オススメはなんですか?~喫茶異文化へようこそ~

かみゅG

文字の大きさ
8 / 10

児童虐待のススメ

しおりを挟む
 今日のお客様は男性と女性の二人組です。
 席の横にベビーカーを置いていますから夫婦なのでしょう。
 ベビーカーには可愛い赤ちゃんも乗っています。
 男性はコーヒー、女性は烏龍茶を飲んでいます。
 今日はこの二人の会話に耳を傾けてみましょう。

「この子を英会話教室に通わせようと思うの」
「まだ早いんじゃないかな?」
「何を言っているの。小さい頃から英語に慣れさせた方がいいのよ」

 女性はお子さんにしっかりした教育を受けさせたいようです。
 それに対して男性は、反対はしていませんが、消極的なようです。

「この子にフィギュアスケートを習わせようと思うの」
「転んだら危ないよ。もう少し大きくなってからの方がいいんじゃないかな?」
「何を言っているの。小さい頃から練習しないと一流にはなれないのよ」

 女性はお子さんを文武両道に育てたいようです。
 それに対して男性は、やはり賛成はしませんが、消極的なようです。

「この子にピアノを習わせようと思うの」
「指が鍵盤に届かないよ。それにピアノは値段が高いし、置くのに場所も取るよ。
 音楽教室で歌を習わせるくらいでいいんじゃないかな?」
「何を言っているの。そんなのじゃ、本物の感性は身に着かないわ」

 女性は教育に熱心なようです。
 お子さんに、勉強と運動の他にも、芸術の感性を身に付けさせたいようです。
 それに対して男性は、消極的に反対して、代替案を提案しています。
 けれど、女性は頑なにお子さんに教育を受けさせようとしています。

「この子には伸び伸び育って欲しいんだけどな。友達もたくさん作って欲しいしね」
「友達なんか大人になってからでも作れるわ。
 でも、教育は小さい頃から受けていないと、すぐに他の子と差がついてしまうわ。
 しっかりした教育を受けさせないというのは虐待よ」
「僕はそんなつもりはないよ。でも、本人が習いたいって言ったわけじゃないよね」
「そんなつもりはなくても虐待なのよ。
 子供は自分で判断できないんだから、親が教育を受けさせてあげないといけないわ。
 子供だって大人になったら、きっと親に感謝するわ」
「僕も教育は大切だと思っているよ」
「そう。なら、よかったわ」

 男性はコーヒーを飲みます。
 女性は烏龍茶を飲みます。

「ところで、」

 飲み物を飲んで一息ついたところで、今度は男性から女性に話しかけます。

「子供に寝る暇を与えず、友達を作ることも許さない親って、どう思う?」
「そんなの虐待だわ。そんなことをする人に親の資格はないわ」
「そうだね」

 男性はコーヒーにミルクと砂糖を足して、スプーンでかき混ぜます。
 女性は烏龍茶を飲みます。

「なに?あなたの知り合いにそんなことをする人がいるの?」

 女性が男性に質問します。
 それに対して、男性が女性に答えます。

「うん、まあね」

 女性は男性の答えを聞いて怒った表情になります。

「子供に虐待をするような人と付き合うのは止めた方がいいわよ」
「いや、虐待ってほどではないよ」
「子供を健全に育てないなんて虐待よ」
「そうだね」

 男性はミルクと砂糖を足したコーヒーを飲みます。
 女性は烏龍茶を飲みます。

「ちょっとお化粧を直してくるわ」
「どうぞ」

 女性が席を立ちます。
 先ほどから飲み物を飲み続けていたので、トイレに行きたくなったのでしょうか。

「・・・はぁ」

 女性の姿が見えなくなってから、男性が溜息をつきます。
 そして、ベビーカーに乗せている赤ちゃんの頭を撫でます。

「頑張って育ってくれよ。大人になったら、きっといいことがあるからな」

 男性が慈愛に満ちた顔で赤ちゃんの頭を撫でます。

「いいことがある・・・らしいからな」

 男性が哀愁の漂う顔で赤ちゃんの頭を撫でます。
 しばらくすると、女性が戻ってきました。

「ねえ、わたし考えたのだけど、」

 戻ってくるなり、女性が男性に話しかけます。
 よいことを思い付いたと言いたげな、とてもよい笑顔です。

「あなた、この子に友達をたくさん作って欲しいって言っていたわよね」
「ああ、言ったね」
「この近くに、コミュニケーション能力を開発する教室があったのを思い出したの。
 これから行ってみない?」

 それを聞いて、男性は首を横に振ります。

「今日は暑いし、あまり長時間、この子を外で連れ回さない方がいいんじゃないかな」
「でも、能力開発はできるだけ早く始めた方がいいって聞くわ。行きましょうよ」

 どうやらこのご夫婦は、お子さんの教育方針に違いがあるようです。
 二人ともお子さんを大切に思っているようなのに不思議です。
 でも、こんなに愛されているのですから、お子さんには幸せに育って欲しいものです。

「お会計お願いします」
「ありがとうございました」

 今日はとても興味深い話を聞くことができました。
 明日はどんな話を聞くことができるでしょうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...