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44話 お出掛け
しおりを挟む「へー、そんな事になってたんだ」
ツバサと安藤から説明を受けてミライは驚いた。やはり、アニメとは少しストーリーが変わっているようだ。間違いなくツバサのせいだろう。魔力の扉に鍵をかけたのは、間違い無くおじいさんだなとミライは思った。
「うん。でももう、明日には、ちゃんと魔法が使えるようになるみたいだよ」
「はあー。良かったあ」
ツバサの言葉にミライは思わず、溜め息が漏れる。実は次の4話開始は、2週間程時間が飛んで、6月中頃にあるテストから始まる。筆記も有るが、特別クラスは主に実技で、生徒同士の戦闘もあるのだ。なので、それまでに多少は戦えないと困る。
「おー、コレでみっちりしごいてやれんなぁ、泣き言、言うんじゃねえぞ?」
安藤が面白そうに、ツバサに言う。
「お、お手柔らかにおねがいします…」
ツバサは引き攣った笑顔だ。
(二人、仲良くなってるなー)
ミライ達が話していると後ろの方で、ブランがマロンの髪を梳かしていた。マロンは退屈そうだ。
「……結構時間かかったな」
安藤の呟きに皆時計に目をやると、16時になっていた。
「ねえ、せっかくだから晩ごはんも皆で、食べない?外の店に行こうよ?」
ツバサがそう言うと皆頷いた
「別に私達は構わん」
「うん。いきたい」
「あー?外の店か。だったらいっその事、マジで外出しねえ?学校出てちょっと行くとデカイモールがあるぜ」
安藤がそう言う。
「え?そんなの有りなの?」
ミライは首を傾げた。
「おう、まあな、俺は結構出てたぜ。よし、外出許可貰ってくっから、お前ら着替えて裏門前に集合しとけ」
安藤がそう言って立ち上がる。
「え?着替えるの?わざわざ」
「まあ、確かに、この格好だとラフすぎるもんね、折角のお出かけだし」
ミライの疑問に、ツバサが答えた。
「では、そうするか?姫、着替えよう」
「ん。ふく。あにさま。えらんで」
そんなこんなで一旦解散になった。
◇◇◇◇◇◇
着替えてミライが裏門前に行くと、既に皆集まっていた。今は17時になろうかというくらいだ。
「あー、お待たせ。ごめんね」
「……おせぇ」
安藤以外は、大丈夫だと言ってくれた。ミライは皆をまじまじと眺めた。
(お出かけ用の私服って、結構レアじゃん。ふーん)
ルージュ兄妹はお揃い風のゴシックな服を着ている。マロンは複雑な黒いレースのたっぷりあしらわれたワンピースに、黒いレースの手袋をして、頭には大きなリボンがついている。基本的には白色がメインだ。
ブランは襟元にマロンの物と良く似た、レースがついた白いシャツに、サスペンダー付きの黒いズボンをブーツインしている。ブーツは若干踵が高くなっている。
(おそろコーデ……。ツバサ君は?)
視線をツバサに向ける。ツバサは、ゆったりとしたワインレッドのカーディガンに、ベージュのズボンで足元はシンプルなスニーカーだ。
(シンプルだなぁ。安藤は?)
安藤は派手な柄のアウターに、下は黒いスキニーで、長めの裾から、ゴールドのチェーンがチラチラ見えている。足元はゴツいミリタリーブーツだ。
(派手だなぁ……。チンピラ……)
ミライはシンプルな淡い黄色のカーディガンに、ハーフパンツで、ショートブーツだ。
(うーん。少し地味だったかなぁ?)
目の前のキラキラした集団にミライは少し後退った。
「おら、お前ら、これつけろや」
安藤が、赤い指輪を投げて寄越す。
「ん?なんですか?これ」
「あー?学生が外出する時はそれ、はめんだよ。位置がわかるらしいぜ。因みにそれは、特別クラスので、通常クラスは青いリングだ」
なるほどなとミライは指輪を右手の人差し指にはめる。サイズを教えていない筈なのに、何故かぴったりで困惑しているとブランが補足してくれた。
「ん?どうした、ミライ?ああ、それは魔法具になっているからな。勝手に使用者にサイズを合わせる」
各々指輪をはめると出発だ。
道案内は安藤だ。
「楽しみだね。園田さん」
ツバサが隣にやって来た。
「そうだね。実はアニメでは、皆でお出かけって無かったから、私も結構楽しみ」
◇◇◇◇◇◇
普通に歩いて20分くらいで、大きなモールに着いた。
中に入ると、服屋さんや雑貨屋さん、本屋さんなど色々な店舗が入っていた。買い物やちょっとした用事なら、ここだけで済みそうだ。ミライは一人、のんびりと周囲を見渡す。
(ふふ、……ツバサ君達、楽しそうだな)
今はツバサはミライから離れて、ルージュ兄妹と一緒だ。三人は手を繋ぎ、ミライの前方を歩いていた。ツバサとブランの間に捕らわれの宇宙人のようにマロンが居るが、容姿が良いお陰で微笑ましい。
(クソッ、メインキャラ達めっ)
ちらりと安藤を見ると安藤は、チラチラ道行く女性に見られてて、睨んで居たが睨まれた女性は何故か嬉しそうにしている。
(クソッ、安藤しね)
ミライが容姿の格差社会にションボリして、少し離れて後ろを歩いていると、後ろから声をかけられた。
「あれ?園田さん?」
振り向くと、なんとなく見覚えのある男が二人立っていた。茶髪茶目の平凡な見た目の男と、黒髪短髪で柔道とかしてそうな雰囲気の厳つい男だ。
(ん?誰だっけ)
ミライが記憶を探していると茶髪の男が口を開いた。少し冷や汗をかいている。
「あ、あれ?もしかして、覚えてないの?ほら、保健室にツバサ君運んだじゃん」
(あ!!確かに……)
「うわ、その顔、図星?俺、山田だよー山田……クラスメイトだったのに、ひでー」
(山田?はて……座布団……あ!!このモブ。アニメの一話でも一瞬出てたわ)
ミライは思い出した。
「あ、山田君!!そうそう。えーと、そちらは川、か、川田くん?」
「川谷だ」
「ご、ごめん」
入学当初の記憶を探ってもそんなに絡んでなかったので、うろ覚えだった。二人は青いリングをはめている。
(なんか、落ち着くなー)
ふと、モブモブしい見た目の二人に、なんだか親近感が湧いて落ち着く。
「まあ良いけどね、一人で来てたの?めっちゃびっくりしたよ、いきなり編入して行ったからさ」
山田が笑いながら肩に手を置いてくる。
「おい」
川谷が、たしなめるように山田を呼ぶが、山田は知らん顔だ。
「ねー、よかったら俺達と遊ばない?」
山田はニコニコと顔を近づけてくる。
「え、」
(ち、ちかっ、顔近いよ!!)
ミライが焦っていると後ろから、ぐいっと腕を引かれた。両腕である。
右腕にブラン。
左腕に安藤だ。
ツバサは出遅れたようにその少し後ろの方で、変なポーズをしていた。
「あー?ナンパなら他所でやれや。これ、俺の女なんで」
と安藤。
(ファっ!!違いますけど?!)
「彼女は私と先約があるのでな、消えろ」
とブラン。
まさかの乙女ゲーかよっと言う状態に、ミライはドキドキ。
してない。
なぜなら腕が痛くてそれどころじゃないからだ。
ギチギチと音が鳴るほどに、二人から握り締められていた。
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!)
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