【改稿版】この世界の主人公が役にたたないのでモブの私がなんとかしないといけないようです。

鳳城伊織

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50話 謝罪

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「お兄ちゃん!!帰って来たわよっ!!」

ガラリと扉が開いて、エリカが飛び込んで来た。


(よっしゃ、ナイスタイミングッ)

ミライはこれ幸いと席を立つ。ブランと妙な雰囲気だったので、正直焦った。

(なんかまた、瞳の色ピンクぽかったし……。赤色の見間違いかな?)

ちらりと見ると、ブランは座ったままミライの背中を目で追っている。その目元は、今はサングラスで隠れていて、見えない。

(なんだろ?なんか、気になるけど。でも、今は聞かない方が良い気がする……。ブラン、なんか今日、変だし……、とりあえず、今は、そっとしておこうかな。エリカちゃんも帰って来たし……)



「おかえり。エリカちゃん」

「ただいま。お兄ちゃん!!は……、え?」

ツバサがエリカに笑顔でそう返すと、エリカは頬を紅潮させて嬉しそうだ。だが、その視線がツバサの隣に向かい、その顔に浮かんだのは、困惑となんとも言えない、複雑な表情だ。

(あー!!しまった安藤!!)

ミライはハッとした。だが今更遅い。安藤とエリカはバッチリと目が合っている。ツバサも気づいたのか、エリカと安藤を交互に見て、冷や汗を流していた。


(これはヤバい。いろんな意味で……)


スッとエリカの顔から表情が消えた。実習室の中には、今張り詰めた空気が流れていた。

それをブチ壊したのは 

「はぁー、疲れたわぁー、皆、ただいまぁ。今、帰ったよぉ。お土産あるでぇー、早いもの勝ちかもねぇ」

両手に手提げをいっぱい持った、ライアンの呑気な声だった。

(んー、温度差ァ!!!!)

ミライはずっこけた。

ライアンの声に、先に我に帰ったのは安藤だった。

「本当にすまなかったっ!!悪かった!!」

エリカに向かって、勢い良く頭を下げて、叫ぶように言う。

「謝って許されるとは思ってねぇ、だが、俺はこれから変わる!!あいつらと一緒に頑張って行きたいんだ!!」

安藤は深々と頭を下げたまま、動かない。

無表情でフリーズしていたエリカも動き出した。

「っ……なんで、アンタ……。今更、知らないわっ!!私には、関係ないものっ!!勝手にしなさいよっ!!」 

エリカは、そのまま部屋を飛び出して行った。

それをポカンと見送りライアンは頭にハテナを浮かべている。

「え?なに?なにがあったん?えと、ど、どちらさまかなぁ?」

そう安藤に尋ねている。

ライアンにも、やはりイメチェンした安藤が分からないようだ。

(髪色も違うし、仕方ないよねぇ)









◇◇◇◇◇◇







「へぇ、安藤。それでぇ、エリカちゃんに謝罪して、どうするつもりやったん?」

ツバサから安藤だと教えられたライアンは、安藤へと冷たい視線を向けている。その瞳の奥には、静かな怒りが有る。

「は……?あ?別にどうもしねえよ。ただ、ケジメをつけてえだけだ」

「ふーん。それって自己満足やんねぇ、安藤が傷つけた子達全員にも謝るってわけやないんやろぉ?」

(うわ、めっちゃ怖い。怒ってるライアンさん、めっちゃ怖い)

ミライはブルリと震えた。見ると、安藤以外、青い顔で震えている。

「いや、それは、っ……、わかってんだよ。やっちまったことは、もうどうにもなんねえって。別に謝って許されたいとも思ってねぇ」

ぐっと苦しそうに、安藤は目を閉じた。

「やめて。かぜあにさま。いじめないで」

「姫?!」

安藤を背に庇う様に、マロンが手を広げる。ブランが驚きの声を上げた。

まさかのマロンの登場に、ライアンも驚きに目を見開いている。庇われた安藤も驚きをその顔に浮かべていた。

「え……?はあ。そう。わかったぁ、コレで続けたら、私が悪モンやんねぇ……。それに、もう良いやろ。二人共、入っておいでぇ?」

ライアンがため息を吐いて入口の方へと声を掛けると、困った顔のユアンと泣きそうなエリカが入って来た。

「ごめんね。外で全部聞いていたよ」

苦笑しながら、ユアンがそう言う。

「……」

エリカは視線をうろうろと彷徨わせて、俯いた。暫しの沈黙の後、覚悟を決めた様に顔を上げて、安藤を見る。

「っ……許すとか許さないとか、今は言えない。反省してるのなら、ちゃんと行動で示しなさいよ!!これからずっと、見張ってるんだからねっ!!」

そう言ってからプイッとそっぽを向くエリカを、ライアンは優しい顔で見ている。

「?!……ああ、そうしてくれや。また、俺が馬鹿やったら、ユアンがまた打ちのめしてくれんだろ?」

安藤はエリカの言葉にホッとした様に息を吐き、少し困ったように笑う。

「ああ任せてくれ。次は本気で行くよ」

なんかユアンが恐ろしいことを言い出した。


「お……おう。たのむぜぇ…」

青い顔で安藤はユアンへ返す。なんとも締まらない男だ。

(安藤ェ)


「はい!!はい!!ほな皆、お土産配るから並んでやぁ。早いもの勝ちやから、良いものは、すぐ無くなってまうよぉ?」

パンパンと大きく手を叩き、ライアンが言う。

(お土産?ラッキー)

ミライとマロンは速攻貰いに行く。ふと周りを見ると、誰も動いていない。

(あれ?)

ミライは首を傾げた。良く見ると、皆、なんか変な顔をしている。

「あらぁ、一番乗りは、マロンちゃんなんやねえ。お好きなのどーぞ」

そう言ってライアンは紙袋をひっくり返して、物を出す。

「これにする」

「んー、いいよぉ。持ってお行き」

マロンが手にしたのは、不細工な、ひょっとこのお面だった。

(ん?んん?)

なにやら雲行きが怪しい。

「次はミライちゃんやね。どーぞぉ」

そこにはなんか良くわからない置物。(怖い顔のミイラ?)とか変なお面とか、触ると無駄に良い声で笑う袋とかが、散らばっていた。

「ええ?」

なにこのチョイス、お土産と言う名の嫌がらせか?と思い辺りを見回すと皆。目をそらしていた。

全てを察したミライだった。

「んー?はよぉ選んでなあ。なんでもいいんよぉ?」

催促されたので渋々笑い袋を手に取る。ぎゅうっと握ると笑い袋が震えてめちゃくちゃダンディーボイスで笑い出した。

「お嬢さん。そこはいけません。はっはっはっ。」

「ひえ……なにこれえ」

その後も笑い袋?はバリエーション豊かに笑っていた。無駄に良い声が腹立つ。

ミライは大人なので、震えながらライアンにお礼を言った。

(くっそセンスねぇぇぇぇ!!!要らねぇぇぇぇ!!!)

内心大絶叫である。

「皆?もうっ!!遠慮なんてしなくていいんよぉ?」

ライアンが嬉しそうに言う。

(いや、遠慮してるんじゃない)

ミライは内心で突っ込んだ。

にゃん子がライアンと目があったようで、青い顔でこちらに近づいて来た。

「ほらほら。皆こっちおいでぇ」

ライアンからの圧が凄い。

常識人だと思ったのに。ライアンも変人だった。

(こんな裏設定?……知りたくなかった)

ミライは涙を一粒零した。そんなミライの隣に、ユアンがそっと立つ。

「やあ、ミライ。久しぶり。凄く会いたかったよ?」

キラキラした笑顔だ。

「ん、ユアンおかえり。あはは……。へー?そーなんだ?」

「ふふふ、その袋、おもしろいね?」

ユアンがツンツンと笑い袋を突く。

「勘弁して下さい。私には妻も子供もいるのです」

笑い袋は結婚しているらしい。

(マジ、なんなのこれ)

ミライが凄い顔をしていると、ユアンは困ったように笑った。

「ライアンは少しだけ、趣味が変わってるんだ」


(少し?)

少しってどう言う意味だっけと思い、ミライは後で辞書をひくことにした。








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