悪役に好かれていますがどうやって逃げれますか!?

菟圃(うさぎはたけ)

文字の大きさ
14 / 173
1

14

しおりを挟む
大公殿下は思っている以上にユニークなお方だった。
話してくれる内容は大公殿下の奥様のお話ばかりだったけど、王族にしてはとっても珍しい恋愛結婚だったみたい。

話していられる表情はとっても柔らかで、赤い瞳は幸せの色が浮かんでいた。
ほわほわとする話題にほっこりしていると、勉強部屋にたどり着いた。

「大公殿下こちらが私の勉強部屋になります。楽しいお時間を頂きありがとうございます。また大公妃殿下のお話をお聞かせ下さい」

「ゆっくり学ぶというか良い。そして子供の時には学びを通じて遊ぶが良い」

「はい!では失礼致します」

最後にお辞儀をして、勉強部屋に入った。
勉強部屋には礼儀作法を教えてくれる先生と、教科書を持った侍従がいた。

「遅れて来られましたが、いかがなされたのですか?」

「大公殿下に勉強部屋まで送って頂いていたのです」

本当は大公殿下が何度か止まってお話をされるから、間に合わなかったというのが真実だけどそれを口が裂けても言わないのが貴族ってものらしい。
所謂副音声で察しろってこと。

こんな面倒臭い手法を覚えなければいけないのが、直接言いたい僕に取っては一番嫌いなのでところだ。

「た、大公殿下ですか…。それは仕方ありませんね。しかし、遅れてしまったのは事実でございますから、その分の時間は延長させていただきます」

先生が張り切っているように見えるのが嘘だと思いたい。


ーーーーーーーーーーーーーー

「終わったぁー」

礼儀作法は精神力と地味に大量を消費するから、部屋にたどり着いてからベッドに上に寝転がった。
今日仲間入りしたねこさんとラグくんをベッドの上に乗せる。

ねこさんと初めて一緒に寝た時に悪夢を一切見なくて安心して眠れたのがすごく嬉しかった。
ねこさんを上に抱き上げて、じっと見つめた。

「ねこさんのお名前は…パレッタ!」

名前を言ってからぎゅうっとパレッタを抱きしめる。
もう一つ僕の宝物が増えた。

侍従に夕食に呼ばれるまで、僕はパレッタを抱きしめ続けた。
夕食に呼ばれた時、パレッタをむぎゅむぎゅしている姿を見られて恥ずかしかった。

ラグくんと一緒に食堂にたどり着くといつもいるお父様とお母様がいなくて、侍従に話を聞くと急用が入ってしまったと言っていた。
今日僕が訂正した書類についてだろうかと、出された料理を口に含みながら考えた。

結局お父様とお母様は僕がデザートを食べ終わっても食堂に来ることはなかった。
本当に忙しいのだろうけど、一緒にご飯を食べられないのは寂しい。

デザートを食べきっても椅子の上に座っていると、侍従が心配げに僕のところにきた。
それに気がついてゆっくりと椅子から降りた。

「ぼうっとしてごめんね。すぐにお部屋に戻るよ」

ラグくんを隣の椅子から降ろして、ぎゅうと抱きしめながらお部屋に戻った。





ーーーーーーーーーーーーー

「準備が整いました」

「そうか。父上と母上の様子はどうだ」

「はっ。旦那様は本日は機嫌よくお出かけになられたとのこと。奥様はいつも通りとのことでした」

少年は椅子の背に掛けていた上着を手に取り、そのまま流れで羽織った。
あどけなさを残しつつも、どこか人形めいた表情。

手慣れた様子でエメラルドを使用したループタイをつける。
最後に真っ黒で上等な革手袋を両手にはめると、膝をつけて待機している者に立つように合図した。

「行くぞ」

「かしこまりました」

二人は部屋から出ると、物一つない部屋は誰かが住んでいた形跡がないような状態になった。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい

雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。 延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

手切れ金

のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。 貴族×貧乏貴族

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

処理中です...