灰色の冒険者

水室二人

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第3章 1週間

冒険ギルド

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 目の前には、大量の死体があります。始穣香の魔力により、絶命した人の山。

「これ、どうするの?」

「このままだと、腐って汚れるから、後でまとめて燃やすかな」

「アンデットになったりしないのですか?」

「この世界だと、アンデットになるのは、恨みの多い人とか、魔法で作られるとかで、自然にアンデットにはならないかな」

「この人達の装備は、どうするのですか?」

「僕はいらないから、いつも館の隅に捨てておくかな。知らない間に誰かが回収するかな」

「それなら、幾つか私がもらってもいいですか?」

「良いかな」

「ありがとうございます」

 変換機に入れれば、素材の材料となり、魔力の節約になります。こちらの世界の武器を解析するのにも使えます。鎧とか、着ているものを取るのは気が引けましたので、武器とたてを中心に、かなりの量を手に入れました。こう言う時、収納系の魔法は便利です。素材を回収するついでに、あるものを回収しておきます。若干時間が過ぎ、鮮度が落ちましたが、必要になるかもしれません。




 いったん、始穣香と別れ、私は1人で町に戻りました。アンディに乗ったままです。目立つのは覚悟の上での行動です。

 この世界、異世界人は召喚されるだけでなく、偶然稀人として迷い込む事もあるそうです。今の私は、その稀人と言う設定です。回りの注目を浴びながら、冒険者ギルドと言う組織の建物までやってきました。

「流石に、暗いですね・・・」

 外から見ただけででも、沈んでいる様子が伝わってきます。

 魔王との戦いは、あっという間に敗北で終っています。ここに少し前にいた人が大勢死んでいます。どんよりとした空気が、漂っています。

「アンディは、ここにおいて置くしかないか・・・」

 入り口の横に、アンディを置いて、ギルドの中へと向かいます。

「少し、宜しいでしょうか?」

 受付の人物に、話しかけます。ベテランそうな、女の人が受け付けみたいです。

「何でしょう?」

「ギルドについて、教えて欲しいのですが?」

「はじめての方ですか?」

「そうです」

「では、ギルドに関して説明させてもらいます」

 こんな状況でも、普通に受付をしてくれるのは、たいした物だと思います。

 冒険者ギルドは、色々な仕事を斡旋する組織です。雑用から、戦闘まで、さまざまな以来を受け、的確な人材を派遣する組織。冒険者と言えば、未知の場所を探検する人物だと思っていましたが、どうやら違うみたいです。

「以上の説明で、宜しいでしょうか?」

 一通りの事を、受付の人は教えてくれました。冒険ランクは、この世界に無いそうです。強さを表すランクは存在していて、戦闘系の人は、それぞれランクを受ける試験をクリアする必要があるそうです。

 現状、私は戦闘系の依頼を受けるつもりはありません。私の目的は、ギルドカードです。

「登録に関して、確認したいのですが?」

「何でしょう?」

「ギルドカードと言うのを貰えると聞いているのですが?」

「はい、登録された人は、ギルドカードを持つ事になります」

「これが無くても、開発の利権は得られるのですか?」

「開発の利権でしょうか?」

「私の目的は、土地の開発です。場合によっては、ギルドに入らないことも考えています」

「それは、なぜですか?」

「理由は、後で話します」

「そうですか・・・。土地の開発に関しては、ご存知ですか?」

「知らなければ、目的にしません」

「了解しました」

 土地の開発とは、この大陸独特の風習になります。この大陸には、未開の土地がかなりたくさんあります。以前の戦争で、荒れてしまい、強力な魔物が住み着いた場所が、各地にありそこを開放した人に、色々な特典が用意されてます。

 この町の側にも、未開の地が多く存在します。私が目的にしている場所が、ここにあります。

「土地の開発に関しては、ギルドに登録されていなくても可能です。ですが、開発に必要な色々な支援を受けられますから、登録されていたほうがお徳です」

「それは、後で考えます。開発した場合は、ギルドに報告で、良かったですよね?」

「はい。その地域の主と呼ばれる魔物を討伐できれば、その地域を開発する権利を得る事ができます」

「一応、サポートになるのでしたら、登録をお願いします」

「では、こちらに記入と、血を少し、こちらにたらして下さい」

「血ですか?」

「個人の情報を、登録するために必要です」

「その情報は、何処まで判明するのですか?」

「判明ですか?」

「登録して、その情報は、ギルドだけで管理されるのでしょうか?それとも、国が管理する物ですか?」

「この情報は、ギルドだけで管理されています。カードに記録されるだけで、個人を特定するだけですよ」

「そうですか・・・」

 そう言う事なので、血を少し、カードに垂らします。カードが輝き、登録が出来たみたいです。

「これで、宜しいですか?」

 受付の人に声をかけると、その人は動きを止めていた。

「・・・」

「どうかされましたか?」

「聖騎士ギルバード様?」

「なるほど、それがこの人の名前でしたか・・・」

 私は、血の入った小瓶を取り出します。あの死体の山の中から、騎士と思われる人物の血液を採取していました。

「騎士の情報も、冒険者ギルドに登録されているのですね・・・」

「えっ!これは、えっと・・・」

 自分のミスに気づいた受付が、慌てます。

「冒険者ギルドは、国とつながっているのですか?」

「そんな事はありません。冒険者とは、国に束縛されない自由な組織です」

「なるほど、このカードに登録すると、特殊なスキルの情報まで筒抜けになるのですね・・・」

 私が血を垂らしたカードには、ギルバードという騎士の情報が記載されている。

 本人の情報が色々と記載されています。これを、国に筒抜けと言うのは、良い気分ではありませんね。

「登録はやめておきますね」

「えっと、わ、わかりました」

 混乱している受付さんをそのままに、私はギルドから出て行きます。あの中にいた人達は、魔王のことで混乱していたので、私たちの会話を聞いていないようでした。

 血から、あれだけの情報を取り出せるこのシステムは、想像以上に危険です。この世界の冒険者ギルドと言う組織は、注意する必要がありそうです。




 外に出ると、アンディの周りに人だかりが出来ていました。

「これは、君の物かな?」

 統一された鎧を着ているので、何処かの騎士団かもしれません。

「そうですが?」

「これは、何をする道具でしょうか?」

「これは、移動に使う道具ですよ」

「貴方が、作った物ですか?」

「そうですが、貴方は?」

「失礼しました。私は賢者の国、第3騎士団所属のソードと言います」

「私は、稀人のロードスと言います」

「ロードスさんですか」

「えぇ、気づいたら、この世界に来てしまい、困っています」

「それでしたら、私の騎士団に入りませんか?」

「それは、お断りします」

「それは、残念です」

 残念と言う顔もせず、そのソードと言う人は笑う。ちなみに、ロードスと言うのは今の偽名です。

「それで、ここでいいのですか?」

「そうですね、迷惑になると困りますから、町外れにでも行きましょうか」

 既に、私は囲まれています。よほど、知られてはいけない事を、私は知ってしまったのでしょう。このソードを中心に、20人の騎士が私を取り囲んでいます。

「ギルドのシステムは、人材発掘に必要なんですよ」

 移動しながら、ソードは語る。

「国の騎士団は、優秀な人材が必要ですからね。冒険なんかで、無駄に死んで欲しくないのです」

「それで?」

「極秘事項なので、口外しないと、約束してもらえませんか?」

「断ると?」

「死ぬだけです」

「約束して、それを貴方は信じるのですか?」

「もちろん、信じませんよ。だから、ロードスさんには、死んでもらいます」







「こんなものですか・・・」

 1人路地裏を歩きます。アンディをパワーアーマー状態にしているので、狭い路地は少し歩きにくいです。

「人として、手を汚すと言うのは、こういうことなのですね・・・」

 覚悟をしていたとはいえ、慣れるのか少し心配です。この世界で生きていくのなら、必要な事かもしれませんが、今まで普通のおっさんだったから、これからの事を考えると少し気が重いです。

 でも、自分で退路をふさぐ事に成功した感じがします。少なくとも、何も知らずに、上の命令で私の殺害に来た19人の騎士の命を奪いました。

 殺すつもりで襲ってきたなら、殺される覚悟はあったと思いたい。

 アンディをバイクモードに変形させ、次の目的地に向かう。

 この待ちの側にある山の麓。その場所を開拓するのが次の目的です。

「そう言えば、始穣香を襲って狂った存在の始末を忘れていました・・・」

 予定が狂ってしまったので、そのままですが、この際この町の人に任せましょう。

 直接は、関係ない出来事です。

 そう自分に納得させて、あアンディで走り出しました。

 この判断は、後ほど面白い結果になるのですが、今の私はそれを知りません。




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 小説家になろうでも投稿中。
 3日に1度ぐらいのペースで更新予定です。
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