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内緒
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ジャックに案内されるがまま、よもぎ地区へやって来た。棚田が広がり、家の近くでは水車が回っている。そんな風景に思わず目が奪われてしまう。
やわらかな風が僕達の髪と足元の花をそよそよ揺らした。
「穏やかな所だなあ。」
心地よさに思わず伸びをする。ジャックも目を閉じて、風に身を委ねているようだ。
「さて、温泉はどこにあるんだろう」
カードには、「よもぎ地区」という情報の他に、「温泉が目印」と書かれていた。
「小鳥、あれを見ろ」
ジャックが少し遠くを指差す。見ると煙突から湯気が出ているのが分かった。
「……あそこかもしれない。行ってみよう」
てくてくと道を歩き、目的地に到着した。予想は正しかったようだ。
「提案があるんだが」
「え、何?」
「温泉に入ってから人探しをしないか」
「うん。作戦も立てなきゃいけないし、そうしよう」
そうして僕達はここ「日向温泉」に足を踏み入れたのだった。
ジャックが番台に声をかける。
「すみません」
「はーい」
奥の方から急ぎ足で出てきたのは、20歳くらいの男性だった。
「タオルと石鹸って買えますか」
「はい。セットで購入されますか?」
はい、とジャックが返事をすると、石鹸とタオルが目の前に差し出された。
入浴料と合わせたお金を支払い、僕らは温泉に向かった。
「うわぁー。気持ちいい」
「やはり、温泉はいいな」
お湯に身体の疲れが溶けていく。しばらく、心地よさに浸っていた。
「小鳥、会いたい女の子の名前は何というんだ?」
その問いかけに、ここに来た目的を再確認させられる。
「確か……『アキ』って呼ばれてたような」
「アキか。よし後で聞いてみよう」
ジャックが探しものがあると言うので僕は待っていることにする。
温泉を出て、椅子に座っているとある物が目に留まる。何だろうあれ。気になって近くの椅子に移動する。
じーっとその薄茶色の液体が入ったビンを見つめていると、黒髪の女性と目があってしまった。
「コーヒー牛乳飲まれますか?」
細い腕が取っ手に伸びる。こーひーぎゅうにゅう? 牛乳なら知ってるけど……。
ずっと見つめていたから、飲みたそうにしていると勘違いされてしまったようだ。
僕はぶんぶん首を振った。
「違います……ただそれが何なのか気になっただけで」
女性は不思議そうに僕を見つめてからにっこりと笑った。それから扉を開いてコーヒー牛乳を2本取り出した。
「はい! どうぞ」
「え? でも……お金」
「サービスです。お連れの方と一緒に飲んでください」
ここまでしてもらうと断るほうが申し訳ない気がした。おずおずと手を伸ばしてビンを受け取る。
「……ありがとうございます。お名前を伺ってもよろしいですか?」
「平野千秋ですけど……。名前がどうかされましたか?」
千秋さんはちょっと不審げだ。
正直に打ち明けるべきか悩んで、口を開いた。
「実は人探しをしていて……アキさんって名前なんですがご存知ないですよね」
「そういう事ですか……。ごめんなさい、知り合いにはそういう名前の人は居ないです」
「いえ、ありがとうございました。コーヒー牛乳いただきますね」
千秋さんはニコッと笑って立ち上がる。数歩歩いた後、振り返って人差し指を唇に当てた。
「私から貰ったことは内緒ですよ」
その瞬間、僕の記憶がフラッシュバックした。
「今日会ったことは秘密だよ」
あの子も同じ仕草をしてたなぁ。あの後誰かに呼ばれてすぐどっか行っちゃったけど。もしかして千秋さんがアキちゃん?
そんなことを考えている内に千秋さんはどこかに行ってしまっていた。
やわらかな風が僕達の髪と足元の花をそよそよ揺らした。
「穏やかな所だなあ。」
心地よさに思わず伸びをする。ジャックも目を閉じて、風に身を委ねているようだ。
「さて、温泉はどこにあるんだろう」
カードには、「よもぎ地区」という情報の他に、「温泉が目印」と書かれていた。
「小鳥、あれを見ろ」
ジャックが少し遠くを指差す。見ると煙突から湯気が出ているのが分かった。
「……あそこかもしれない。行ってみよう」
てくてくと道を歩き、目的地に到着した。予想は正しかったようだ。
「提案があるんだが」
「え、何?」
「温泉に入ってから人探しをしないか」
「うん。作戦も立てなきゃいけないし、そうしよう」
そうして僕達はここ「日向温泉」に足を踏み入れたのだった。
ジャックが番台に声をかける。
「すみません」
「はーい」
奥の方から急ぎ足で出てきたのは、20歳くらいの男性だった。
「タオルと石鹸って買えますか」
「はい。セットで購入されますか?」
はい、とジャックが返事をすると、石鹸とタオルが目の前に差し出された。
入浴料と合わせたお金を支払い、僕らは温泉に向かった。
「うわぁー。気持ちいい」
「やはり、温泉はいいな」
お湯に身体の疲れが溶けていく。しばらく、心地よさに浸っていた。
「小鳥、会いたい女の子の名前は何というんだ?」
その問いかけに、ここに来た目的を再確認させられる。
「確か……『アキ』って呼ばれてたような」
「アキか。よし後で聞いてみよう」
ジャックが探しものがあると言うので僕は待っていることにする。
温泉を出て、椅子に座っているとある物が目に留まる。何だろうあれ。気になって近くの椅子に移動する。
じーっとその薄茶色の液体が入ったビンを見つめていると、黒髪の女性と目があってしまった。
「コーヒー牛乳飲まれますか?」
細い腕が取っ手に伸びる。こーひーぎゅうにゅう? 牛乳なら知ってるけど……。
ずっと見つめていたから、飲みたそうにしていると勘違いされてしまったようだ。
僕はぶんぶん首を振った。
「違います……ただそれが何なのか気になっただけで」
女性は不思議そうに僕を見つめてからにっこりと笑った。それから扉を開いてコーヒー牛乳を2本取り出した。
「はい! どうぞ」
「え? でも……お金」
「サービスです。お連れの方と一緒に飲んでください」
ここまでしてもらうと断るほうが申し訳ない気がした。おずおずと手を伸ばしてビンを受け取る。
「……ありがとうございます。お名前を伺ってもよろしいですか?」
「平野千秋ですけど……。名前がどうかされましたか?」
千秋さんはちょっと不審げだ。
正直に打ち明けるべきか悩んで、口を開いた。
「実は人探しをしていて……アキさんって名前なんですがご存知ないですよね」
「そういう事ですか……。ごめんなさい、知り合いにはそういう名前の人は居ないです」
「いえ、ありがとうございました。コーヒー牛乳いただきますね」
千秋さんはニコッと笑って立ち上がる。数歩歩いた後、振り返って人差し指を唇に当てた。
「私から貰ったことは内緒ですよ」
その瞬間、僕の記憶がフラッシュバックした。
「今日会ったことは秘密だよ」
あの子も同じ仕草をしてたなぁ。あの後誰かに呼ばれてすぐどっか行っちゃったけど。もしかして千秋さんがアキちゃん?
そんなことを考えている内に千秋さんはどこかに行ってしまっていた。
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