悪役に好かれていますがどうやって逃げれますか!?

菟圃(うさぎはたけ)

文字の大きさ
60 / 173
3*

7

しおりを挟む
明日にはまた学院の日常に変わる。
今日のんびりできる最後の日だろうね。

お父様とお母様は今日は忙しくされていて、夕食までは1人で過ごす事が確定していた。
久しぶりに庭を見回ろうと思ってベッドから降り立った。

いつも一緒のラグくんを抱きしめて、部屋から出れば屋敷内は静まり返っていた。
ポテポテと歩いてお庭までて小さい頃からお気に入りの四阿まで向かった。

精霊池がある領地もあって学院にいる時よりも圧倒的に多い精霊の数。
ここの精霊達も学院にいる精霊達と大きく変わらず、ヒソヒソと良くない内容を話してる。

四阿に辿り着けばそこに先客がいた。

「ラグザンド…」

「ネヴィならここにきてくれると思ったよ」

柔らかな風によってたなびく黒髪から見える金色の瞳は僕をじっと見つめている。

「どうしてここにいるの。お父様とお母様からラグザンドがいるなんて話は聞いてないよ」

「内緒できたからね」

腰掛けていた椅子から立ち上がり、僕の元にまでゆっくりと歩み寄ってくる。
食堂で助けてくれた日から8年ぶりに出会った時から感じる違和感。

その違和感が解消できない限り、今のラグザンドには近づこうと思えない。
近づかれる度に離れるけど、段々と距離が詰められていく。

「どうして逃げようとするの?私のネヴィレント」

あっという間に距離を詰められ両手を絡め取られた。
ラグくんが地面に落ちるけどそれを気にかける事もできない。

「自分を抑える事がこんなに難しいと思わなかったよ。この8年間君に会えない事がどれだけ辛かったかわかるかい?」

「わ、わからな…」

「分からないなんて酷いねネヴィ」

完全にイッてしまっている目を見て、僕は返答を間違えたのだと気がついた。
早く逃げないといけないのに、どう頑張っても力が入りそうにない。

「今もこうして逃げようとしてるんだから、ネヴィの細くて可愛らしい足を手折ってしまおうか。そうすれば私の元から逃げられない。それにずっと私が抱き上げてどこにでも連れていってあげるよ」

「ひっく」

恐怖のあまり吃逆が出始めた。
あの9年前に一緒に過ごした短い時間のラグザンドは儚い幻だったのだろうか。

「この白魚の様な手も一緒に手折って仕舞えば一生私が君の全てを見てあげれるよね。ああ、でも私を抱きしめてくれる手がなくなってしまうのは惜しいからそれはやめておこう」

僕の手を自身の頬に擦り寄せながら恍惚な表情をするこの人は誰だろうか。
悲鳴をあげたくてもあげられない。

あげてしまえば何が起こるかすら予測ができない。

「私を怖がらないで。私にはネヴィしかいないのだから、ネヴィから嫌われて仕舞えばもう死ぬしかないよ」

出そうになった吃逆が喉で止まった。

「ネヴィは優しいから私を嫌わないよね?」

暗に嫌うなというその言葉に僕は頷く事しかできなかった。
仄暗かった表情が少し明るくなり、にじり寄っていた体勢から少し後ろに下がってくれた。

「よかった。父上からやっとネヴィと交流しても良いとの許可が降りたのだからこうして毎日でも会いにいくよ」

最後の死刑宣告にも近い言葉を紡がれ心臓がぎゅっとした。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい

雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。 延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

手切れ金

のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。 貴族×貧乏貴族

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

処理中です...