悪役に好かれていますがどうやって逃げれますか!?

菟圃(うさぎはたけ)

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十分冷えた所でタオルを外して夕食に行くための用意をする。
タオルをベッド近くの机に置いて、鏡までいくと若干腫れた目が見えるけど目を擦り過ぎた程度で済ませるかな?ぐらいになっていた。

食堂に行く為にラグくんを探したけど居ないことを思い出して、しょんぼりしながら食堂まで向かった。
食事がすでに用意されているのか、廊下まですごくいい匂いが漂っている。

扉を開けると大公殿下とラグザンドがいた。
…え?

その真向かいにお父様とお母様が居て食事を始める前だった。

「あら、ネヴィもう少ししたら呼びに行く所だったのに」

お母様が悪戯気に笑っている。
正直言ってここから僕は逃げ出したいけど、ラグザンドだけではなく大公殿下がいるこの場を退出するかも事ができない。

てかなんでここにいるのさ。
大公殿下の隣に見慣れない男性の姿も見える。

線が細めの印象を感じる美人な方だ。
もしかして大公殿下の夫人なんだろうか。

「初めて会ったな。息子から話を聞いていたが、想像以上に小さく壊れやすそうな子供だな」

はい大公夫人であることが確定しました。
これ家族団欒による食事会になると思うけど、今日午前中にあった出来事のことを考えると団欒とかできる気がしない。

「初めましてレギストス大公夫人。ネヴィレント・ツェーリアです。ご尊顔預かり光栄です」

「小さいのにこんなに行儀が良いなんて…メルトの指導が良かったのだろう」

「そう言ってもらえて嬉しいわ。ただネヴィレントはもう15歳だから、小さい子には該当しないわ」

「そうだったな。エルフの特徴が濃く出ているから成長が遅いのだな」

お母様とレギストス大公夫人の会話はのほほんとした雰囲気で続いている。
お父様と大公殿下も楽し気に会話している空間で、只管僕を注視してくるラグザンドの視線は別物にしか感じない。

「ネヴィたったままでは失礼だから早くこちらにいらっしゃい」

お母様の隣が空いているからそこに座るとラグザンドと真向かいになった。
ニコリと優しそうに笑っているのに、瞳の奥は全く笑っていない。

最後の料理が運ばれてきて僕にとってかなり気まずい食事会が始まった。
料理を口にしているのに全く味がしない。

食感だけがわかって吐きたくて仕方がないけど、この場から離れて吐きに行くという選択がない。
一挙手一投足を見られている様な視線が張り付いてくる。

僕にどうしてここまで執着するんだ。
小説では僕の事は駒としてしか見てなかったのに。

「ネヴィ」

名前を呼ばれただけなのに体が跳ねてしまった。

「ネヴィの好きな物が沢山あるのに美味しくなさそうだね」

「そ、そんな事ないよ…」

表情に出した覚えがないのに、ラグザンドに見破られているのにゾッとした。
どうにかラグザンドから視線を外す為に、視線を下に向けると全く減っていない料理が見えた。

吸血鬼という種族であっても普通の食事は可能のはずなのに一切手をつけていない。

「料理減ってない事が気になるの?」

減っていない料理を身過ぎて簡単に気が付かれてしまった。

「吸血鬼でもご飯を食べられる筈なのになんでかなって思って…」

ふと、ラグザンドの方を見るとピシリと固まった。
一度だけ見たことがある捕食者の目をしていたからだ。

「賢いネヴィならわかるでしょ?」

そうだった。
ああ、そうだった!!

カシャンと食器を床に落としてしまったけど、マナーなんて気にすることができなかった。
ラグザンドに懐かれた原因は僕の血だ。

手に滲んだ血を飲んでそこからずっと僕と一緒にいる事を望んでいたんだ。

「あ、ああ…」

がたんと椅子を倒しながら立ち上がった。

「ネヴィレント!」

お母様の怒る声がどこか遠く聞こえる。
今日は完全に僕を食いにきたのだ。

「ネヴィどうしたの?」

どうしてかラグザンドの声だけははっきりと聞こえる。
逃げたい。

今すぐここから逃げ去りたい。

「落ち着け。恐怖心が溢れている」

視界が真っ暗になりそっと抱き寄せられた。
知らない花の匂いに少し困惑した。

「ラグザンド何をした」

やっと落ち着いてレギストス大公夫人の声だとわかった。
落ちついてでも体の震えは止まらない。

「何もしておりません」

「何もしていなければこの子はここまで恐怖心を抱かないだろう」

お母様の不安そうな言葉が聞こえるけど、内容がはっきりと聞こえない。
何故かラグザンドとレギストス大公夫人の声だけはっきり聞こえる。

「何をした。はっきりと言え」

「私から離れると許さないと伝えただけです」

その言葉に僕の体がまた震え始めた。
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