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家に帰るとお父様から「学園はどうだ?」と聞かれたけれど、自分のせいで心配をかけるのは気が引けたので「順調です」と答えた。

私が帰宅すると浮かない顔をしているのか、最近では毎日のように学園での様子を聞かれるようになってしまった。

お母様やお兄様も私に何かがあったのではないかと心配そうに顔色を伺って来ることが増えた。

頑なに学園での出来事を家族に打ち明けることはしなかったけれど、私には唯一自分の感情を曝け出す相手が居る。

それは侍女のフェイ。

私が五歳の時にこの屋敷に来てから、ずっと私の世話をしてくれている信頼出来る相手。

婚約するまでの私は、今の性格とは真反対で人に対してズバズバと意見するじゃじゃ馬娘でお父様達を困らせていた。

しかし、歳を重ねるにつれて自分が置かれている立場や家の立場を最優先に考えるようになり本来の性格はなりを潜めた。
お父様達はガラリと性格が変わったことを最初は不審に思ったようだけれど、時間が経つにつれて貴族の令嬢としての自覚が芽生えたのだろう気にも止めなくなった。

そんな私を心配してフェイはいつも声を掛けてくれた。

無理に聞き出そうとせず、私が自分から話すまで隣で立っていただけだけどその気遣いがとても嬉しくて次第に自分の思っていることを打ち明けられる存在になっていった。

部屋に戻るとフェイがお茶を入れてくれたから前の席に座るように促して今日の出来事を説明すると、話が進むにつれてフェイの握りしめた手がプルプルと震え始めた。

一通り話し終わるとフェイは私に「なぜ言い返さなかったのか」と聞いてきた。

伯爵家の娘であるサンドラ様から言われた言葉は侯爵家の娘である私に対しての侮辱として捉えても問題がない。

それでも私がサンドラ様を糾弾しなかったのには理由があった。

「私はね、フレデリック様の婚約者として今後も隣で支えていく自信が無くなってしまったの。

過去の私に自信があった訳では無いけれど、いつかは私と向き合ってくださって愛を育み生涯を共にできると信じていた時期もあったわ。

でも、サンドラ様が帰国してからのフレデリック様は私の知らない存在になってしまった。

昔からフレデリック様には傲慢なところがあったけれど、きちんと人の話を聞いてくれる方だったのよ?

それが今ではサンドラ様の意見だけに耳を傾けるようになって私の手には負えないと思うの…

仮にサンドラ様が別の方と結婚をしてもフレデリック様の想いが冷めることは無いでしょうし、私達が結婚したとしてもサンドラ様の陰がついてまわるわ。

周囲の人達は今以上に真実の愛を邪魔した悪女として私の事を噂するでしょうね。

社交界で私がそんな立場になってしまうとフレデリック様を支えるどころかただのお荷物になってしまう。
だからこのまま流れに身を任せて婚約を解消出来ないかと思って…

二人が想い合っているのであれば、私が身を引くだけで穏やかに婚約解消出来て家にも迷惑がかからないでしょう?」

私の考えを聞いたフェイは疑いの目を向けて真意を探ろうとしてきた。

「本音はどう思っているんですか?」

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