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32話 私の為に争わないで!!

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ハッとミライは意識を取り戻した。あまりの衝撃に立ったまま気絶していたようだ。

(うぅ………、なんなの、え?)

下を見ると、3人の人間が五体投地していた。

(増えとる………)

またミライは白目を剥いた。

なんて、やっている場合では無いと、よくよく見れば増えている中に見慣れた人間が居た。

「にゃん子?なにやってるの?」

にゃん子だった。

「あー、やっと起きた?いやー、なんか面白そーやったし。混ざってみたしー。それにミライちゃんのおかげで今日もご飯お腹一杯、食べれるし。だから拝んでるんよー」

「私のおかげ?」

「いやあー、あはは。あの造花がお食事券に化けたんよー」

そう言ってにゃん子は、まだ五体投地している。感謝してるならやめて欲しい。

ちなみに今の教室のBGMは《トオトイトオトイトオトイトオトイ》である。桜の鳴き声だ。

ミライは、とりあえず桜とにゃん子は放っておいて、もう一人に目をやる。

(え?………なんで?彼女が?)

そこに居たのは初めて会うが、ミライは良く見た顔。


ヒロイン6、ロリ不思議系枠の【マロン・ルージュ】がそこに居た。

彼女は、無口、無表情、ロリの三点セットである。水色のおかっぱヘアーで、目の色は虹の7色。気分で色が変わるのだ。

魔法適正は無属性。見た目年齢は6歳くらいだが、歳は18歳。魔法オタクで、無理やり全ての属性を使えるようにしている為、その反動により見た目が幼く、本人自体も幼い言動を良くする。主人公ツバサとのフラグが立つのは本来、編入から一年経ってから、アニメでは二期からの登場だ。でも入学時期は同じである、ならば今此処に居てもなんらおかしくは無い。

(そりゃ、クラスメイトだもんね?居るよね………)

本来なら、主人公とのフラグは彼女が魔法研究の、し過ぎで、裏庭で倒れている所をお姫様抱っこで保健室まで運ぶ事により立つ。お姫様抱っこイベントだ。そのイベント以降、何故かマロンは主人公ツバサが気になって周りをうろつくのである。そして誰よりも早く主人公の正体【人工精霊】だと気づくは彼女だ。

二期の終盤。自分の正体を知って、ショックを受ける主人公に優しく寄り添う役回りを持っている。

そしてこのキャラには双子の兄も存在している。


「貴様っ!!私の可愛い姫に何をしているっ?!」  

(あー、やっぱり居ますよねー、ですよねー)

ミライがゲンナリとして、声の方を向くと一人の男がミライを睨みつけていた。凄い顔だ。女子相手に向けて良い顔じゃない。折角のイケメンも台無しだ。

(ブラン・ルージュ………)

彼こそがマロンのシスコン兄貴である。水色の髪で前髪は短めのアシメで片側は刈り上げている、顔立ちはマロンをきつくした感じで、血のつながりを確かに感じる顔である。普通にイケメン。

彼も目の色は虹色だ。これも気分で変わる。

【ブラン・ルージュ】

18歳。

魔法適正は光。幻惑系の魔法を得意としている。妹を溺愛している。本人いわく家族愛。だがかなり、行き過ぎた愛情を注いでいる。


ミライはブランの設定を、そこまで思い出して、ふとツバサ達は何処だ?とキョロキョロした。ツバサとユアンは後ろの方の席でライアンと合流して談笑していた。

(おのれっ!!裏切ったな!!)

ミライはぐぬぬとツバサ達を睨んだ。

「何をよそ見しているかっ!!この下女め!!我が愛しの妹になんと言う蛮行っ!!」

ブランに怒鳴りつけられて、ミライはハッとする。この状況はやばい。マロンに土下座させている様に見える。それにチラホラと登校して来た、他の生徒達は面白そうにこちらを見ていた。見せ物状態だ。

(ひええ、私は目立ちたく無いのに!!)

「あ、待ってください。誤解です。落ち着いてください、とりあえず話を………」

こうしてても、埒があかない。とりあえず平和的解決を目指そうとミライはブランに声を掛ける。

「黙れ魔女めっ!!そのように可憐な我が妹に、地に頭をつけさせる鬼畜の所業!!よもや許されると思うかっ!!悪鬼め!!」

下女から魔女に魔女から鬼畜に鬼畜から悪鬼にランクアップしたよ♡成長速度チートだね☆やったぁ♡

(………と言うか私がさせてるんじゃなくて、私がされてるんだが?逆になんの嫌がらせか聞きたいよ)

とは思うが穏便に行こう。とミライはキレそうなのを我慢する。何故ならミライは別に、このキャラを嫌いでは無い。二期の終盤でブランは主人公をかばって死ぬからだ。その理由がマロンを悲しませない為と言うもので、そんな大事な妹がミライに五体投地、平たく言えば土下座していたら、怒りたくなるのも当然である。なので、笑顔で敵意ありませんアピールをする。

「あはは、落ち着いてください、これには訳が………」

「黙れ!!この醜女が!!媚びた顔をすればこの私を籠絡できるとでも思ったかっ!!」

ブランがそう言うや否やチュイン!!と音がしてブランの頬に血の線が走った。たらりと血が垂れる。

そしてドゴッ!!!!と言う音がして、後ろの壁に大きな穴が空いた。

「は?醜女?誰が?ミライがかい?」

かなりの距離があるのにハッキリと聞こえる声の主はユアンだった。彼が氷の刃を飛ばしたのだ。

(ひえええ!!!………ヤバい、完全にキレてますわ。)

教室の温度が多分10度は下がった。

(ひええ、これ。ブラン死んだな、南無三。)

またユアンによる、一方的な蹂躙が始まるかとミライが震えていると可愛らしい声がした。

「あにさま。謝って。」

マロンである。

「我が姫っ!!な、なぜ私が謝らねばならないんだ!?」

そう言うブランは真っ青だ、ユアンが怖いんですね、分かります。

「あにさまがわるい。わたしはたのしんでた。」

「なにっ?」

「おんなのひとに、ひどいこと。だめ。謝って。」

チラリとユアンを見ればゆっくりと近づいて来ている。。

(ヒイィ、またゆっくり来てるぅ!!それ怖いって!!)

しかも今日のユアンは真顔である、怖い。

チラリと下を見ると、にゃん子と桜が五体投地のまま震えていた。

だよね。あのユアン怖いよね?わかります。ミライはうんうんと頷く。

ゆっくりと圧を放ちながら、近づいてくるユアンにブランは覚悟を決めたようだ。

「済まなかった。私の勘違いであった。うる………うるわしぃ………お嬢さん…くっ………」

ブランはプライドをアッサリ捨てて謝った。だが褒めるのは滅茶苦茶辛そうだ。

(私を褒めるのはそんなに嫌か?ああん?)

ミライはイラッとした。それからユアンに視線を向けるとユアンは満面の笑顔だった。

(あ、なんとか惨劇は回避したみたい………、良かった………)

ミライがホッとして居ると、後ろからツバサも駆け寄って来てくれた。

「僕は園田さんの笑顔、可愛いと思うよ………」

目を泳がせて言うツバサ。

「かわいい………よ?」

ミライを見上げてマロンはそう言うと首をコテンと倒す。

(う………気、使われてる………、優しさが逆に辛いんだけど………)

ミライはちょっと泣いた。




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