上 下
7 / 45
「ここは異世界だよ」編

七話めぇ~ 「ンメェエエエ~」

しおりを挟む
「ねえ、シゲキ君、一ついい?」

 珍しくぷるんが俺に何か聞きたいらしい。
 悪いが俺は秘密主義でな。
 幼女大好き以外は秘密だ!

「さっきの心の扉オープンフェイスっておかしいよ。普通は『心の扉オープン』でいいじゃん。それか『心のフェイス、オープン』ならいいけど」

 はい来た。きたこれ批判だ。
 はいはい、いつか来ると思っていましたよ。

 お前な、批判がどれだけ人を傷つけるかわかっているのか?
 いや、ヒツジを傷つけるかわかっているか? 罪深いぞ。

「批判じゃないよ。シゲキ君だっていつもツッコんでいるじゃん」

 たしかにツッコんでいる。だが、お前のとは違う!!

「えー、どうして?」
「お前には愛がない!!」

 いいか、お前たち。ツッコみとは愛があって初めて成り立つ。
 相手を傷つけることなくむしろ生かす!!

 そこがぷるんと俺の最大の違いだ。
 俺はいつも自分を犠牲にしている。だからいいのだ。
 批判ユルサン。覚えておけ。クマーに叱ってもらうからな。

「NO批判、NOイジメ。イジメカッコワルイ」
「長州小力?」

 小力!? どこにその要素があったよ!
 言うなら本家にしろって!

「じゃあ、パラパラ?」

 古い!! もう死語じゃないのか?
 俺が小学生くらいのころだぞ。ああ、作者のな。
 あのころまだバブルだぞ。
 でも、小力のパラパラは好きだ。

「はい、草」

 ぷるんが俺に草を差し出す。
 しかもそこら辺から適当にむしり取った草だ。
 そう、雑草。ZASSOUだ。

 たぶん名前があるとは思うが、雑草は雑草だ。
 俺が小学生の先生なら雑草で花丸をやろう。雑草だけに花丸な。
 …雑草だけに花丸な!

「……」
「ツッコめよ!」
「だって批判って言われるし」

 こいつ根に持ちやがって。雑草だけに根にもって…いや、やめよう。
 さすがに枯れてしまう。

「おい、これを食えというのか?」

 草だぞ。雑草だぞ。味付けされていればまだしも、ただの草だ。
 下手をすれば家畜のお小水がかかったかもしれんという、とんでもない代物だ。

 それを食えというのか!!
 俺にそんなものを食えと!! 間接キスのレベルが高すぎるぞ!

「だって、ヒツジさんは草を食べるでしょ? お腹空いたんだよね? 草しかないよ」

 昨日はヒツジになって動転していたのと、ヒツジ小屋での熱いトークに感動して食欲というものがなかった。
 だが、やはり腹は減るのだ。

 不死スキルがあっても腹は減るとは理不尽だな。
 どうせならそのへんも考慮してほしかった。

「ところでお前は朝、何食ったんだ?」
「聞きたいの?」

 言わなくてもわかるでしょ? みたいな顔をしていた。
 ヒツジを飼っている人間が食べるものは何か? 怖い。人間怖い。

「一応ラム肉は食べたよ」

 俺だぁぁぁぁああああ!
 それは俺だ! こいつ、俺を食いやがった。

 性的な意味で「食べちゃうわよ」とお姉さんに言われるのは素敵だが、本当に食われるとマジきつい!

 一応豆知識だ。
 ラムとは生後一年未満の子ヒツジのことで、二年以上となるとマトンとか言うらしい。
 その間はなんたらラムってことなので、とりあえず年齢が二年未満はラムらしい。

 ただ、国によっても定義が違うらしい。
 しかもラムが一番高価らしい。
 ん? 「らしい」ばかりだって? そりゃそうさ。

「ウィキペディア情報だもんね」

 言うなよぉおおおお!!
 つーか、ヒツジのことなんて知らねーよ!
 適当に見とけ。

「だからね、はい、草」

 だからねのところがつながらない気がするが、一応ヒツジなので食べてみることにした。

「もぐもぐ、くちゃくちゃ」

 ヒツジは反芻(はんすう)動物といって、一度胃に入れたものをまた食べて消化を良くする習性がある。
 というよりは、こうしないと上手く栄養を摂取できないらしい。
 草から栄養を取り出すには大変なんだな。

「おしっこの味する?」
「やめろよ。本当にかかっていたらどうするんだ」

 それは考えないようにしている。
 お前ら無人島生活って知っているか? ああ、あれだ。

 そうだ。みんな知っているな。
 エド・スタフォードだ!!! ザ・無人島生活のエドだ!

 あいつを見ろ! 生貝を食って腹を壊し、蛆虫(うじむし)も食った!!
 あれを見たとき思ったね。日々の食事には感謝しないといけないぞ。
 だから俺も草くらい食ってやる。

「うん、草だな」

 俺には草にしか思えない。
 食べられなくはないが、草だな。
 うん、KUSAだ。

「草、美味しい?」
「米プリーズ」
「はい、米はないけどヒツジのグリル焼き。お昼ごはんのためにさっき作ってもらったんだ」

 俺は驚かない。人間ってやつは酷いもんで、羊毛を刈り取ったあとに食べてしまうことくらい知っている。

 だって、俺は人間だからな。
 その事実も受け入れるぜ。


「これね、朝シメたばかりのお肉なんだって。あっ、これがタグ」



「ジョナサァァァーーーーーンンン!!!!」



「うう、ジョナサン。ジョナサン、俺は…!!」

 昨晩、俺を出迎えてくれたジョナサン。
 尖っていた俺の不満を全部聞いてくれて、そのうえでヒツジの良さを語ってくれたジョナサン。

 それが今やこんな姿に!
 ぷるんたちの食卓に!!

「お前たち人間は鬼だ! ジョナサンを返せ!」
「え? ファミレスってどうやって返すの?」

 ちがーーーーーう! 同じだけどちがーーーう!!

 俺の義兄弟のジョナサンだ!! 兄者だ!
 わが兄の仇、取らぬまま死ねるものかぁぁああ!

「だって、人間の時はシゲキ君もジンギスカン食べてたじゃん」

 たしかに食べていた。
 人間であった頃の俺は何も知らずに与えられるままに食べていた。
 だが、今は悔いている。ヒツジは食べちゃいけない。

「じゃあ、ヤギにする?」
「ヤギなら許す」

 エドもヤギは食べていた。
 撲殺だ。脳天を石で砕いて…いや、もうやめよう。あいつすごいぞ。

 毎回「俺には婚約者がいる」とアピールしてくるが、ナナフシやヤモリを生で食べた人とキスできるのか俺には疑問だ。外人すげーな。

 結局、味覚が変わっているらしくて肉は駄目だった。
 仕方なく草をいっぱい食べる。

「まったくこんなもの…美味いはずあるか」


「こんなもの…こんなもの…」




「ンンメェェェエエーーー!」





「行ってらっしゃーい」

 リーパの見送りを背に、俺たちは町に向かうことにした。
 何をするにせよ情報は必要だし、これからのことを考えないといけない。

「なあ、ぷるん。これからどうする?」
「魔王を倒そう!」

 バカな!!
 ヒツジと女の子が魔王を倒せるわけがない。
 そもそも倒す理由がない。

「魔王はね、酷いやつなんだよ」

 そりゃな。魔王と呼ばれているくらいだしな。きっと極悪非道なんだろう。
 爪とか凶悪で口から炎とか出すんだ、きっと。

「人間の親友に婚約者を寝取られて、しかも最後には婚約者に裏切られて絶望して魔王になったんだって」
「魔王、悪くない!!!」

 どっかで聞いた話だな。泣けてくる。
 そりゃ魔王も世界を滅ぼしたくなるってもんさ。
 あの世で俺に詫び続けろぉぉおおおおお!

「それで魔王は世界中に平和の象徴として花を植えようとしたんだって。だから悪いやつなんだよ」
「すまん。俺にはいいやつにしか思えないが」

 どんだけいいやつだ。普通は復讐するぞ。

「魔王は『動物を殺しちゃいけません』、『お互いに愛しあいなさい』、『武器を置いて許しあいなさい』って言ってたんだって」

 もはや聖人!!!!
 偉人を超えて聖人レベルだ! 宗教の指導者レベルだぞ!

「でも、そんなことされたら平和になっちゃうじゃん。お肉も食べられなくなるから全国家が魔王迫害しちゃったらしいよ」

 人間ぇぇぇぇぇええぇーーーーーーんっ!!
 何してんのぉおお!
 許すまじ人間めぇぇええええ!!!

「お前、楽しみすぎじゃないのか?」

 ぷるんの楽しみ方は異常だ。
 こいつ、もしかして今までの生活とか嫌いだったのか?

「そんなことないよ。楽しかったよ」

 そうだろうな。そんな性格だったら毎日楽しいだろうよ。
 元の世界でも楽しそうだったしな。



「ここが本当に異世界だとしてだ、帰りたいとは思わないのか?」




「だって、まだ七話だし」




 七話とか言っちゃった!!





しおりを挟む