灰色の冒険者

水室二人

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第3章 1週間

猫達の癒し

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 目的の魔物は、あっけなく討伐できました。

 少し強いだけの獣では、今の私の相手ではありません。

 この世界、魔力は全ての生き物が持っています。その魔力は、全てにおいて不公平で、さまざまな個人差が存在します。

 獣も同じで、強い魔力と属性を持ち、生き残った存在が、徳を大量に得ると個別で進化してしまいます。 更に強力になった魔物が、地上に溢れ、人々を悩ませています。

 それと戦うために、異世界人の知識と力を望んだのに、失敗して今の状況が出来ています。

 荒れ果てた地上。

 それを改善する一つの方針が、支配する獣の排除をすれば、その土地の権利を得られると言う物でした。

 獣の縄張りを奪うのですから、後の維持もそれなり大変です。一つ穴があけば、そこを狙い、次の獣がやってきます。

 私は、目的地の獣を、遠距離からの狙撃と言う方法で仕留めました。

 無音ヘリを飛ばし、相手の位置を索敵します。発見したら、相手の間合いに入らず狙撃しました。

 狙撃用のライフルは、演算機を使い、製作しました。

 銃の製作は、倉庫にモデルガンが登録されていたので外見はすぐに出来ました。ただ、モデルガンではライフリングなどの技術は再現できないので、命中率の問題や、色々と限界がありました。

 ご都合主義の塊のような、魔法という技術が、この世界にはあったのでそれを活用して、魔導ライフルを作成しました。

 魔法がある世界なので、銃と言う物が存在していない。異世界人も、わざわざ銃を作るよりも、魔法を唱えたほうが、威力のある攻撃を簡単に出来るから、無理に作らなかった。

 それでも、私は自分の為に魔導銃を作る事にしました。

 引鉄を引くと、魔法が発動する仕組みにします。弾丸は、次の瞬間高速で回転して直進します。飛ぶ速度も設定してあるので、空気を切り裂く音を残し、高速の弾丸は飛び出します。

 高度な魔法と違い、直進しかしないので、狙いをしっかり付ける必要があります。

 遠距離スコープの精度は高く、無音ヘリとのデータリンクで、着弾は正確に巨大な狼を爆撒させました。

 魔導銃、威力を上げるために弾丸に工夫がしてあります。

 6mmと言う小さい弾丸ですが、重さが10Kgあります。魔法の恐ろしい出鱈目な効果を、この弾に込めてみました。

 材料も、鉄ではなく石を使用しているので、価格的にも良心的です。

 魔法陣を書きつめた一枚の紙の上に、砕いた石を載せ、魔力を流します。その結果、凝縮された特殊弾が完成します。

 この世界、私がいた世界の物理法則は通用していません。質量を無視した重量の弾丸は、戦車砲並みの威力を発揮しました。

 速度も、かなりの物でしたので、哀れな標的は爆撒してしまいました。

 対人に使う際は、注意が必要です。テストと実践との結果の差に、今後のことを考えながら、後始末に入ります。

 支配エリアの中心部に、アンディ搭載の小型ミサイルを撃ち込んで、空き地を作ります。かなり強引ですが、今日は色々と疲れたので、強攻策で終らせます。

 空き地に、転移魔法陣を設置して、研究室に転移します。転移前に、無人の防衛装置を忘れずに行います。

 センサーに対応して、機関銃を撃つ凶悪な装置です。ここに来るとしたら、魔物だけだと思うので、問題は無いでしょう。




「ただいま、戻りましたよ」

 部屋に戻り、声をかけます。

「・・・」

「あれ?」

「十色様は、現在進化の準備中です」

 猫部屋から、にいが慌てて出てきて、そう告げる。

「進化?」

「先程から、なんだか光に包まれてます。主任は、こちらに急いできてください」

 にぃにつれられて、演習場へいくと、中心で何かが光っていました。

「これは?」

「十色様です。1時間ぐらい前から、この状態です」

 そう言えば、十色はメリアムと戦って、勝利しています。大量の徳を得ていてもおかしくありません。

「にぃたちは、なんとも無いのか?」

「私たちも、何だかうずうずいています・・・」

 この子達も、何かが起こるかもしれません。

「今日の所は、全員休む事にしましょう。研究室は、一時閉鎖します」

「解りました」

 何が起こるかわかりません。起動中の解析機は止められませんが、他の機能は一時止めることにします。

「私も、少し疲れたので、休みます」

「警備は大丈夫でしょうか?」

「この中に、外から入る事はできません。外で活動中の無音ヘリやバギーも、一時的に収納していますから、大丈夫でしょう」

「解りました。主任は、何処で休みますか?」

「せっかくなので、眠りの棺で休みます。あそこなら、短時間で回復できますからね」

 眠りの棺とは、1時間寝れば、8時間睡眠したのと同じ効果が得られる魔法の装置です。

 自分で名づけておいて、ちょっと不吉な名前にしたのを若干公開していますが、効果は実証されています。

「よろしければ、ご一緒してもいいですか?」

「別に、問題ないよ」

 猫と添い寝とは、中々出来る体験ではない。もとの世界では、猫好きでしたが、猫を飼ったことはありません。ここに来て、夢の一つが実現しそうです。

「にぃだけ、ずるい」

「さんとよんも、一緒でいいですよ」

「「ありがとうございます」」




 と言うわけで、猫3姉妹と一緒に、眠りの棺に入ります。カプセルみたいな外見で、横になるとふかふかの布団に包まれたような、幸せな感触に包まれます。




「おやすみ」

「「「おやすみなさい」」」




 ふかふかの毛触りを堪能しながら、私の意識は深い眠りに落ちていきました。




「寝ていますよね?」

「夢の中ですよ」

「そうですか・・・」

 寝ているはずですが、意識がはっきりとした状態になっています。目の前には、光る何かが浮かんでいます。

「貴方は?」

 声は、光から聞こえている感じがします。

「私は、守護獣だったものです」

「もしかして、召喚のときに犠牲になった?」

「そうです」

「私達を、恨んでいますか?」

「私に、恨まれる事を貴方はしましたか?」

「したと、思います」

 昼間の事を、思い出します。こちらを殺しに来たのですが、この世界の人を虐殺しました。あれは戦闘と呼べる物ではありません。一方的な虐殺です。

「貴方は、反省しているのですか?」

「なるほど、こちらの考えている事が貴方には伝わるのですね」

 守護獣さんは、少し怒っているみたいだった。私が考えた事は、反省でもありますが、一度は言って見たい台詞集の一つですからね。

「深層心理までは踏み込めません。表層の心理は伝わります」

「解りました。相手を殺した事は、受け入れます」

「では、何に苦しんでいるのですか?」

「可能性を、奪った事です・・・」

 今日、襲ってきた騎士の1人は、実は知っている人物でした。図書館で見た事があります。何かを、一生懸命書いていたので、気になっていました。

「何か、物語を書いていたみたいなんですよね・・・」

 彼等の死体は、見つからないように処分しました。その際、装備品を拝借したのですが、彼の持ち物に、小さな手帳がありました。

「この世界、マンガは無いですが小説は色々とありまして、彼は作家を目指していたみたいなんですよ・・・」

 それでも、剣の才能があったので騎士に徴用されてしまいました。空いた時間で、少しずつ、話を考えていたみたいです。

「読んで見たら、それなりに面白かったのです・・・」

 まだ未熟ですが、経験をつめば良作を生み出す作家さんになれたと思います。知らなければ、苦しまなかったかもしれませんが、知ってしまったので、なんとなく、つらいです。

「この世界で、生きると言う事は今後もこんな事が何回も続きますよ」

「そうでしょうね」

 生きる為に、相手を殺す。ここは、そんな理不尽な事がある世界です。

 私に力があれば、この世界を変えてみたいです。

「私が、ここにいる限り、同じ思いを繰り返すでしょう」

「それでも、貴方は、この世界にいますか?」

「いまさら、無責任なことは出来ません。私は。自分で退路を立ちました。諸々の事を、背負いながら進むつもりです」

「1人でですか?」

「ここにいる子達は、保護者として、面倒を見るつもりですよ」

「私は、保護されるだけじゃ嫌にゃ!」

「十色もいるのですか?」

「私は、最初からいたにゃ。この守護獣さんは、私と一心同体にゃ」

「そうだったのですね・・・」

 色々と、十色はオーバースペックだと思っていましたが、そういう理由があれば納得です。

「私は、刈谷さんと一緒に過ごす覚悟はあるにゃ」

「・・・」

「大体、私だってまだ一緒に寝た事がないのに、何で三猫と一緒に寝ているにゃ!」

「別に、猫と一緒に寝るぐらい良いじゃないですか」

「目覚めてみても、その言葉が言えるのか、今から楽しみみゃ」

「?」

「とにかく、刈谷さんは、色々と覚悟を決めるにゃ!」

 次の瞬間、辺りが暗くなり、夢のような場所は一瞬で消え去ります。

 辺りは、不思議な暖かいものに包まれ、色々と考えていた事が溶けていきます。




「もふもふを、感じられないのは、なぜなんでしょう?」




 途切れ行く意識の中、その理由は解らずに、深い眠りへと落ちるのでした。





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 小説家になろうでも投稿中。
 3日に1度ぐらいのペースで更新予定です。

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