美味しくて切なくて優しい、ちいさな恋物語

かみゅG

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スイート・ツリー

二年目の冬(その1)

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「ふあぁ……」

 寒い季節だが、早々に目が覚めてしまった。
 どうやら、柄にもなく浮かれてしまっていたらしい。

「おはようございますっ!」
「おぅ……おはよう」

 もっと浮かれている相手がいた。

「早起きだな、スモモ」

 前年は、吾輩より遅かったはずだ。

「待ちきれなくて、早く目が覚めましたっ!」
「そ、そうか」

 それほど喜んでもらえて嬉しくは思うが、高すぎるテンションに付いて行けない。

「モモは……まだ寝ているか」

 話を逸らすつもりで言った言葉だが、これは例年通りだ。
 吾輩の方が早く花を咲かせるのだから、不思議なことではない。

「モモ姉さんは、花を咲かせる時期も遅いですしね」

 それを言うなら小娘もなのだが、指摘するのは野暮というものだろう。

「……やっぱり、モモ姉さんが起きていないと、寂しいですか?」

 小娘が少し拗ねたように、言ってくる。
 まあ、物足りないと言えば物足りないが、寂しいというほどではない。
 それに、起きたら起きたで、人をからかってくるのは、目に見えているしな。

「いや、そんなことはないが、昨年はスモモと一緒に起きていたからな」

 とはいえ、眠そうだったのも覚えている。
 もともと、昨年が早すぎたのだろう。

「今年はゆっくり寝かせてやるとするか」

 別に気をつかうような間柄でもないが、寂しくて起こすような間柄でもない。
 居るのが自然な空気のような関係だ。

「そうですね。しばらくは、ウメ兄さんと二人っきりです」

 小娘は嬉しそうだ。
 ピンク色を仲間はずれにするつもりはないが、あいつは小娘と話していると茶々を入れてくるからな。
 たまには、小娘と二人で喋るのもいいか。

☆★☆★☆★☆★☆★

「それでウメ兄さん、どうですか?」

 小娘がこちらを見つめながら言ってくる。
 その視線には期待が込められているように感じられる。

「さすがに気が早いだろう。だいぶ膨らんできてはいるが」

 起きたばかりだ。
 準備ができるには、もうしばらくかかる。

「早く大きくしてください。わたし、待ちきれないです」

 小娘が切なそうにしている。
 期待に応えてやりたいのは山々なのだが、すぐに叶えられるかというと話は別だ。

「そうは言われてもな」

 申し訳なくは思う。
 だが、気ばかり焦っても、どうにもならない。

「そういうスモモはどうなのだ」

 こういうことは二人のタイミングを合わせることが大切だ。
 吾輩だけ準備ができてもダメなのだ。

「わたしは、もうちょっとです」

 小娘がもじもじと身体を揺らす。

「前より早くないか?」

 以前はもっと遅かったはずだ。

「ウメ兄さんのために、頑張りました」

 そう言って貰えると嬉しいが、疑問も残る。

「頑張ってどうにかなるものなのか?」

 単純に身体を動かすのとはわけが違う。
 そんな簡単に思い通りになるものだろうか。
 コツがあるのなら、参考にしたいものだ。

「ドキドキして身体が勝手に反応しちゃいました」
「そ、そうか」

 そう言われると照れる。
 だが、参考にするのは無理そうだ。

「お願いします。でないと、わたしだけ先に……」

 小娘が甘えるように、おねだりしてくる。
 参考にはできなかったが、なんとか期待に応えたいものだ。

「わかった。吾輩も、もう少し頑張るとしよう」

 あまり待たせるわけにもいかないな。

☆★☆★☆★☆★☆★

「ウメ兄さぁん」

 小娘の甘い声が響く。
 とろけるような甘い声だ。

「わたし、もう我慢できません」

 声を聞くだけで、切なさが伝わってくる。
 先日よりも、切羽詰まっている。

「いつでも、受け入れる準備はできてます」

 小娘の花は満開だ。
 吾輩を受け入れるために咲き乱れている。

「焦らさないでください」

 そんなつもりは無かったのだが、焦らされたと感じられるほどに、待たせてしまったようだ。
 悪いと思うと同時に、ようやく期待に応えられそうなことに安堵を覚える。

「わかった。吾輩の方も準備ができた」

 二人のタイミングはバッチリだ。
 あとは身体の相性だ。

「わたし、きっとウメさんの赤ちゃんを産んでみせます」

 想いだけでは、どうにもできないことはあるが、この場でそれを言うほど野暮ではない。
 それに、それは吾輩の希望でもある。

「ああ、期待している」

 それだけを伝えた。
 さあ、小娘の期待に応えるとしよう。

 ……

「どうだ、スモモ?」

 身体を揺らしながら、小娘に尋ねる。
 吾輩としても初めてだ。
 加減が分からない。

「ウメ兄さぁん……もっと、たくさん動いてください」

 小娘は吾輩の腕の下で懇願する。
 やわらかく吹く風が気持ちいい。
 吾輩は求められるままに、さらに身体を揺らす。

「わたしの奥まで、赤ちゃんのもとを届かせてください」

 小娘は腕を広げて、吾輩を待ち受けている。
 待ち遠しいとばかりに、花びらを限界まで広げている。
 こんな姿を見せられては、もっと期待に応えたくなる。

「わかった」

 激しく身体を揺らす。
 吾輩の身体から、小娘が求めるものが、溢れてくる。
 もう少しだ。

「わたしに、いっぱいかけてください」
「いくぞ、スモモ」

 吾輩は、最後にひときわ大きく揺れて、小娘に全てを振りかける。
 吾輩の身体から溢れたものが、小娘のもとまで届く。

「あぁ……ウメさんを感じます」

 吾輩を受け入れながら、小娘は花を散らした。
 その声は念願が叶えられて満足そうだった。
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