灰色の冒険者

水室二人

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第3章 1週間

猫人と猫姫

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 そして、目が覚める。

「もふもふが無い・・・」

 最初に感じたのは違和感。

 寝る前は、猫三匹のいる幸せ空間だった。目が覚めると、その毛触りが無い。代わりに、何かやわらかくて小さいものが、私に寄り添っている。

 覚悟を決めて、目を開けると、信じられない光景が、そこにあった。

「・・・」

 じっと見ると、命の危険を感じそうだったので、そっと目を閉じる。

「そう言う趣味は?」

「流石に、無いですよ」

「なら、良かったにゃ」

 頭の上のほうから聞こえてくる声。少し、怖い。

「ほら、貴方たちも、起きなさい」

 十色の声を聞いて、寝ていた三姉妹が動き出す。

「刈谷さんは、そのままもう少し、寝ていてくださいね」

「了解」

 気配で、三姉妹が部屋から出て行くのを確認する、その姿は、猫でなく人の子供だった。しかも、裸だった。

 そっちの趣味は無いので、残念とは思わないけど、幼女と一緒に寝ていたと思うと、悪い事をしたという気持ちになってしまいます。暖かくて、ぐっすり眠れたのは、この眠りの棺の性能と思う事にしておきましょう。




「刈谷さん、こちらに来てください」

 十色の呼ばれて、私は起きる事にしました。共同スペースに行くと、そこには見知らぬ女性と、子供が3人いました。

「えっと、十色でいいのかな?」

「はい」

 にっこりと、猫耳の女の子が笑いながら返事をする。しっぽゆらゆらの、ご機嫌の様子が伝わってくる。

「こんなに早く、猫姫になれるとは、思いませんでした」

「猫姫?」

「猫人よりも、一つ上の存在です。私は、猫人になれればいいかなと思っていたのですが、一気に猫姫になれたにゃ!」

 語尾のにゃも、復活したみたいです。

「管理者には、会いましたか?」

「声だけ聞いたにゃ」

 やはり、十色にも接触しているみたいです。

「それよりも、良く見るにゃ!」

 そう言いながら、十色はくるくる回る。人の姿であったときは、前髪が長くて顔は良く見ていませんでした。おぼろけな記憶にあるよりも、若干幼い感じがします。身長も、150ぐらいでしょう。

 髪は長めで、銀髪になっています。尻尾の色も、白と言うよりは、銀色っぽいです。頭の上には、猫耳があります。人の耳は、無いようです。

 白のワンピースを着ています。尻尾穴が大きくて、付けの部分とその周辺が見えてるので、肌色度合いが高いです。

「その辺は、あまり見てはいけないにゃ」

 私の視線気づいた十色が、文句を言ってきます。

「男の人は、これだから嫌いだにゃ!」

 この子は、魔眼の影響で色々と嫌な思いをしていた筈です。これは、私が悪いですね。

「でも、刈谷さんならいいにゃ、もっと見てもいいにゃよ?」

「・・・」

「私の服は、用意できていなかったから、急造にゃ。したぎゃ」

 何かを言いかけたところで、私のチョップが炸裂しました。服の袖に手をつけ、めくろうとしていたので、危険回避能力が作動したのかもしれません。

「服は用意できなかったと言う割には、この子達の格好は?」

 十色の足元にいる、恐らく三姉妹と思われる存在を見る。

「これは、私が猫人になったときのための服を、着せてみたにゃ」

「にぃです」

 なぜか軍服を着ている少女が、照れながら挨拶をする。三姉妹は、身長100ぐらいの子供になっていました。を着て、白い軍服で、白い髪をしています。

「さんです」

 さんは、巫女服です。赤の目立つ巫女服で、赤い髪になっていました。

「よんです」

 よんは、拳法着です。チャイナドレスっぽい、黒い姿で、黒髪です。




「これを、十色は着るつもりだったのですか?」

「そうだにゃ、これを着て、刈谷さんを誘惑するつもりだったにゃ」

「誘惑されませんよ・・・」

 三姉妹、物凄く可愛くなっていますが、誘惑されるとなると、無理ですね。子供がいたら、こんな感じだったのかと、思ってしまうほどです。

「だから、三姉妹は私たちの子供で、刈谷さんと、私が、お父さん、お母さんになるにゃ!!」

 少しだけ、それでもいいかな?と思ってしまいましたが、それは出来ません。

「私は、子供に・・・」

 そこまで言いかけて、言葉が止まる。何を言おうとしたのか。子供に殺しをさせたくない、危険な事はさせたくない、そんな事を言おうとしました。

 しかし、元々彼女達をこの環境に追いやったのは私です。何の権利がると言うのでしょうか?

「難しい事は、考えないでもいいにゃ。まだ、これから、色々と話をするにゃ」




 そう言って、十色が話し出す。十色が管理者から聞いたことは、私とほとんど同じでした。

「私は、守護獣と一体化することで、猫姫ねこひめになったにゃ。猫人よりも上の存在で、人と混ざったから、この姿になったにゃ」

「猫の姿には、なれないのですか?」

「残念ながら、私はなれないにゃ」

「私たちは、なれます」

 そう言って、にぃが猫の姿に変化する。軍服の山から抜け出し、にぃが姿を見せる。大きさは、前と変わらないようだった。この辺は、流石異世界と、言うことでしょう。

「猫にも、すぐなれます」

 そう言って、人の姿に戻るにぃ。この子、元々人間だったはずだから、もう少し気をつけてもらいたいものです。

「猫姫の、尻尾は伸縮自在だにゃ!!」

 あっという間に、十色の尻尾が私の目を塞ぎます。

「にぃも、女の子だから男の人の前で。裸にならないにゃ!」

「主任になら、見られても・・・」

「私が、まだ見せてないから駄目にゃ。その後なら、許可するにゃ」

「「「はい」」」

 なぜか、三姉妹の嬉しそうな返事が聞こえます。

「私の意見は?」

「考えては、あげますよ?」

 考えはするけど、受け入れるつもりはありませんと、その顔には書いてあるようでした。

「はぁ・・・」

 ため息一つ。取りあえず、今は色々とやる事が山積みです。この辺の事は、色々な事が落ち着いてからでしょう。

「しかし、これだと、色々と作り直す必要がありますね」

「にぅ?」

「十色は、猫になれないのですよね?」

「徳を積めば、猫になれるかもしれませんが、今は無理だにゃ」

「そうなると、猫鎧と弐型、参型をどうしましょう?」

「にゃぅ・・・」

 相談した結果、猫鎧は、三姉妹専用にカスタマイズして、しろとらはにぃ、くろとらはよんの専用になりました。参型の村雨は、同系機を作り、2機で運用。基本的に、参謀的な役割をするさんは、猫鎧までで、何かあれば新しく作る事にしました。




「この、体の奥にあるものが、御魂なのですね・・・」

 一通り相談した後、自分自身のことを確認します。体の中心、肉体とは別の部分に、巨大な何かを感じます。

「解析、開始」

 自分自身に、解析機を使います。今の状態を記録して、解析します。完了まで1年と出ています。恐ろしく陣間がかかる代物です。御魂を得た事で、解析機の予備が出来たので、これは助かります。

「さて、君は何がしたいのかな?」

 解析機のある部屋に入ると、物陰に何者かが潜んでいました。存在をすっかり忘れていましたが、研究室の中には、支配の魔王メリアムがいました。

 気絶して、強制的に眠らしておいたはずですが、私が進化している間に、研究室の機能が一時的に止まっていました。そのせいで、自由に動けたのでしょう。

「我願う、支配されよ」

 そう彼女が告げると、私の体が硬直しました。

「我願う、死せよ」

「・・・」

「我願う!死せよ!」

「・・・」

 彼女が何か言いますが、何も変わりません。

「それが、貴方の望みでしたか・・・」

「なぜ?」

「解析機で、貴方の過去を見ました。まさか、そこまで出来るとは、思いませんでした」

「・・・」

 彼女の過去は、色々と興味深いものでした。

「貴方の境遇には、同情したのですよ。まさか、あんな裏があったとはね」

 操り人形だと思っていた彼女は、実は操るほうの人間でした。聖王国のスパイで、ヤノツは既に彼女の操り人形でした。

「人の悪意は、ここまでできるものだと、逆に感心しましたよ」

「なぜ、貴様は私の魔法が通用しない?」

「突然変異の、可愛そうな魂。その体は、私が有効に使ってあげますよ」

「えっ!」

「安心してください。いやらしい意味ではありませんよ。そんな事をしたら、娘たちに嫌われますからね」

「娘じゃないにゃ、奥さんにゃ!」

「娘みたいなものですよ」

 念のために、隠れていた十色が現れます。

「刈谷さんだと不安だから、私がやるにゃ」

 十色が、右腕を掲げます。その手は、光輝き、猫の手のようなオーラが、包み込みます。

「殺されないだけ、感謝するにゃ!」

 輝く肉球により、メリアムの意識は再び闇に飲まれていく。

「なぜ?」

「利用価値が、あるからにゃ。私たちが一緒に過ごすために、お前を利用するだけにゃ!」

「助かる」

「お礼は言いにゃ、仲間にゃ、家族にゃ」

「家族?」

「私は、家族が欲しかったにゃ・・・」

 十色も、色々と抱えていたものがあったのだろう。

「私は、まだちょっと難しい」

 人との付き合いに関して、私は色々と拗らせていた。その自覚はある。

「気長に、待つとするにゃ」

 十色がそう言うと、部屋の済で気配意を消して隠れていた三姉妹が、一緒に頷いています。

 この子達と一緒なら、上手くやっていけそうな、そんな気持ちになっていくのでした。






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 小説家になろうでも投稿中。
 3日に1度ぐらいのペースで更新予定です。

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