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スイート・ツリー
二年目の秋(その2)
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「今年も綺麗に紅葉しましたね」
小娘が遠くを見ながら呟く。
「そうねー。赤色や黄色でカラフルよねー」
ピンク色も同じ感想のようだ。
だが、花の美しさに誇りを持つ吾輩は、どうしても対抗心を燃やしてしまう。
「むぅ。悔しいがあの色は吾輩たちには出せないな」
淡い赤や白。
それが吾輩たちが出せる色だ。
上品な色彩で、決して負けているとは思わない。
だが、紅葉が見せる景色の美しさは、認めざるを得ない。
赤色や黄色といった、強烈な色彩。
それが紅葉の特徴だ。
それなのに、ケバケバしくはない。
葉の緑や枯葉の茶色とも調和が取れている。
「しかも、あれが花ではなく葉の色だというのだからな」
花がそれだけで誇る美しさとは違う。
周りと調和を取りながらも、主張を忘れない美しさ。
それが紅葉だ。
「わたしたちの葉っぱは、色が変わりませんね」
ただ、落ちるだけだ。
まあ、葉が無い状態で花を咲かせるから、花の美しさが目を引くというのも確かなのだが。
「秋まで頑張っていたら、花を咲かせる頃には疲れちゃうしねー。ちょうどいいんじゃないー?」
そういう話でもない気がするのだが、吾輩も紅葉まで張り合う気はない。
向こうの見せ場を奪ってしまうからな。
それにしても、ピンク色は普段から、あまり勝ち負けにこだわらないな。
花も美しく、実も旨い、上に立つ者の余裕だろうか。
だが、驕っているようには見えない。
性格か。
「それにしても、今年は火事と間違えなかったな、スモモ」
1年前は勘違いして騒いでいたのだが。
「もうっ! ウメさん意地悪です。誰だって初めてああなっているのを見れば、火事と間違えますよ。だって、真っ赤なんですから」
吾輩やピンク色は、そんなことは無かった気がするが、それは黙っていよう。
それに昔は、近くに紅葉する連中がいた。
火事でないことは一目で分かったからな。
今は切り倒されて、そいつらはいないが。
思えば、この辺りも知り合いが少なくなったな。
かつては様々な種族が入り混じっていたのだが。
「どうしました?」
哀愁を感じ取ったのだろうか。
小娘が少し心配そうに声をかけてくる。
「いや……スモモも成長したなと思ってな」
昔のことを思い出して物悲しくなるのは、歳を取った証拠だろうか。
わざわざそれを、若い小娘に伝えることもないな。
「なになにー? スモモちゃんが成長したのを見て、ムラムラしちゃったってことー?」
「えっ!」
すかさず、ピンク色が茶化してくる。
「そんなわけがあるか。1年前を思い出していただけだ」
言い返すつもりで口にした言葉だが、それも間違っているわけではない。
たかが一年、されど一年。
小娘が増えたし、あの子も増えた。
思えば、いつもの年より変化が多かった気がする。
そして、しばらくは変化が多い年が続くのだろう。
一時期は、人間たちに切り倒されるか、ピンク色と二人だけで生涯を終えるものかと考えていたからな。
そう考えると、がらりと環境が変わったな。
「そんなにはっきり否定されると、ちょっと複雑ですけど」
小娘が拗ねたように言う。
だからと言って、自分を見て発情したと言われても困るだろうに。
「まあ、モモの戯言はさて置き、色々あったと思ってな。ずっと変化がない生活が続いていたから」
たまに人間が増えたり減ったりするが、その程度だ。
「そうなんですか?」
若い小娘にはピンと来ないか。
「そうねー。季節の変化はあるけど、毎年のことだしねー」
変化がないということは、退屈なだけではない。
次第に感情が揺れることも、無くなっていく。
何も考えずに立ち尽くすだけ。
ただ存在するためだけに、生きているようなものだ。
吾輩はピンク色という話し相手がいたから、まだマシな方だ。
それでも、あのまま自分が切り倒されたとしても、何も感じなかった可能性がある。
今は、それは嫌だと思える。
「なにはともあれ、もうすぐ冬か」
「寒くなってきたからねー」
「寝て起きたら、忙しくなりますね」
毎年のことなのに、いつもより楽しみに感じる。
燃えるような赤色と、輝くような黄色を見ながら、そう思った。
☆★☆★☆★☆★☆★
初雪が降る頃。
「それで、どうするのー? ウメさん」
ピンク色が尋ねてきた。
「あぁ」
葉は全て落ちた。
もうすぐ、眠りにつく時期だ。
事実、小娘は眠そうにしている。
「寝て起きたら、花が咲いちゃうわよー」
毎年のことだ。
言われなくても分かっている。
「そうだな」
だが、ピンク色が言っているのは、そういうことではない。
それも分かっている。
「実をつけるなら、花が散る前よねー」
これ以上言われては男が廃るな。
「わかっている……スモモ」
「ふぁい?」
眠たそうにしながらも、こちらが呼ぶ声に反応する小娘。
「・・・子供は欲しいか?」
「赤ちゃん? 欲しいですぅ」
寝ぼけながらも、希望を伝えてくる。
「相性の問題もあるから、絶対とは言えないが……」
「?」
不思議そうに小首を傾げる。
まだ、理解が追いついていないようだ。
「吾輩の子供を産んでくれるか?」
「!」
ようやく、理解が追いついたようだ。
「本当ですかっ!」
「こんなことで、冗談は言わない」
「嬉しいですっ!」
「期待させておいてなんだが、まだ絶対とは……」
「大丈夫ですっ!」
眠気は一気に吹き飛んだようだ。
腕を揺らして、全身で喜びを表現している。
「あまり興奮するな。早く寝ないと、寝坊するぞ」
「ドキドキして眠れそうにありません」
しまったな。
起きてから伝えるべきだったか。
ピンク色が急かしてくるせいだ。
「よかったわねー、スモモちゃん」
「はいっ!」
まあ、いいか。
ピンク色は小娘を微笑ましそうに見ている。
二人の様子を見ていると悪い気はしない。
気づかないうちに子供ができているよりは、この方がよかったのかも知れないな。
「それでは、吾輩はもう寝るぞ」
「おやすみなさいっ!」
「おやすみー」
照れくささも手伝って、吾輩はとっとと眠りにつくことにした。
寝坊しないようにしないとな。
小娘が遠くを見ながら呟く。
「そうねー。赤色や黄色でカラフルよねー」
ピンク色も同じ感想のようだ。
だが、花の美しさに誇りを持つ吾輩は、どうしても対抗心を燃やしてしまう。
「むぅ。悔しいがあの色は吾輩たちには出せないな」
淡い赤や白。
それが吾輩たちが出せる色だ。
上品な色彩で、決して負けているとは思わない。
だが、紅葉が見せる景色の美しさは、認めざるを得ない。
赤色や黄色といった、強烈な色彩。
それが紅葉の特徴だ。
それなのに、ケバケバしくはない。
葉の緑や枯葉の茶色とも調和が取れている。
「しかも、あれが花ではなく葉の色だというのだからな」
花がそれだけで誇る美しさとは違う。
周りと調和を取りながらも、主張を忘れない美しさ。
それが紅葉だ。
「わたしたちの葉っぱは、色が変わりませんね」
ただ、落ちるだけだ。
まあ、葉が無い状態で花を咲かせるから、花の美しさが目を引くというのも確かなのだが。
「秋まで頑張っていたら、花を咲かせる頃には疲れちゃうしねー。ちょうどいいんじゃないー?」
そういう話でもない気がするのだが、吾輩も紅葉まで張り合う気はない。
向こうの見せ場を奪ってしまうからな。
それにしても、ピンク色は普段から、あまり勝ち負けにこだわらないな。
花も美しく、実も旨い、上に立つ者の余裕だろうか。
だが、驕っているようには見えない。
性格か。
「それにしても、今年は火事と間違えなかったな、スモモ」
1年前は勘違いして騒いでいたのだが。
「もうっ! ウメさん意地悪です。誰だって初めてああなっているのを見れば、火事と間違えますよ。だって、真っ赤なんですから」
吾輩やピンク色は、そんなことは無かった気がするが、それは黙っていよう。
それに昔は、近くに紅葉する連中がいた。
火事でないことは一目で分かったからな。
今は切り倒されて、そいつらはいないが。
思えば、この辺りも知り合いが少なくなったな。
かつては様々な種族が入り混じっていたのだが。
「どうしました?」
哀愁を感じ取ったのだろうか。
小娘が少し心配そうに声をかけてくる。
「いや……スモモも成長したなと思ってな」
昔のことを思い出して物悲しくなるのは、歳を取った証拠だろうか。
わざわざそれを、若い小娘に伝えることもないな。
「なになにー? スモモちゃんが成長したのを見て、ムラムラしちゃったってことー?」
「えっ!」
すかさず、ピンク色が茶化してくる。
「そんなわけがあるか。1年前を思い出していただけだ」
言い返すつもりで口にした言葉だが、それも間違っているわけではない。
たかが一年、されど一年。
小娘が増えたし、あの子も増えた。
思えば、いつもの年より変化が多かった気がする。
そして、しばらくは変化が多い年が続くのだろう。
一時期は、人間たちに切り倒されるか、ピンク色と二人だけで生涯を終えるものかと考えていたからな。
そう考えると、がらりと環境が変わったな。
「そんなにはっきり否定されると、ちょっと複雑ですけど」
小娘が拗ねたように言う。
だからと言って、自分を見て発情したと言われても困るだろうに。
「まあ、モモの戯言はさて置き、色々あったと思ってな。ずっと変化がない生活が続いていたから」
たまに人間が増えたり減ったりするが、その程度だ。
「そうなんですか?」
若い小娘にはピンと来ないか。
「そうねー。季節の変化はあるけど、毎年のことだしねー」
変化がないということは、退屈なだけではない。
次第に感情が揺れることも、無くなっていく。
何も考えずに立ち尽くすだけ。
ただ存在するためだけに、生きているようなものだ。
吾輩はピンク色という話し相手がいたから、まだマシな方だ。
それでも、あのまま自分が切り倒されたとしても、何も感じなかった可能性がある。
今は、それは嫌だと思える。
「なにはともあれ、もうすぐ冬か」
「寒くなってきたからねー」
「寝て起きたら、忙しくなりますね」
毎年のことなのに、いつもより楽しみに感じる。
燃えるような赤色と、輝くような黄色を見ながら、そう思った。
☆★☆★☆★☆★☆★
初雪が降る頃。
「それで、どうするのー? ウメさん」
ピンク色が尋ねてきた。
「あぁ」
葉は全て落ちた。
もうすぐ、眠りにつく時期だ。
事実、小娘は眠そうにしている。
「寝て起きたら、花が咲いちゃうわよー」
毎年のことだ。
言われなくても分かっている。
「そうだな」
だが、ピンク色が言っているのは、そういうことではない。
それも分かっている。
「実をつけるなら、花が散る前よねー」
これ以上言われては男が廃るな。
「わかっている……スモモ」
「ふぁい?」
眠たそうにしながらも、こちらが呼ぶ声に反応する小娘。
「・・・子供は欲しいか?」
「赤ちゃん? 欲しいですぅ」
寝ぼけながらも、希望を伝えてくる。
「相性の問題もあるから、絶対とは言えないが……」
「?」
不思議そうに小首を傾げる。
まだ、理解が追いついていないようだ。
「吾輩の子供を産んでくれるか?」
「!」
ようやく、理解が追いついたようだ。
「本当ですかっ!」
「こんなことで、冗談は言わない」
「嬉しいですっ!」
「期待させておいてなんだが、まだ絶対とは……」
「大丈夫ですっ!」
眠気は一気に吹き飛んだようだ。
腕を揺らして、全身で喜びを表現している。
「あまり興奮するな。早く寝ないと、寝坊するぞ」
「ドキドキして眠れそうにありません」
しまったな。
起きてから伝えるべきだったか。
ピンク色が急かしてくるせいだ。
「よかったわねー、スモモちゃん」
「はいっ!」
まあ、いいか。
ピンク色は小娘を微笑ましそうに見ている。
二人の様子を見ていると悪い気はしない。
気づかないうちに子供ができているよりは、この方がよかったのかも知れないな。
「それでは、吾輩はもう寝るぞ」
「おやすみなさいっ!」
「おやすみー」
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