「ウソだろ?!」
癒瘡木の投擲により高速度でノアに接近する八重筒は、目の前で急造される戦艦のような舟に恐怖した。
0.1秒ずつにも満たない視覚情報の更新は10メートル、100メートル、1000メートルと段々と巨大になる舟を映す。
「(防御間に合うか?!)」
舟との衝突タイミングを合わせて、船底に剣を突き立てる。
─キィィィン!刹那に閃光と金属音が響く。
「かってぇええ!!元はビルだろ?!」
「益々規格外だな、神の子は。」
─ドオォン!船底を殴る者がいた。歪な程に右腕を膨張させた癒瘡木である。
彼の一撃は見事、大穴を開けることに成功した。
「規格外は隊長もですよ…バケモノ。」
「褒め言葉として受け取っておこう。」
彼らが侵入した舟は既に内装が完成している。
「ノアは甲板だ。急いで上がるぞ。」
「待ってください隊長。…何かいる。」
八重筒が気づいた異変、それは直ぐに姿を見せた。
『グルルルル…』
「方舟にはあらゆる生物の番が乗せられていたらしい。」
「じゃあ、これは先客ですね。」
2人の前に姿を見せたのは頭が獅子、背中に翼が生え、尾が蛇の怪物である。
体長は有に5メートルを超える。
「六郎太。コイツを任せてもいいか。この腕は温存しておきたい。」
「…貸し一つでもいいですか?」
「フッ、いいだろう。」
癒瘡木は次の階層に向けて走り出す。もちろんソレを怪物が黙って見逃すはずも無く、癒瘡木に飛び掛かる。
「まぁ、落ち着きなよ。あの人鈍いから俺と戦ったあとでも追いつけるんじゃない?」
『ギャッ!ギャウ!!』
敵の初撃。鋭い爪での薙ぎ払いをいとも容易く受け流す。
『グルル…』
キメラは目線を落とす。自分の体長の5分の1にみたない劣等種があろうことか自慢の攻撃を流したのだ。
コノニンゲンハ敵なのだ!と、認めざるを得ない。
「そうか、君はそういうヤツなのか。」
臨戦体制に入ったキメラは翼を広げる。昆虫のような剛性のある翼。そしてその中心にはこちらを見つめる二つの目があった。
『グオオオオ!!!!』
身が揺れるほどの咆哮。衝撃波は八重筒の行動を狭める。
身体の痺れる八重筒に巨大な手の振り上げの攻撃が来る。
「(タイミングを合わせて刀を回すッ!)」
幸いキメラの腕は丸太のような巨大な円柱であった。それならば避けることは可能。
『グワッ!!』
避けた八重筒。回避の最中、彼が残したのは螺旋状の切り傷である。
「お返し。じゃあ次はこっちから行くよっ!」
身体の痺れが取れた八重筒は素早く攻勢に出る。幸い速度でなら、キメラに太刀打ちできる。2度も攻撃を受けて実感した。
ブォン!ブォン!
右腕、左腕、口、連撃をキメラは行う。それを間一髪で避け続ける八重筒。
『グ!ガウ!』
当たりそうで当たらない。そのもどかしい状態でストレスで大振りになっていく。
「今ッ!」
その隙を八重筒が見逃すはずがない。
─カァン!…ボト。
『グッギイいい!!!?!』
「まずは右腕もらいっ!」
──偶に空間に響く衝突音。八重筒が後ろで戦っていることを示す。癒瘡木は方舟の甲板目指すべくフロアの探索を行っていた。
「広いな。扉が一定間隔にある。客室か?」
試しに一つ破壊してみる。その一室は奇妙なほど涼しく強い風が吹いていた。
「…本部。」
癒瘡木は血の気が引くような眼前の事実を正確に伝える。
「大砲だ。同様の部屋がいくつもある。恐らくこのフロアで数百、次の階層も含めると数千門が設置してある…」
─ブチブチッ!
「蔦だ。おそらく、ヤブガラシ。大砲に巻きついて発射準備をしてやがった。」
「(ノアは何と戦うためにこんなモノを。)」
事実、海を操り陸を奪い、遂には制空権までを奪うこの戦艦。明らかに人類に向けてのものではない。
「進もう。少なくともこの大砲で犠牲者は生まれない。」
──次第に空は灯を灯す。空が瞼を開ける寸前に、雲を割る塊が彼らの元に接近してくる。
「蓮…!!」
「舟?」
情報は無かった。俺達は【水を操る】ことがノアの能力だと誤解させられていたのだ。
「これじゃあ、阿波木副隊長の支援が期待できない…」
八重筒と癒瘡木隊長の2人では根本的に相性が悪い。能力者が早く出ないといけないのかもしれない。
「蓮。待機よ。2人の通信は切れていないし、未知の能力まで確認できた。動くのはリスクが大きい。」
「…そうだな。」
冷静になれ。八重筒なら大丈夫だ。侵入も舟が一番近づいてきたタイミングでいいんだ。
友を思うが故の焦燥と不安を押し殺す。そう、作戦成功の為に。
──2人の判断は正しかった。ノアの【創世記の選別】はノアの潜在能力全て解放する。
「侵入者は2人。一名はキメラと交戦中、一人は大分奥まで入られたな。癒瘡木硬樹どんだけタフなんだよ…」
次にノアは意識を上陸地へと向けた。
「やはり神木蓮と氷室玲衣はいないか。」
何処かで雨宿りをしているのだろう。
「だが、もはや関係ない。あらゆる力を束ねても今の私を止められるモノは存在しない。」
ノアを包むのは全能感。人類が束になったとしても彼女を討ち取ることはできないと思う自信。
「バアル。おねえちゃんが全て終わらせてあげるからね。」
船首にて、ノアは手を振る。空気中の雨粒が至る所で集合し始めた。一つ、二つと巨大な球が完成していく。
『ニンゲンヨ。これは最後の選択ダ。私を殺すか、キサマラガ滅ぶか。選べ。』
それは隕石。それは落水。滝であり、只事ではない。地球の名の下に重力がそれを可能とする。絶対的な質量による大規模破壊。
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