美味しくて切なくて優しい、ちいさな恋物語

かみゅG

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サマー・ベジタブル

であい(その3)

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「おはよう♪ 今日もいい天気よ」

 昨日の辛気臭い雰囲気とは違い、今日は機嫌がいいようだ。

「おはよう。今日もたくさん養分が創れそうだな」

 吾輩も挨拶を返す。
 最近、小娘がよく話かけてくる。
 もともと、お喋りが好きならしく、用事がなくても話しかけてくる。
 高飛車な態度はあいかわらずだが、それも子供が背伸びしていると思えば、腹も立たない。

「ところであなた、考え無しに手足を伸ばしているように見えるけど、蕾を創る準備はしているの?」

 そんなことを聞いてきた。

「ん? 蕾?」

 考えてもいなかったことを聞かれ、深く考えずに、そう答えてしまう。

「そうよ。わたしたちはそれが使命なんだから。蕾をつけて、花をさかせ、おいしい実をつけるの」

 吾輩の反応が予想通りだったのか、そんな説明をしてくる。

「むぅ。あまり意識はしていなかったが」

 そういえば、いつか親友も似たようなことを言っていたな。
 子孫を残すのが目的だと。
 小娘は子孫を残す手前の、実を付けることが目的のようだが。

「わたしはね。いっぱい子供を創るのが夢なの」

 そんなことを語ってきた。
 自らの夢を語る姿を見ると、親友のことを思い出す。

「夢……か」

 いい言葉だ。
 親友は頑なに夢という言葉を使いたがらなかった。
 夢という言葉を使うには、親友はぎらつき過ぎていた。
 執念といってもよい、必死さだった。
 それに比べて、小娘が目的に向かって進む姿は、希望に満ち溢れている。

 優劣を付けるつもりはない。
 親友は自分の強さに誇りを持ち、目的を達成することを生き様としていた。
 小娘は自分の血統に誇りを持ち、使命を果たすことに夢と希望を持っている。

 いまだ明確な目的を決めることができていない吾輩には、どちらも輝いて見えた。

「そうだな。吾輩も蕾を創る準備をするとしよう。今日は教えられてしまったな。感謝する」

 相手が子供だとしても、礼儀は忘れてはならない。

「ふふん。めいっぱい感謝しなさい」

 上から目線ではあるが、こちらを見下しているわけでもないようだ。

「ああ、感謝する」

 だから、吾輩も素直に感謝の言葉を口にできる。

「そ、そう? う、うん、それでいいのよ」

 吾輩が素直に感謝したことに動揺したのか、話し方が挙動不審だ。
 どうも照れているらしい。
 しかし、そんなに驚くことだろうか。
 吾輩も恩を感じたときは、たとえ年下だったとしても、礼を言うくらいの常識はあるのだが。
 偏屈な年寄りだとでも思われていたのだろうか。

☆★☆★☆★☆★☆★

「なんだか最近、身体が怠いのよ」

 ある日、小娘がそんなことを言い出した。

「む? こんなに天気がよいのにか?」

 吾輩は特にそんな感じはしない。
 いつも通りだ。

「手で養分は創れているし、足からも吸い上げているんだけど、力が抜けていく感じがするのよ」

 種族の違いはあるだろうが、生態はそれほど変わらない。
 陽の光を取り込んで、手で養分を創る。
 足から水と養分を吸い上げる。
 それは同じだ。

「吾輩はそんなことはないが……。変な病気にでもかかったのではないか?」

 考えられるとしたら、種族特有の病ということだ。
 だが、小娘はそれに反論してくる。

「ちょっと、いい加減なこと言わないでよ。ほら、肌の色も綺麗な緑でしょ」

 張りのある肌、健康そうな手足。
 確かに見た感じ、病気ではなさそうだ。
 だが、それなのに体調が悪いというのが、逆に気になる。

「ちょっと、乙女の肌をそんなにじろじろ見ないでよ。デリカシーがないわよ」

 照れたように言ってくる。
 自分が肌のことを言い出しのに、勝手なものだ。
 だが、確かにデリカシーはなかったかも知れない。

「すまん。だが、健康には気を付けた方がいいぞ。季節の変わり目は体調を崩しやすいと聞く」

 病気ではなく、見た目にも変化が無いとなると、それくらいしか言うことができない。

「そうね。夏風邪でもひいちゃったかしら?でも、心配してくれて、ありがと」

 小娘も心当たりがないようだ。

「う、うむ」

 いつものような憎まれ口をたたくこともなく、素直に礼を言ってくる。
 なんだか調子が狂う。
 しかし、本当に大丈夫なのだろうか。
 どうも、弱っているような感じがして不安だ。
 普段の高飛車な態度の方が、まだ安心ができる。
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