美味しくて切なくて優しい、ちいさな恋物語

かみゅG

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サマー・ベジタブル

であい(その4)

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「はあ……はあ……」

 小娘の様子がおかしい。

「おい。本当に大丈夫なのか?」

 数日後、小娘が萎れてきた。

「だめ。だんだん酷くなってる気がする」

 いつもの強気な態度を保つこともできないようだ。
 弱気な台詞を口にする。

「しっかりしろ。いったい何が起きているというのだ」

 なにか原因は見つからないかと、小娘の身体をすみずみまで眺める。

「デリカシーが……」

 強気な態度は保てないのに、乙女の恥じらいは忘れていないらしい。
 だが、そんなことには構ってられない。
 小娘の身体を観察し続ける。

「そんなことを言っている場合か」

 ふと、小娘の身体に小さく黒いものがついているのが気になった。
 風で飛ばされてきた土埃かと思っていたのだが、風もないのに何やら動いている。
 目を凝らしてみると、小さい虫のように見える。

「なにやら、小さな虫にまとわりつかれているようだぞ」

 気づいたことを教えてやる。

「え? うそ!」

 案の定、気づいていなかったようだ。
 小娘は慌てて自分の身体を眺める。

「最悪! こいつら、わたしたちの天敵じゃない!」

 気づいた瞬間、叫び声を上げる。

「なんなんだ、こいつらは」

 小娘の反応を見るに、予想以上の危機が起こっているようだ。

「こいつら、わたしたちの体液を吸い取るのよ! どうりで身体から力が抜けると思った!」

 原因は分かった。
 後は対処方法だ。

「どうすればいい?」

 体液を吸い取るといっても、量によって影響は様々だろう。
 しかし、小娘の慌て具合からして、どうもかなりマズイ状況らしい。

「ニンゲンなら追い払ってくれると思うけど、わたしたちじゃ、どうしようもないわよ!」

 自力での対処は難しいようだ。

「むぅ」

 吾輩にも、できることは無さそうだ。
 だが、このまま小娘が弱っていくのを、ただ見ているのも気が引ける。
 見殺しにするのは、趣味じゃない。

「もうやだ! このままじゃ、子供が産めなくなっちゃう!」

 小娘が半狂乱になって取り乱す。
 自分の心配よりも、夢が叶えられなくなる心配か。
 小娘の夢にかける情熱は、吾輩が考えていたよりも熱いらしい。

 ……

 ふむ。

「おい、虫ども。どうせ取り付くなら吾輩の方に取りつくがいい」

 言葉が通じるとは思っていないが、小娘にたかる虫に、そう声をかける。
 風に吹かれるままに手を揺らし、小娘の身体に触れさせる。

「ちょっと! なに言い出すのよ! それにどうせこいつらに言葉は通じないわよ」

 そんなことは分かっている。
 しかし、言葉は通じずとも、雰囲気は伝わるかも知れないではないか。
 野生の生き物は気配に敏感だとも聞く。

「なに。吾輩の方が身体が頑丈だ。どうせなら、そいつらも吾輩から吸った方が旨いのではないかと思ってな」

 小娘の身体に触れ続ける。
 虫たちに、こちらに来いと念じながら。

「どさくさに紛れてなにいってるのよ! わたしの方がおいしいわよ!」

 小娘がぎゃあぎゃあと言っている。
 気力は戻ってきたようだが、体力的に辛そうなのは変わらない。
 やはり、このままではマズイようだ。

「お?」

 先に気づいたのは吾輩だ。
 それを見たからなのか、小娘もすぐに気づく。

「あ!」

 言葉が通じたのかは分からないが、虫どもの何匹かがこちらに飛んできた。
 なるほど、意識しないと気付かないが、確かに何かを吸われているような感覚がある。
 一匹なら大したことはないが、集団で来られると命にかかわりそうだ。

「なんで、自分から虫を引き寄せてるのよ! こいつらの怖ろしさが分からないの!」

 自分の身体から虫が減っているというのに、小娘は不満そうだ。

「吾輩なら、ちょっとくらい吸われても問題ない。それよりも、たとえ体液の味でも負けるのは癪なのでな」

 仕方が無いので、そう言っておく。

「……もしかして、わたしのために?」

 妙なところで勘の鋭い小娘だ。

「なに、若者が頑張っているのを見ると、応援したくなる性分でな」

 別に特段、小娘を庇っているというわけではない。

「あなた、わたしと同じくらいの歳じゃない!」

 適当に小娘をあしらいながら、虫どもの様子を見る。
 だいたい半分くらいが、こちらに来たようだ。
 これで小娘の負担も減るだろう。
 だが、根本的に解決したわけではない。
 後はニンゲンが気づいてくれればよいが。
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