悪役に好かれていますがどうやって逃げれますか!?

菟圃(うさぎはたけ)

文字の大きさ
82 / 173
3*

29

しおりを挟む
薬品の匂いが鼻をついて、僕は目を覚ました。
真っ白な天井が見えて、ここが僕の部屋ではないことだけがわかった。

体が重たくて視線だけ動かすけど、見える範囲では誰も見当たらなかった。

『ねゔぃれんとおきたー!』

『おはようー!』

精霊たちの騒がしい声に現実である事が理解できた。

「…っ……?」

上手く声が出なくて、喉に手を当てようとしたけど腕が全く動かなかった。
声すら出ないし、体すら動かない状態。

『あれー?おはなしできないー?』

『こわいのよんでくるー!』

怖いのって誰なんだろう。
ぼんやりとしながらその怖い人を待っていたら、物凄い勢いで扉が開いた音が聞こえた。

「ネヴィ!!」

ラグザンドが声と共に僕の元に突撃してきた。
ラグザンドってこんなキャラだっけ?

「どうしたの?」

返事をしてあげられないから、瞬きだけでなんとか伝わらないかな。

「長い間寝ていたから声が出ないのかな?」

覗き込ませてきた顔はやつれ果てていて、目の下に隈を作っている。
こんなに心配をさせてしまって申し訳ない。

ごめんねと伝えたいけど、伝えられなくて苦しい。

「目を覚ましてくれただけで十分だよ。ゆっくりと回復して行こう」

ラグザンドに頭を撫でて貰うと気持ちよくてそのまま目を閉じてから眠っていた。


ーーーーーーーーーーー

ぱちっと目をまた覚ませば見慣れた天蓋が見えた。
家の天蓋で僕は知らない場所から、自室に移された事がわかった。

見慣れた天蓋と見知った匂い。
安心できる要素が多い中で過ごせるとわかると一安心できた。

『ねゔぃれんとおはよー!』

『みっかねてたよー!』

やつれたラグザンドを見てから三日も経っていたんだ。
あの大怪我を負ってからこうやって回復できると思ってなかった。

おはようと口パクで伝えると、精霊たちが嬉しそうにくるくると僕の近くで回っている。

『おはよー!』

『だめかとおもったよー』

精霊が悪戯をして部屋に飾ってある装飾の剣を床に落とした。
ガシャンっと派手な音と共に、部屋の外に待機していた騎士が慌てて入ってきた。

「ネヴィレント様ご無事ですか!?」

「ネヴィレント様はご休息中だから静かになさい」

騎士達が装飾用の剣を拾って、手に持ちながら僕のところにきた。
視線がかち合った瞬間、騎士が驚いた表情をして口をパクパクしてから一人の騎士が僕の部屋から慌てて出ていった。

その行動に不思議に思ったもう一人の騎士が僕のところまでくると、あーという納得した表情をした。

「おはようございます。目を覚まされたようでよかったです」

ニコリと僕に笑いかけてくれた。
口をパクパクさせて喋れない事を伝えると、理解してくれたようで頷いてくれた。

静かに僕の部屋から退出して、慌てて出ていった騎士を追いかける形になった。
お父様を呼びにいったんだろうな。

お父様が連れて来られるまで、僕は精霊達が楽しそうに離している声を聞きながら待つことにした。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい

雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。 延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

手切れ金

のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。 貴族×貧乏貴族

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

処理中です...