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第9話
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***
「起きなさい倫也!」
黒い羽。俺は飛び起き彼女の肩を両手で押さえた。
「バキリア! シミルはどこだ!」
「やられたわ。どこにいるのか検討がつかない。ロー......なんとか! 考えある?」
「ローリオだ。貴様、確か禁忌召喚士だったな。ならば匂いを辿れる獣を召喚できるか?」
「ちょっとダサいけど......仕方ないっ禁忌召喚!」
彼女は草原色の犬を召喚した。彼女の召喚した中では一番かわいい部類だろう。ローリオは犬に何かを嗅がせると、犬は意外にも真っ先に移動を始めた。
「何を嗅がせたんだ?」
「先ほどシミル様からハンカチを御貸しいただいた次第」
「いや何借りてんだよ」
「確かに我としても少し許しがたいが、おかげで彼女を終えることもまた事実なのでは?」
その言葉には否定できなかった。ほかに残っていたのは彼女の氷だけだった。むしろ救われたことに礼を言うのが正しいぐらいだった。
「置いてくわよ」
「それは勘弁、参るぞ倫也殿」
「その呼び方はやめろ。倫也でいい」
「そうか」
彼は信頼したような笑顔を俺に見せた。別にそうなりたかったわけじゃない。これが俺なりのねぎらいだ。
だがどうしてシミルばかり狙おうとする? まさかだんだんと気温が上がっているから、じゃなさそうだな。疑問は晴れなかった。
***
私は鉄の棒に磔にされていた。お母様の姿は見当たらない。氷を作ろうとすると、体が締め付けられる。私は何もできなかった。
「ごめんなさいシミル。窮屈だったでしょう?」
「お母様!」
お母様は部屋に入っても私を解放してはくれなかった。
「すべては私の責任。あなたが思い悩むことなんて何1つないのよ。だからそのまま少しの間じっとしていてね」
「お母様、何を?」
「普通が一番よ。あなたのそんな不気味な力には消えてもらうの」
「嫌ですお母様! この力は私の生きがいなんです! 私だけにしかない......」
「黙りなさいシミル! あなたに何がわかるというの? あなたも彼のように恰好のいい言葉だけを残して消えてゆくというの? そんなことさせないわ。あなたは幸せに暮らしてほしいの。それを望む私が悪いというの?」
「……」
私はお母様に何も言い返せなかった。確かにお母様は何も悪くない。悪いのは何でも喧嘩で解決しようとしている私なんだ。こんな力がなかったら、お母様はずっと笑ってくれるのかな? それなら......
「そう、そのままじっとしていて。そうすればすぐに楽になれるから」
紫色の光が私を包む。綺麗で雪を見ているときを思い出した。パパ様、ママ様、元気かな......
「ずいぶんと物騒な能力封印陣ね」
お母様の......お母様の姿が消えた......違う。お母さまの首が姿を消した。誰? 誰なの? 震えが止まんない。動けない。力を入れるたびに強く締められる。
「そんなにおびえる必要はありません。といってもあなたは私達のことを知らないのですから、その態度は当然ともいえますね」
2人は天井から姿を見せた。どちらも私と同じ女性。けれど彼女たちは王都の紋章の入った服を着ていました。
「私の名はカイン。隣にいるのはピエラだ」
「……」
私と目を合わせても彼女は口を開いてはくれませんでした。やっぱりこういった人は心も冷たいのかも......
「気にしないでね。ちょっと無口なときはいつも何か考え事してるときだから」
「そ、そうですか......」
倫也さんたちに会いたい。どうして私ばっかりがこんなにものみたいに誰かに捕らわれなければいけないんだろう。私が何かしたのかな。それともこの力は、人を不幸に......
頭を撫でられた。
「心配いらないよ。私達は王都の潜入調査員。君のように命を狙われている人物を助けるのがボクたちの使命なんだ」
2人の敬礼している姿、カッコいい。私もあんな風になれるかな。
「そうだったんですか。ありがとうございます」
「君に仲間はいるの?」
「はい、優しい人たちが2人」
「そっか。それなら合流できるよう手配を......」
ピエロさんがカインさんの肩を叩いた時、私は2人の目の色が変わったのを見逃せませんでした。そしてそれは倫也さんと出会えるときを先延ばしにしてしまうものでした。
「起きなさい倫也!」
黒い羽。俺は飛び起き彼女の肩を両手で押さえた。
「バキリア! シミルはどこだ!」
「やられたわ。どこにいるのか検討がつかない。ロー......なんとか! 考えある?」
「ローリオだ。貴様、確か禁忌召喚士だったな。ならば匂いを辿れる獣を召喚できるか?」
「ちょっとダサいけど......仕方ないっ禁忌召喚!」
彼女は草原色の犬を召喚した。彼女の召喚した中では一番かわいい部類だろう。ローリオは犬に何かを嗅がせると、犬は意外にも真っ先に移動を始めた。
「何を嗅がせたんだ?」
「先ほどシミル様からハンカチを御貸しいただいた次第」
「いや何借りてんだよ」
「確かに我としても少し許しがたいが、おかげで彼女を終えることもまた事実なのでは?」
その言葉には否定できなかった。ほかに残っていたのは彼女の氷だけだった。むしろ救われたことに礼を言うのが正しいぐらいだった。
「置いてくわよ」
「それは勘弁、参るぞ倫也殿」
「その呼び方はやめろ。倫也でいい」
「そうか」
彼は信頼したような笑顔を俺に見せた。別にそうなりたかったわけじゃない。これが俺なりのねぎらいだ。
だがどうしてシミルばかり狙おうとする? まさかだんだんと気温が上がっているから、じゃなさそうだな。疑問は晴れなかった。
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私は鉄の棒に磔にされていた。お母様の姿は見当たらない。氷を作ろうとすると、体が締め付けられる。私は何もできなかった。
「ごめんなさいシミル。窮屈だったでしょう?」
「お母様!」
お母様は部屋に入っても私を解放してはくれなかった。
「すべては私の責任。あなたが思い悩むことなんて何1つないのよ。だからそのまま少しの間じっとしていてね」
「お母様、何を?」
「普通が一番よ。あなたのそんな不気味な力には消えてもらうの」
「嫌ですお母様! この力は私の生きがいなんです! 私だけにしかない......」
「黙りなさいシミル! あなたに何がわかるというの? あなたも彼のように恰好のいい言葉だけを残して消えてゆくというの? そんなことさせないわ。あなたは幸せに暮らしてほしいの。それを望む私が悪いというの?」
「……」
私はお母様に何も言い返せなかった。確かにお母様は何も悪くない。悪いのは何でも喧嘩で解決しようとしている私なんだ。こんな力がなかったら、お母様はずっと笑ってくれるのかな? それなら......
「そう、そのままじっとしていて。そうすればすぐに楽になれるから」
紫色の光が私を包む。綺麗で雪を見ているときを思い出した。パパ様、ママ様、元気かな......
「ずいぶんと物騒な能力封印陣ね」
お母様の......お母様の姿が消えた......違う。お母さまの首が姿を消した。誰? 誰なの? 震えが止まんない。動けない。力を入れるたびに強く締められる。
「そんなにおびえる必要はありません。といってもあなたは私達のことを知らないのですから、その態度は当然ともいえますね」
2人は天井から姿を見せた。どちらも私と同じ女性。けれど彼女たちは王都の紋章の入った服を着ていました。
「私の名はカイン。隣にいるのはピエラだ」
「……」
私と目を合わせても彼女は口を開いてはくれませんでした。やっぱりこういった人は心も冷たいのかも......
「気にしないでね。ちょっと無口なときはいつも何か考え事してるときだから」
「そ、そうですか......」
倫也さんたちに会いたい。どうして私ばっかりがこんなにものみたいに誰かに捕らわれなければいけないんだろう。私が何かしたのかな。それともこの力は、人を不幸に......
頭を撫でられた。
「心配いらないよ。私達は王都の潜入調査員。君のように命を狙われている人物を助けるのがボクたちの使命なんだ」
2人の敬礼している姿、カッコいい。私もあんな風になれるかな。
「そうだったんですか。ありがとうございます」
「君に仲間はいるの?」
「はい、優しい人たちが2人」
「そっか。それなら合流できるよう手配を......」
ピエロさんがカインさんの肩を叩いた時、私は2人の目の色が変わったのを見逃せませんでした。そしてそれは倫也さんと出会えるときを先延ばしにしてしまうものでした。
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