灰色の冒険者

水室二人

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第6章 憎悪の大陸

憎悪の記憶

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 管理者との会話が終わり、大陸に取り合えず危険がないことは判明しました。

 機神の組織の攻撃は、ある程度法則があります。

 最初に来たのは500年前。

 次は400年前と、100年周期でやってきています。

 399年前に、世界が崩壊。

 300年前は、無人機が襲撃。アトランティスが変貌、

 200年前に、大規模な戦闘。管理者が誕生。

 100年前は、隠れていた人たちが壊滅。

 時間的に、あと1年の間に、機神の集団が訪れる可能性が高いようです。

 もう少し、相手の情報が欲しい所です。

 この大陸でも、戦闘があったはずなので、その痕跡を調査する事にしました、

 この大陸の管理者との交渉で、保有している兵器や物資を受け取れる事になりました。

 現在、首都にあるという軍事基地へ移動しています。

 その間、白百合隊と奄美は、アンディで周辺の物資を探索と言う当初の予定を遂行してもらっています。

 危険は少ないと判断したので、奄美をリーダーとして、探索してもらっています。




「これは、切ないですね・・・」

 大陸の首都は、死の街になっています。

 生活の気配の無い、建物が並ぶ場所。

 無駄に高い技術力で、400年近い年月が過ぎたいまでも、当時の街並みが残っています。

 死者だけが、排除された街。

 無人のロボットにより、異空間へと遺体は収納されているみたいです。

 人の許可が無ければ、遺体の処理が出来ない。管理者はそう嘆いていました。

 その管理権限を、私に持って欲しいといわれましたが、現在は保留しています。

 未来科学の発展した世界でも、滅んでしまうという事に、悲しい気持ちになってきます。

「これ、何かな?」

「行列を作っていた跡でしょうね」

 シーリアが見つけたのは、道の片隅に用意されたラインでした。

 ラインは、ある建物へと続いています。

「文明が進んでいる割には、レトロな風習もありますね」

「ネットみたいなので、受け取るだけなら、並ぶ必要はありませんからね」

 それは、アトランティスの登録受付の場所だった所みたいです。

 現代人のライトは、それを不思議に思っているみたいです。

「並ぶ事で、お祭り気分を味わっていたのかもしれませんね」

「そう言うものですか?」

 炎天下のした、数時間並んだ若い日の記憶がよみがえります。

「世間では、色々と言われていますが、それも中々楽しかったですよ」

「館長は、参加した事あるのですか?」

「若い頃に、少しだけ」

「羨ましいですね」

 ライトは、結構こっちの話題に詳しいみたいです。今度、色々と話をしてみるのもいいかもしれません。

 メトロ・ギアのメンバー、色々と駆け足に集めたので、ゆっくりと話し合いをしたいものです。

「食材は、残っていないみたいですね」

「それは、アトランティスで消費したみたいです」

 さんが、調査結果を元に、そう結論を出しています。

「生き物の死体に関しては、魔物として、アトランティスで使用していた可能性があります」

「そんな事、可能なのですか?」

「機械を埋め込んで、動かしていたみたいです。倒せば、消滅する仕組みです」

「今も、稼動しているのですか?」

「先程、にいに頼んで近くの魔物を調べてもらいましたが、確認出来ました」

「そうですか・・・」

 色々と、リサイクルが進んだ世界ならでわの事かもしれません。何事も、無駄にしたくないみたいです。

「多くの人が、ここに並んでいたのでしょうね」

 残っているラインを見ると、かなりの距離が用意されています。

 お店と思われる場所も、入り口がたくさんあります。

 楽しい事がある直前に、何も理解できないまま、死んでしまったからでしょうか?

 薄っすらと、人らしき影が、見せているような気がしてきました。

「こ、これって・・・」

 さんが、周りの変化に気づいて、怯えた声を出します。

「動かないでください」

 下手に刺激したら、何がおきるかわかりません。

 気がつけば、あたり一面に人がいます。

 正確には、人の影が溢れています。

 生きている、人ではありません。

 残留思念と言うものでしょうか?

 専門家ではないので解りません。でも、これが俗に言う幽霊だというのは、生気の無い姿を見れば、解ります。

「聖なる、ひか」

「余計ないことは、しないでください!」

 魔法を発動しようとしたシーリアを止めます。

「何故?」

「この人達は、恐らく自分が死んだ事を理解していません。聖の属性魔法で浄化できる可能性は低いです」

 このこの使う聖の魔法は、情報を分解する魔法です。

 浄化の一つだとは思いますが、この人たちの無念を、分解するのは悲しいです。

 止まっていた時が、動き出したのでしょう。

 誰も認識しなかったので、彼等の意思は、あのときのままです。

 流れた時間の分だけ、情報が薄れているみたいです。

 それも、彼らは楽しみに待っていたのです。

 そして、こちらを認識して、自分達の状況を理解したのでしょう。もう二度と、遊べないという事を。

 空間に、悲しみの気持ちが広がって行きます。

 それが、こちらに伝わってきます。不思議な感覚です。




「憎い・・・」




 何処かで、声が聞こえます。




「何故、死んだ?」

「誰が、殺した?」




 憎い、憎い、憎い、憎い。

 恨めしい、恨めしい、恨めしい、恨めしい・・・。




 ドス暗い感情が、広がっていきます。

「何で!」

 私の両脇に、シーリアと さんがしがみついて来ます。

「新作の発売日の前日に、ころされたらその気持ちは、こうなるよね」

「相手を憎むというのは、理解できますね」

 ライトも、私と同じ気持ちのようです。

「どうするつもりです?」

「こうします」

 私は、自分の御魂に語りかけます。

 思えば、これもこの世界の人の多くの犠牲の結果、生まれた存在です。

「貴方たちの、その気持ち、晴らして見せますよ・・・」

 意識を集中します。

「御魂よ!」

 意識して、回りに広がっている憎悪を、自分の中に集めます。

 さ迷っている魂を、その感情ごと引き寄せます。

 私の御魂には、命を、精神を、情報を集める能力があります。

「貴方たちの気持ちは、それをかなえる人に託します」

 丁度、この人たちの遊べなかったという無念に関して、最適な人物を引き入れたばかりです。

 彼女には、色々とがんばってもらいましょう。




 この場所以外でも、人の集まっていた場所、思い入れの強い場所で、同じような存在遭遇しました。

 大陸全土に、同じような存在がいるのかもしれません。

 大陸だけではありません、星全体の可能性もあります。あまり動き回ると、それを刺激して、大惨事になる可能性もあります。

 星巡りは、この大陸でいったん終了です。

 首都の地下で建造された巨大戦艦を受け取りました。

 それは、巨大な丸型の戦艦でした。

「これ、変形しそうですね」

「恐らく、すると思いますよ。何でこれがあるのですか?私が作りたかったのに!」

 悔しいので、解析機で解析した後で、変換して改良しましょう。




 数日間、この大陸を調べて、色々と入手する事が出来ました。

 これだけあれば、色々な事が出来ます。

 次の目標は、果て無き迷宮になりそうです。あそこには、機神につながる存在がいます。

 前回、もっとしっかり調べておくべきでした。




 ニャウに乗って、メトロ・ギアに戻ります。

 巨大な戦艦は、取り合えず封印しておきます。

 調べて判明しましたが、この星の人達は、色々とほかの星の情報を持っていました。

 なぜか、私達の世界の事も知っていて、その中のものを再現していた時代もあったそうです。

 私の能力も、この辺りに影響を受けているのかもしれません。

 管理者に聞いてみても、不明との事ですが、異世界アニメ再現計画と言うのも、アトランティスと平行してこの星の静かなブームだったそうです。

「伝説の巨神を再現とかは、していませんよね?」

 恐ろしくて、聞けませんでしたが、その土台はあるので、全滅して終わりと言う未来は防がないといけません。

 ここにきて、色々とやる事が増えそうで怖いです。







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 小説家になろうでも投稿中。
 3日に1度ぐらいのペースで更新予定です。


 




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