47 / 72
44話 お出掛け
しおりを挟む「へー、そんな事になってたんだ」
ツバサと安藤から説明を受けてミライは驚いた。やはり、アニメとは少しストーリーが変わっているようだ。間違いなくツバサのせいだろう。魔力の扉に鍵をかけたのは、間違い無くおじいさんだなとミライは思った。
「うん。でももう、明日には、ちゃんと魔法が使えるようになるみたいだよ」
「はあー。良かったあ」
ツバサの言葉にミライは思わず、溜め息が漏れる。実は次の4話開始は、2週間程時間が飛んで、6月中頃にあるテストから始まる。筆記も有るが、特別クラスは主に実技で、生徒同士の戦闘もあるのだ。なので、それまでに多少は戦えないと困る。
「おー、コレでみっちりしごいてやれんなぁ、泣き言、言うんじゃねえぞ?」
安藤が面白そうに、ツバサに言う。
「お、お手柔らかにおねがいします…」
ツバサは引き攣った笑顔だ。
(二人、仲良くなってるなー)
ミライ達が話していると後ろの方で、ブランがマロンの髪を梳かしていた。マロンは退屈そうだ。
「……結構時間かかったな」
安藤の呟きに皆時計に目をやると、16時になっていた。
「ねえ、せっかくだから晩ごはんも皆で、食べない?外の店に行こうよ?」
ツバサがそう言うと皆頷いた
「別に私達は構わん」
「うん。いきたい」
「あー?外の店か。だったらいっその事、マジで外出しねえ?学校出てちょっと行くとデカイモールがあるぜ」
安藤がそう言う。
「え?そんなの有りなの?」
ミライは首を傾げた。
「おう、まあな、俺は結構出てたぜ。よし、外出許可貰ってくっから、お前ら着替えて裏門前に集合しとけ」
安藤がそう言って立ち上がる。
「え?着替えるの?わざわざ」
「まあ、確かに、この格好だとラフすぎるもんね、折角のお出かけだし」
ミライの疑問に、ツバサが答えた。
「では、そうするか?姫、着替えよう」
「ん。ふく。あにさま。えらんで」
そんなこんなで一旦解散になった。
◇◇◇◇◇◇
着替えてミライが裏門前に行くと、既に皆集まっていた。今は17時になろうかというくらいだ。
「あー、お待たせ。ごめんね」
「……おせぇ」
安藤以外は、大丈夫だと言ってくれた。ミライは皆をまじまじと眺めた。
(お出かけ用の私服って、結構レアじゃん。ふーん)
ルージュ兄妹はお揃い風のゴシックな服を着ている。マロンは複雑な黒いレースのたっぷりあしらわれたワンピースに、黒いレースの手袋をして、頭には大きなリボンがついている。基本的には白色がメインだ。
ブランは襟元にマロンの物と良く似た、レースがついた白いシャツに、サスペンダー付きの黒いズボンをブーツインしている。ブーツは若干踵が高くなっている。
(おそろコーデ……。ツバサ君は?)
視線をツバサに向ける。ツバサは、ゆったりとしたワインレッドのカーディガンに、ベージュのズボンで足元はシンプルなスニーカーだ。
(シンプルだなぁ。安藤は?)
安藤は派手な柄のアウターに、下は黒いスキニーで、長めの裾から、ゴールドのチェーンがチラチラ見えている。足元はゴツいミリタリーブーツだ。
(派手だなぁ……。チンピラ……)
ミライはシンプルな淡い黄色のカーディガンに、ハーフパンツで、ショートブーツだ。
(うーん。少し地味だったかなぁ?)
目の前のキラキラした集団にミライは少し後退った。
「おら、お前ら、これつけろや」
安藤が、赤い指輪を投げて寄越す。
「ん?なんですか?これ」
「あー?学生が外出する時はそれ、はめんだよ。位置がわかるらしいぜ。因みにそれは、特別クラスので、通常クラスは青いリングだ」
なるほどなとミライは指輪を右手の人差し指にはめる。サイズを教えていない筈なのに、何故かぴったりで困惑しているとブランが補足してくれた。
「ん?どうした、ミライ?ああ、それは魔法具になっているからな。勝手に使用者にサイズを合わせる」
各々指輪をはめると出発だ。
道案内は安藤だ。
「楽しみだね。園田さん」
ツバサが隣にやって来た。
「そうだね。実はアニメでは、皆でお出かけって無かったから、私も結構楽しみ」
◇◇◇◇◇◇
普通に歩いて20分くらいで、大きなモールに着いた。
中に入ると、服屋さんや雑貨屋さん、本屋さんなど色々な店舗が入っていた。買い物やちょっとした用事なら、ここだけで済みそうだ。ミライは一人、のんびりと周囲を見渡す。
(ふふ、……ツバサ君達、楽しそうだな)
今はツバサはミライから離れて、ルージュ兄妹と一緒だ。三人は手を繋ぎ、ミライの前方を歩いていた。ツバサとブランの間に捕らわれの宇宙人のようにマロンが居るが、容姿が良いお陰で微笑ましい。
(クソッ、メインキャラ達めっ)
ちらりと安藤を見ると安藤は、チラチラ道行く女性に見られてて、睨んで居たが睨まれた女性は何故か嬉しそうにしている。
(クソッ、安藤しね)
ミライが容姿の格差社会にションボリして、少し離れて後ろを歩いていると、後ろから声をかけられた。
「あれ?園田さん?」
振り向くと、なんとなく見覚えのある男が二人立っていた。茶髪茶目の平凡な見た目の男と、黒髪短髪で柔道とかしてそうな雰囲気の厳つい男だ。
(ん?誰だっけ)
ミライが記憶を探していると茶髪の男が口を開いた。少し冷や汗をかいている。
「あ、あれ?もしかして、覚えてないの?ほら、保健室にツバサ君運んだじゃん」
(あ!!確かに……)
「うわ、その顔、図星?俺、山田だよー山田……クラスメイトだったのに、ひでー」
(山田?はて……座布団……あ!!このモブ。アニメの一話でも一瞬出てたわ)
ミライは思い出した。
「あ、山田君!!そうそう。えーと、そちらは川、か、川田くん?」
「川谷だ」
「ご、ごめん」
入学当初の記憶を探ってもそんなに絡んでなかったので、うろ覚えだった。二人は青いリングをはめている。
(なんか、落ち着くなー)
ふと、モブモブしい見た目の二人に、なんだか親近感が湧いて落ち着く。
「まあ良いけどね、一人で来てたの?めっちゃびっくりしたよ、いきなり編入して行ったからさ」
山田が笑いながら肩に手を置いてくる。
「おい」
川谷が、たしなめるように山田を呼ぶが、山田は知らん顔だ。
「ねー、よかったら俺達と遊ばない?」
山田はニコニコと顔を近づけてくる。
「え、」
(ち、ちかっ、顔近いよ!!)
ミライが焦っていると後ろから、ぐいっと腕を引かれた。両腕である。
右腕にブラン。
左腕に安藤だ。
ツバサは出遅れたようにその少し後ろの方で、変なポーズをしていた。
「あー?ナンパなら他所でやれや。これ、俺の女なんで」
と安藤。
(ファっ!!違いますけど?!)
「彼女は私と先約があるのでな、消えろ」
とブラン。
まさかの乙女ゲーかよっと言う状態に、ミライはドキドキ。
してない。
なぜなら腕が痛くてそれどころじゃないからだ。
ギチギチと音が鳴るほどに、二人から握り締められていた。
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!)
0
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる