昭和のおっさんタロウの異世界物語は東の国から

うしさん

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第3章 西の大陸

第03話 冒険者ギルド

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 『永遠乙女エンドレスレディ』に連れて来られた冒険者ギルド。
 アンナさんは受付で何か話してたが、話が終わるとこちらに声を掛けてくれた。

「あたいはちょっと話に行ってくるから、タロウ達は登録を済ましときな」
 それだけ言うと、アンナさんは受付カウンターの奥に消えて行った。
 登録? そういえば隊長も登録をしておけば入門料が免除されると言ってたな。そうであれば登録をしていた方が得だな。

「ソラ、ココア、一緒に登録を済ませようか」
 三人で受付カウンターに行き、受付譲に声をかけた。

「新規登録をお願いしたいのですが」
「はい、登録ですね。三人ともですか?」
「はい」
「登録は十五歳からですが、十五歳に達してますか?」
「はい、問題ありません」

 私は問題無いが、ソラとココアは幼く見えるしな。実際はソラが二五〇歳、ココアが一五〇歳だ。百歳どころでは無いのだがな。
 そうだ、人間じゃなくとも登録はできるのだろうか。

「では、こちらの用紙に記入してください。代筆は必要ですか?」
 代筆? なぜ代筆を聞かれたのだろう。ここは文字が違うのか? 言葉が分かる時点で文字の事は気にしなかったが……

 渡された用紙を見ると問題なく読めた。
「いいえ、問題無さそうです」
 このままカウンターで書くようなので、ペンを持ち記入を始めた。
 付けペンか。過去に数度使った事はあるが、万年筆より文字が滲むんだ。付ける量の加減が難しいんだよ、これって。しかも、この用紙は紙じゃないのだな。動物の皮のようだな。紙より文字が滲むな。

 しかし、なんとか読めるようには書けた。
 私は登録名タロウ、五〇歳。アンナさんもフルネームで自己紹介したのにタロウと呼んでたしな。ソラもココアも名前だけなのに私だけ苗字を書くのも気が引けたのでタロウだけを記入した。

 ソラが十六歳、ココアが十五歳で記入をしておいた。ココアはできる妹だからココアを下にしたのだ。実際、ココアの方が年下だしな。
 他にも記入する所はあったが、職やら得意魔法やら何を書いていいものか分からないので受付譲に聞いてみると、分からない所は書かなくても結構ですよ、と言われたので、名前と年齢だけで提出した。そして怒られた。

「あなた、タロウさんですね。本当の年齢を教えてください。こちらで書き直しますので。十五歳でいいですか?」
 あっと、そうだった。私は十八になっていたのだった。つい、いつもの癖で五〇と書いてしまった。

「失礼しました、十八歳です」
「……十八ですね」
 不本意な感じで了解してくれたが、あまり信じてはもらえてないようだった。本当に私はどんな姿をしているのだろう。一度鏡を見てみないとな。

「では、この水晶に手を乗せてください」
 入門審査の時とそっくりな水晶玉を出された。
 さっきやったのだが。と、戸惑っていると、受付譲が答えてくれた。

「これは、レベルや適正を調べるアイテムです。もちろん犯罪歴も分かりますが、どんな依頼が受けられるかを判断する基準にもしますので、登録の今回だけですので検査させてもらえますか。一応、拒否する事もできますが、ほとんど全員に検査させてもらってます。結果は誰にも漏れませんので安心してください」
 ほぅ、そんな便利なアイテムもあるのだな。
 では、と順番に三人で水晶玉に手を置き、検査を受けた。

「!! ここまでのレベルですとBランクからのスタートと申し上げたい所ですが、新規登録の場合は最上位は紹介状が無い限りDランクスタートです。紹介状はお持ちではありませんか?」
「はい、ありません」
「では……」
「ちょっと待ってください」

 受付譲が決定しようとした時、受付譲の後ろから声がかかった。
 声の主はダンディで細身だがしっかり鍛えてる感じのする四〇歳ぐらいに見える男前だった。歳は四〇歳ぐらいに見えるが十分イケメンで、もうあと十年もすれば、ちょい悪オヤジになれそうな逸材だった。
 私よりも年下か……ではないな。今は十八だった。

「リルリ、ランクの決定は少し待ってください。紹介状はありませんが、少し確かめたい事がありますので、それが終わってから私が判断します」
 誰だろうか。決定権を持ってるという事は偉い人なのだろう。『永遠乙女エンドレスレディ』の面々も一緒にいるようだ。見知らぬ女性が一人混ざっているが、ここの関係者だろうな。

「失礼しました、私はこの冒険者ギルドのマスターをしておりますアラハンと申します。あなたの事はこちらのアンナさん達より伺っています。こちらに一緒に来て頂けますか?」
 なんだろう、これは行ってもいいのだろうか。アンナさん達がいい人なのは分かってるが、初めて出会った人達をそこまで信用してもいいのだろうか。

「警戒する気持ちも分かりますが、タロウさんは魔物を買い取ってほしいのですよね?」
「はい」
「それでしたら、私がキチンと査定させて頂きますので、ご同行願えますか」
「そういう事でしたら」
 冒険者ギルドの登録カードの発行はお預けのようだ。発行までどれぐらい時間が掛かるかしらないが、決定されなければ発行はできないだろう。

 『永遠乙女エンドレスレディ』も一緒にマスターのアラハンさんに付いて来る。
 彼女達はなぜ付いて来るのか。話を通してくれたのも彼女達のようだし、最後まで責任を持って見届けてくれるという事か。
 この町に来てからいい人ばかりに出会うな。このマスターを名乗るアラハンさんもいい人なのかな。

 連れて来られた場所には大男が一人待っていた。
 門兵の隊長と体格が変わらないような大男で、名をゲンマと言った。
 アラハンさんはその男に軽く手を上げ挨拶すると、こちらに向き直り指示をくれた。

「では、ここにお願いします」
 アラハンさんが示す場所は、大きな倉庫だった。西の町で魔物を出した場所とそう変わらないか。
 約十メートル四方の空間で、高さは五メートルぐらいか。

「ここに魔物を出して行けばいいのですか?」
「はい、お願いします」

 了解を得たので順番に魔物を並べて行く。
 「本当に【収納】を持ってるんだな」などざわめきが聞こえるが、早く出してすぐにでも換金してもらいたいので気にせず出して行く。

「あれじゃツインヘッドか!」
「ク、クロコダインだ……」
「ウェアウルフの群れでもいたのか……」
「サラマンダーって……」

 色々聞こえてくるが、倉庫にはまだまだ空きがある。ドンドン出して行こう。

「キラービーは巣ごとか…一体何体いるんだ」
「アダマンタイマイ!」
「リザードマンだと!」
「オオオオーガだ……しかもあれは上位種」
「ガルーダなんて初めて見たぞ」
「いったいどれだけ入る収納なんだ!」

「あのー……」

「「「!!!!!!」」」

「ななななななんですか」
「二段に積んでもいいですか? 入りきらないようなので」
「なっ!!」

 少し返事に間が空いたが、許可をもらい更に魔物を出して行った。
 その時にはアラハンさんと解体担当のゲンマさんの二人だけになっていた。
 その横ではソラとココアが暇を持て余している。
 他の人達は気分が悪くなったとこの場からいなくなっている。

 二段、積み終わった時に、ゲンマさんからストップが入った。
「タロウだったか、それぐらいにしてくれ。解体もそうだが、査定もこれ以上は一度にできねぇ。もう少し時間を空けてくれ」
 そういうものなのか。私としては宿代さえあればいいのだが、できれば飯代もあれば助かるが。
 まだ収納には入ってるから料理はできるんだが、折角町にいるのだから食堂で食べたいからな。偶には一杯やりたい所だ。
 そういえばタバコも随分吸ってないが、こちらに来てから吸いたいとは思わないな。やはり若い身体になったからだろうか。だが、酒は飲みたいな。以前は逆だったのに。酒は偶にでタバコは毎日だったが、今はタバコはいらないが酒は欲しいと思うな。

「あの換金は査定が終わってからだと思うのですが、お金はいつ頃頂けるのでしょう。少々持ち金に不安がありまして」
 無一文では無いが、ここの通貨である金貨や銀貨を持って無いのだから実質無一文と同じだ。早く換金してもらえないと、今日も野宿だな。

「ギルマス? どうなんでぇ」
「はい、素晴らしい切り口のものばかりのようですので、素材としての価値は非常に高そうですね。まずは全て評価Aで精算しましょう。まだ残りの魔物も売ってくださるのですよね? でしたら、評価が低いものが出てきましたらその時の相殺すればいいでしょう。至急にお金が入用のようですから、それぐらいの融通はギルマス権限で出せます。登録カードを発行してる間にお金も用意できるでしょう」

 解体係のゲンマさんの問いに答えたアラハンさん。
 へぇ、有難いな。優遇してもらえたんだな。これで今夜の心配は無くなったか?

「タロウ! 肉はどうするんだ? 肉も売るのか? 結構高級肉も混ざってるぞ」
「いえ、結構です。まだ食材はたっぷりありますので売ります」
「そうかい、こりゃ大分儲けが出るな。大儲けしたなギルマス!」
「ゲンマさん、そういうのはもっと小さな声でお願いします」

 大儲けしたと声高に話すゲンマさんを諌めるアラハンさんだった。
 魔物の種類と数の集計をゲンマさんに任せ、俺達は再び受付カウンターに戻って来た。
 ギルマスのアラハンさんが受付嬢のリルリさんに指示を出し、私達の冒険者登録カードが発行された。
 ランクはC。新人冒険者としては異例のデビューだった。

 あまり関係ないだろうから説明は省くが後で読んだ方がいいと冒険者ギルドの案内書を頂いた。
 これも紙では無い、紙はこの世界には無いのだろうか。


 入会費無料(但し、更新切れや紛失で再発行する場合は銀貨50枚)
 【ランク】
 G 更新期限 1か月 更新費なし申請だけ 30ポイントで達成
 F 更新期限 3か月 更新費 銀貨10枚 50ポイントで達成
 E 更新期限 6か月 更新費 銀貨50枚 80ポイントで達成
 D 更新期限 1年  更新費 銀貨50枚 100ポイントで達成
 C 更新期限無し   更新費無し     
 B 更新期限無し   更新費無し     
 A 更新期限無し   更新費無し     

 但し、Aランク冒険者か若しくはAランクパーティにはギルドマスターの依頼要請に従う義務がある。
 非常時にはCランク以上の冒険者に強制的な要請をする場合がある。
 以上の要項が守れなかった場合、ランクダウン若しくはギルドからの脱退になることもある。
 Cランクから上に上がりたい場合は、ギルドマスターから直接説明を受けてもらう。

 あと、冒険者同士のトラブルにはギルドは関わらないとかトラブルにならないような最低限のマナーの説明があった。

 受けられる依頼は1つ上のランクから1つ下のランクのものまで。
 例)EランクであればDEFランクの依頼が受けられる。
 Gランクは最低ランクなので、GかFランクの依頼だけ可能。
 一年間活動、及び依頼達成が無い場合は失効の可能性もあり。
 更新期限を過ぎてもランクアップ若しくは続行申請が無ければ自動失効する。

 低ランクだと、上にランクアップするために条件があったんだな。
 何も知らない私達には、いきなりCランクからだったのは良かったみたいだな。

「へ~、あんた達がCランクか。もっと上でも良さそうだが、それぐらいがちょうどいいかもな。これはいいものを見せてもらった礼だ」
「え? あ、アンナさんでしたか」

 後方の壁際に並んでるベンチシートに腰掛けてたようで、冒険者カードをもらった私達に声を掛けてきた。
 お礼だと言って少し使い込んでる鞄を投げて渡された。

「ありがとうございます」
 お礼を言って鞄を見たが、まぁまぁ使い込んでいる肩下げ鞄で、お世辞にも綺麗だとは言えなかった。

「これは?」
「そりゃ、あれだ。さっき言った収納スキルだが、持ってるのが五人とは言ったが、それはスキルでの話だ。アイテムとしては収納バッグってのはあるんだよ。大した収容力が無くてもバッカ高いんだけどよ。それを持ってりゃカモフラージュには使えんだろ」

 これを使って収納バッグの振りをして収納スキルを使えというわけだな。
 そうする事で、私が収納スキルを持ってる事を隠せばいいという作戦か。
「お気遣いありがとうございます。大事に使わせて頂きます」
「カモフラージュには使えるが、収納バッグだってバカ高ぇんだ。狙われるのは同じなんだから気をつけるんだぜ」
 確かに狙われるのは同じだが、鞄を狙われるのと身体を狙われるのは大違いだ。鞄があれば持ってる奴の生死は関係ないという場合もあるかもしれないが、そんな時でも鞄を放棄しればいいのだから、もし収納がバレても鞄を持つ事で危険度は大幅に下がりそうだ。
 やはりいい人だったんだな。でも、周りに人がいる状態で話してる時点で秘密になってない気もするが。

「どうだい、折角知り合ったんだし、飯でも行くかい?」
「え、いいんですか? ありがとうございます。でも、精算金をまだもらってませんから、いくらもらえるかも分かりませんし」
「まだだったのかい。こりゃマスタールームへ呼び出されそうだな。ま、額が額だからなぁ」
 呼び出し? まだ時間がかかるのか。早くいくらもらえるのか知りたいのだが。宿のチェックインの受付は何時までなのだろうな。

 アンナさんの予想通り、受付嬢のリルリさんが呼びに来てマスタールームに案内された。
 アンナさんには別れ際に『大樹の憩い亭』という食堂にいるから、気が向いたら寄るように言われた。初めての町で親切にしてくれる人に出会えたのは運が良かった。
 今後もお付き合いさせてほしいし、行けたらいいのだが。

「ご足労頂きすみません。何分、買取金額が多額になりまして、下で簡単に渡せる額ではありませんので、ご足労頂きました。ついでと言ってはなんですが、Cランクにした事についても説明させて頂きます」
 私達が応接セットに腰を掛けるとアラハンさんから説明が始まり、さっき下でも見かけた女性が飲み物を私達に配膳してくれた。

「あ、紹介しておきましょう。この女性は私の秘書のマリオンです。先程、倉庫でも同行してもらったのですが、タロウさんがあまりに多くの魔物を出したので、気分が悪くなったようなので、あの場から離れていました」
 マリオンです。と頭を下げてくれたので、私達も頭を下げた。
 マリオンさんは一度奥へ戻って行くと、すぐに小袋を幾つも乗せたトレイを持って戻って来た。
 そのトレイ毎、応接セットのテーブルに置き、アラハンさんの後に回った。

「まずはご確認ください。合計で大金貨が二二枚と金貨が八二枚、銀貨が三三枚に銅貨がニ六枚あります。内訳としてはゴブリン×六七で銀貨三枚と銅貨三五枚、オーク×四三で銀貨四三枚、大アリクイ×ニ八で銀貨二枚と銅貨八○枚、ベアラット×五五で銀貨三枚と銅貨八五枚、カンガルーダ×十一で金貨五枚と銀貨五○枚、ファーラット×七三で金貨三枚と銀貨六五枚、ダークホーン×ニニで金貨四四枚、リカント一三三で金貨ニ六六枚、ウェアウルフ×四七で金貨四七枚、オーガ×三九で金貨一一七枚、オーガファイター×七で金貨五六枚、アダマンタイマイ×2で金貨百枚、ガルーダ×一で金貨ニ五○枚、リザードマン×ニ○で金貨六○枚、キラービー×三六四で金貨一八二枚、キラークイン×一で金貨三○○枚、サラマンダー×六で金貨三○○枚、ツインヘッド×ニで金貨一ニ○枚、クロコダイロン×一で金貨一八○枚……」

 長い……別に詳細を聞いてもレートを知らないので意味ないのだが、アラハンさんが得意そうに全てを読み上げるので途中でもういいですとも言えず、最後まで聞くはめになった。
 目上の人の話を途中で止めるなんて出来ないだろ。

「繰り上がった分は上の位の通貨ににしてあります。もし、両替が必要でしたら、一度の買取に対して一度だけ無料で致します。今回は素材の分だけの精算としていまして、肉の分は含まれていません。先ほどは次に持ち込んで頂いた時に相殺しますと言いましたが、肉の代金を明日にして、もし素材がA判定以下のものが出ましたら、肉の代金から引かせて頂くことに変更しました。精算金も含めて異存はありませんか?」
「はぁ…」

 無いかと聞かれても分からないのだから反論しようがない。肉の代金からマイナス査定分を引かれるのであれば、今回もらうお金から引かれるのだから問題ないな。

「あとCランクにした理由ですが、魔物の量、倒し方の見事さ、素材の綺麗さを鑑みるにAランクでもいいのではないかと考えましたが、Aランクだと注目を集めますし、魔物にしてもどのぐらいの期間で集めたのかも分かりません。何年も掛かって集めても一週間で集めたと言われれば、こちらは信じるしかないのですから。魔物の死骸の状態から見て普通なら信じるのですが、収納スキルを持ってるタロウさんですからいくらでも誤魔化せるのです。タロウさん達でしたら、すぐに上がれるとも思いましたのでCランクからのスタートとさせて頂きました」

 別に何ランクでも構わない。最底辺のGランクでも買い取りはしてもらえるようだから。ランクアップには繋がらない魔物もいるようだが、買い取りさえしてもらえれば問題ないのだから。

「それとこれは私からのプレゼントです」
 アラハンさんから鞄を頂いた。さっきアンナさんから貰った鞄とよく似ている。

「収納にはスキルとアイテムがありましてね。スキルの方は希少ですが、アイテムなら大金貨一枚で買えるものもあるんですよ。収納力は少ないですけどね。スキルは隠した方がいいと思いますので、その鞄で偽装した方がいいと思いますよ」
 この人もいい人だな。アンナさんと同じ理由で鞄を頂いてしまったな。心配してもらあらえるのは嬉しいもんだな。

「ありがとうございます。是非使わせて頂きます」

 それではまた明日お待ちしております。と言われ、ようやく解放された。
 あっ! 宿! あまりの話の長さで解放されたいが先に立ち、宿の場所を聞き忘れてしまった。
 戻ろうかとも考えたが、アンナさん達が『大樹の憩い亭』という食堂で待っていると聞いているので、まだ入るようなら声を掛けてから宿を探すか、なんならアンナさんに聞いてもいいかもしれない。
 アラハンさんの話が長かったから、もし待っててくれてるのなら悪いし、先に声を掛けた方がいいだろう。

 『大樹の憩い亭』は冒険者ギルドの並びにあったのですぐに分かった。
 中に入ってみるとアンナさんたち『永遠乙女エンドレスレディ』はすぐに見つかった。
 私のようなおっさん……失礼、三~四十台の男性で賑わっていたので女性だけの彼女達はすぐに見つかった。

「遅くなりました」
「おっせーぞ! もう一時間以上待ったんだぞ。こんなおっさんばっかのとこでいつまで待たすんだ!」
 いや、ここはアンナさんが指定した店ですけど。もしかして飲んでる?

「アンナ、そんな言い方は可哀想だろ。あんたも興味があるあら呼んだんだろうし、普通にしゃべりなよ」
 ん? これがアンナさんの普通の話し方だと思ってたが違うのか?

「アンナは損な性格してんね。だから男が離れて行くんだよ」
 続けてアンナさんの補佐的な人がフォローを入れてくれた。たしかミューさんとヘレンさんだったか。
 フォローかどうかは微妙だが、話を続ける点ではナイスフォローだと思う。

「うるさい! みんなおない年じゃねーか! なんであたいだけ…」
 『永遠乙女エンドレスレディ』の面々がニヤニヤとアンナさんを見ている。
 仲のいいパーティなんだなぁ。おっと、私はそれどころじゃなかったんだ。

「お話中にすみません。この近くに安い宿屋を知りませんか。私達はまだ宿を取ってないものですから」
「ホントにあんた達は……あ、宿だったね。宿ならあたい達と同じとこにしなよ。この二軒先だしな。ミュー、ちょっと行って取って来てあげなよ」
「そうだね、私も今日でタロウのファンになっちゃったしね。行って来てあげるよ。三人だね」

 えーと、勝手に話が進んでるが、そこまで甘えてもいいのだろうか。
 その前に、換金してもらったお金で足りるのだろうか。

「アンナさん。私達は今換金してもらったお金しか持ってないのですが」
「そんだけありゃ十分だよ。いくらになったか知んねーが、あれだけありゃ一年だって余裕で連泊できるさ」
 買い取り金額がいくらか知らないだろうに、よく分かるもんだな。

「で? いくらだったんだい?」
「アンナ!」
「いいじゃないか、ちょっと聞くだけだろ」
 ヘレンさんがアンナさんを諌める。確かに他人のギャラを聞くのはやはりこの世界でも失礼に当たるようだ。

「な、な、ちょっとだけ、一番上の単位だけでいいんだ、大金貨まで行ったよな。あれだけ出して行かねーわけねーもんな。何枚かまでは聞かねーよ。大金貨まで行ったかい?」
「ええ、まぁ」
「あったのかい! やっぱりか~。そりゃそうだよな」
「アンナ! もういい加減におしよ。本当に怒るよ!」
「悪かった、悪かったって。でも、そんだけありゃ当分贅沢できるな。ここの分だって全部合わせて銀貨二〇枚もありゃ釣りが来るほどだ。大金貨なんて最近見てねーよな」
「何言ってんだい。今日の精算だって、うちらは五人パーティだから両替してもらったんじゃないか。五人でちゃんと大金貨分の仕事はできてるよ」

 ここの支払いが銀貨二〇枚程度なのか。
 五人で酒も飲んで、結構食べてるようだから、銀貨二〇枚だったら日本円で二万円ぐらいか。
 大雑把でいいからそれぐらいと見て、教えてもらったのが……


 銅貨(一番下の通貨)
 銀貨=銅貨×100(千円ぐらい?)
 金貨=銀貨×100
 大金貨=金貨×100

 こんな感じか? だったら大金貨一枚で一千万円!? それを二二枚という事は二億二千万円?
 さっきの魔物だけで、そんなになったのか? あくまでもここの料理から予測を立てただけだが、大金なのは分かった。ゼロを一つ取っても二千万以上になるのだから。

「ご主人様~、お腹すいたー」
「あ、そうだったな。私達もここで食べるとするか」
 お金の心配は無さそうだから、私達もここで食べる事にした。


「村の食堂に似た味だねー」
「確かにソラさんの言う通りですね」
 二人の言う通り、村の食堂で食べた料理と同じく味が薄い。スープの方は出汁も取ってないのか、不味くて飲めたもんじゃない。これなら私が作った方が何倍も美味しい。
 ソラもココアも、元々料理など知らないから食べられるのだろうが、私にはちょっと我慢できそうもない。せめて塩を足してみるか。いや、持ち込みはダメだ。店の主人が怒ってくるかもしれん。今日の所は我慢して食べるか、無理ならば残すしかないな。

「取って来たよ。三人分だから一晩銀貨九枚ね、立て替えておいたから後でちょうだいね」
「何から何まですいません」
 そうお礼を言って銀貨九枚を手渡した。
 一人銀貨三枚か。素泊まりだから三千円ぐらいと見て、やはり銀貨一枚で千円ぐらいではないだろうか。物価も違うだろうから一概には言えないが、目安にはなるな。

 食事が終わり、飲み物が何かないかと尋ねると、木の実ジュースがあるというので三つ頼んだ。銅貨三〇枚だった。アンナさんから酒を勧められたが、今日の所は辞めておいた。
 飲みたかったのだが、明日からの事を色々と考えたかったので自重したのだ。


 宿に行き、部屋を教えてもらうと、なんと一部屋しか取ってくれてなかった。
 今からではもう空きが無いと言われたので、今日は三人で一部屋に泊まるしかないか。
 今まで野宿では一緒に寝てたのだ。それが部屋になったからと言って、何かが変わるわけでもない。
 それに、ソラもココアも歳はアレだが娘みたいなもんだ。同じ部屋に寝ても問題ないだろう。
 しかも、彼女達は人間でもない。そうだ、何も問題ないのだ。

 そうは思っていても多少意識はする。これでも男なのだから。
 ま、今夜は考え事が多いので、先に寝かしつければいいか。
 と、思ってたが、私の両サイドではソラとココアが寝てしまっている。私は身動きできない状態だ。
 だからといって手を出すつもりは無いのだが、どうにも落ち着かない。
 無理やり考え事をして落ち着こうと努める。アドバイスが必要なものに関しては【那由多】の助言ももらいながら、今後の方針を考えていた。

 まず、明日は冒険者ギルドに行って、残りの肉の代金をもらって、更に魔物を買い取ってもらう。
 それと、服だな。この町では着物は目立つ服装なので、この町に合う服を買おう。お金は十分すぎるぐらいあるようだし、明日もまだ増えそうだ。当分お金に困る事は無さそうだ。

 お金は生きるために必要な事だが、目的を忘れてはいけない。
 元の世界へ戻る方法か、ソラとココアの国へ戻る方法を探す。この前提を忘れてはいけない。その目的に向かって行くためにはお金が必要な場合もあるだろうから、お金を稼ぐために仕事もしなければならないだろう。
 食べるだけなら、もうお金はいらないのでは無いかとも思い始めてるが、こうやって宿にも泊まるし移動で乗り物を使う時が来るかもしれない。お金は持っていても収納に入れてるだけだし、邪魔にはならない。無くて困るのは避けたいから、稼げる時には稼いでおこう。


 行き先だが、【那由多】が言うには、ソラとココアがいた国は【東の国】と呼ばれる国だそうだから、東に向かえばいいのではないかと安易に思っている。
 大陸地図は探索サーチを最大限広げれば分かるので、迷う事は無いだろう。
 町も【那由多】がマークしてくれたから、既に分かっている。どういった町なのか、どんな人が治めているのかまでは分からないが、これだけ分かっていれば十分だろう。

 脳内マップを広げ、何日ぐらいかかるか、どのルートがいいかと考えている時に夢の中へ旅立ってしまった。
 朝までグッスリだった。所謂『寝落ち』だな。


 翌朝は、三人ほぼ同時に起きた。二人とも私同様しっかりと眠れたようで、寝起きなのにもうお腹が空いたと強請られた。
 私のお腹も同意するように鳴ったので、朝飯にする事にした。
 この宿には食堂が無いので、外に食べに行かないとならないようで、受付では昨夜の食堂を勧められた。
 宿から出てしまうとチェックアウトになってしまうと言われたが、荷物も無いので、そのままチェックアウトした。

 食堂に着いてから思い出しだ、昨夜の料理の不味さを。
 やはり、朝食もそれは同じで、私は全部を食べることができなかった。ソラとココアは完食である。
 これは、あれだな。自分で作って食べるしかないかもな。
 昨夜といい今朝といい、食堂で他にいる客は満足そうに食べてるから、他の食堂に行っても大差ないかもしれない。
 美味しい店を探すとしても、この様子を見る限り難しそうだな。

 不味いものを食べると、案外すぐに食べたくならないもので、満足度は非常に少ないが今すぐ食べたいとは思わなかった。
 なので、そのまま今日の予定を熟す事にした。昼頃には、どこか火を使える場所に行って料理を作ろうと、今日の予定に組み込んだ。

「まずは私もそうだが、ソラとココアの服を買いに行こうか」
「服~?」
「服、でございますか?」
「そうだ。この町で着物姿は浮いてるからな。この町の人のような服を買いに行こう」
「ご主人様、私達に服は必要ありません。これは変身の時のイメージであり、どのようにも変更可能です。どのような服にすればよろしいですか?」

 え? そうなのか? 確かにおかしいとは思っていたのだ。着物であれだけのスピードで走っていたのに、ソラもココアもまったく裾がはだけなかったのだ。私だけ、毎回裾がはだけるので裾を帯の後ろ側に挟んでふんどしを見せながら走っていたのだから。そう、今の私の下着はふんどしなのだ。着替えなんて持って来る余裕など無かったし、東の国ではふんどししか無かったのだ。もしこの町にパンツがあれば、すぐにでも購入したいのだが。

「では、アンナさん達みたいな女冒険者みたいな感じにはできないか?」
「かしこまりました」
 ココアはそう言うと、人の姿に変身する時のように淡く光ってココアの服装が変わった。
 おい! ここは人目が。と慌てて周囲を確認するが、タイミングよく誰も人が通ってなかったのでホッと胸を撫で下ろした。

「うちもー」
 ホッとしたのも束の間、今度はソラが同じように変身すると言う。
 ちょっと待て! と思いつつも再び周囲を警戒した。

 ボフンッ!
 煙が立ち上がり、ソラの変身が完了した。
 あ、狐だから? ソラが変身する所を初めて見たが、そういう変身の仕方だったんだな。
 ソラの時も運良く周りには誰もいなかったので変身を誰かに見られる事は無かったが、こういう町中では変身しないように、二人にキツく言って聞かせた。

 二人の服装は革装備の軽鎧姿になり、見た目だけは立派な冒険者の姿に変わった。
 小柄の女の子姿なので全然強そうには見えないが、着物姿よりは町に溶け込む服装へとなっていた。
 念のため、ソラの尻尾も確認したが、ちゃんと隠せていた。これなら二人とも怪しまれる事は無いだろう。

 二人の姿が冒険者風になったので、着物姿は私だけだ。そう考えると急に恥かしくなってきたので、冒険者ギルドに行く前に、私も服を買って着替える事にした。

 服屋はすぐに見つかり、適当に見繕って何着か購入した。地味な色が多いのは、町を出る際に目立たないようにする為だそうだ。目立つと魔物に見つかって襲われる可能性が高くなるので地味な色が売れ筋なんだそうだ。
 私としても地味な色は好きなので、何の不服も無い。それよりも……パンツあるじゃん!
 パンツが売っているのが分かると、私のテンションは一気に上がった。

 所謂デカパンというやつだが、全く問題ない。ここ何年もボクサーパンツばかりを穿いていたが、ボクサーパンツにする前はトランクスパンツだったので問題ない。ふんどしよりは遥かにいい。
 一番高くて触り心地がいいものを十枚購入した。ゴムが無いのか、紐で腰を締めるタイプだったが、大満足で服屋を後にした。
 もう嬉しくて、早速人目の無い所を探し、素っ裸になって着替えを完了させた。もうふんどしとはおさらばだ。

「よかったですね」
 着替えを済ますとココアから声を掛けられた。
「うん、そうだな」
「刀を購入した時より嬉しそうですね」
 確かにそうだな。刀など良し悪しが良く分からないものなどより、パンツの方が嬉しかったのは事実だし、それが顔に出てたようだ。

「…そうだな」
「そのお姿も凛々しくて、私は似合ってらっしゃると思います」
 あ、服装の方だな。ココアなりに褒めてくれてるんだな。

「そうか、ありがとう。ココアも似合ってるよ」
「……ありがとうございます」
「うちはー?」
 褒められて顔を赤くして照れるココアを見て、自分も褒められたいのかソラが自分は? と聞いてきた。

「ソラも似合ってるよ」
「ご主人様もパンツ似合ってるー。でも、ふんどしの方がカッコよかったー」
 ちゃんと見られてたんだ。でも、ここは服を褒めるとこだぞ。

「…そうか…ありがとうな」

 ソラとしては褒めてくれてるはずだから、一応お礼は言っておいた。全然嬉しくは無いんだが。
 そうして服装を変えた私達は、予定通り冒険者ギルドへと向かったのである。
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2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

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