上 下
35 / 72

33話 混沌。

しおりを挟む





ミライが二人の優しさに涙ちょちょぎれていると、ジョーンズが入って来た。

「あー?誰だ。壁ぇ?……酷いな」

「はい!!僕です、先生」

「あー。ユアンか、後で直しとけよ」

そう、特別クラスでは直せるなら壊してオッケー☆の精神なのである。

「おら、席つけー。まあ床でも何処でも良いから、とりあえず座れ」

適当にジョーンズは言う。何処でも良いらしいので、ミライ達はその場に座ることにした


何故かツバサの膝の上にマロンが座っていて、何故かミライの肩をブランがギリギリ握っている。

(え?痛いんですけど?)

即行でブランは、ユアンに一撃で沈められた。

(折角惨劇回避したのに、御愁傷様。)

ミライがブランを拝んでいるとジョーンズが一言。

「午前は自習!!」

そう言って、すぐに教室から出て行った。ミライは隣に座ったユアンに尋ねる。

「いつもこんな感じなの?こっちって授業はしないの?」

「うん、ほとんどか任務で出払ってる事もあるしね。あ、でも個人的に申し込めば、先生に勉強を見て貰うことも出来るよ?………でも、皆、殆ど申し込んだりして無いけどね」

「へー、じゃあ皆は自習って何するの?」

「それは、ワタクシに説明させて頂けませんか?」 

しずしずと、お淑やかに桜が寄って来た。 

(おめえ今更そのキャラで、行く気か?おん?)

ジト目を向けるミライだが、桜は気づかないフリをして続けていた。

「ご挨拶遅れまして、失礼致しましたわ。ワタクシ、桜志穂ですわ。」

挨拶されたら返さないといけない。渋々ミライも答える。

「園田ミライです。よろしく」

「ではミライ神さま、ご説明させていただきますわね」

「ミライ神さまって何!!!!???」

いつの間にか神になって居たらしいミライは震えた。


そんなミライの後ろでは、ライアンがにゃん子を引っ張り起こして、服の汚れをはたいていた。その横でツバサは膝にマロンを乗せて、隣に座るエリカの頭を撫でていた。

(ん?保育園かな?)

ブランはまだ気絶していた。

そしてブランをヤったユアンは、何処から持ってきたのか壁に土のような物を塗り固めていた。


混沌カオス再びである。

(何これ………?アニメと全然違うんだが?)

ミライがポカンとして居ると桜が咳払いした。

「おほん!!………続けてよろしくて?」

「あ、はい」

「ジムと図書館、実習室は申請しなくても、いつでも使えますので、皆様大体その内の何処かで過ごされますよ」

(ふーん、そうなんだ…、そう言えば紹介映像でもそんな事言ってたっけ?)

「へー、桜さんは何処がオススメ?」

「志穂でよろしいですわ。んー、そうですわね。今なら一番広い実習室が空いていると思いますわ。」

(実習室かあ………)

「………じゃあ皆で行く?」

ミライがくるりと振り返って皆の顔を見渡すと、全員頷いていたので実習室に向かうことになった。




◇◇◇◇◇◇




実習室へ向かう為に廊下をぞろぞろ歩く。

何故かツバサが右手にエリカ、左手にマロンを連れていた。

(保父さん?………違和感無いな。………)

それからミライは肩の痛みに眉を寄せた。

(なんで執拗に私の右肩狙うの?麗しいとか言わせたから?………痛いんだけど)

ミライの右肩をブランはギリギリと音がするくらい、強く掴んで、ツバサとマロンを睨み付けていた。また即行でユアンに沈められていた。それからライアンに担がれている。




そんな風に楽しく(?)連れ立って歩いて居ると前方から、安藤が取り巻きを連れて歩いて来た。

(アレ?普通にボロボロなんですけど?)

桜さん?

チラリと桜を見ると意図が伝わったのか、ウインクされる。

「魔法で怪我を全て治していては、自身の回復力が弱ってしまいますもの。任務中でも有りませんし、余程の怪我ではない限りほどほどに治療しますのよ?それに、あれでも結構サービスして治しましたわよ?」

そう言われてミライは、もう一度安藤達に目をやる。

ところどころ青あざが見えて痛々しい。安藤のだらしなく開いた胸元には裂傷も見える。まだかなり痛々しい。

あれでサービスして治したって。どんだけ痛めつけたの?ユアンさん?

ミライが青ざめて安藤達を見ていると安藤達もこちらに気づいて、一瞬止まって回れ右していた。

(そりゃそうだわ………え?)

去り際に安藤がこちらを、と言うかミライを睨んで居た気がした。

(ひぇ!!もしや私のせいだとバレてる?………うう、なんかごめんね。)






◇◇◇◇◇◇






(え………、これが実習室?アニメでは出て来なかったけど。凄い………)

たどり着いた実習室はこれまた凄かった。扉にかかっている札を使用中に裏返して皆で中に入ると、体育館並みに広い部屋だった。窓際には、6台ほどパソコンが並んでいる。真ん中に大きな会議にでも使うような円卓が有り、20人は座れそうだ。

奥は本棚ゾーンになっており、各種専門書が並んでいる。どれも高い本ばかりだ。その近くには、一人用の勉強机が4つ並んでいる。

(うわー、まじで、通常クラスとは全然待遇が違うなぁ、………まあ、そりゃそうか)


床が一段分せりあがり、靴を抜いで上がる6畳ほどのスペースも有って、フカフカのラグが敷かれている。クッション等も有るので、ゆっくりとするスペースなのかもしれない。

飲み放題の自販機もある。

「………凄いね」

「コチラが一番広い部屋ですので、少人数で使用されるなら、もう少し狭い部屋もありますわ。その時の人数でお選びになられませ」

今日は大人数だしここでオッケーだ。


それぞれ、自由に過ごそうか、となった所でミライは思わず二度見した。

何故かローブ男ミシェルが、部屋の隅のほうで静かに座っている。いつの間に来たの?呼んでないんだが?

ふとミライは思った。

何故か既に桜と行動を共にしているが、まだ本来の【イベント】としては何も起こっていない。

ミライはツバサに近づくとコッソリ耳打ちする。

「一応、本来ならミシェルと桜が絡むイベントがあるから、二人の間で何かあったら止めてくれる?」

「うん、わかったよ。少し気にして見ておくよ」

ミライの言葉にツバサは神妙な顔で頷く。

ストーリーの強制力のせいで、アニメ通りにイベントが起こる可能性もあるので、一応警戒しながら過ごす事にした。

(……でも、なんか…めちゃくちゃになってるけど………。大丈夫かな?)






しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

恋風

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:11

代理で子を産む彼女の願いごと

恋愛 / 完結 24h.ポイント:156pt お気に入り:478

サクリファイスⅡ~2人のジーヴス

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

死に戻り令嬢は橙色の愛に染まる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:156pt お気に入り:2,178

慈子観音

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

おデブな俺が痩せて勇者候補を育てる?なにその無理ゲー

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:102

僕の装備は最強だけど自由過ぎる

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:407

処理中です...