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死体遺棄のススメ
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今日のお客様は小学生くらいの二人組です。
男の子と女の子ですが仲のよいお友達なのでしょうか。
男の子は炭酸飲料のレモンスカッシュを飲んでいます。
女の子は果汁100%のオレンジジュースを飲んでいます。
どちらも甘酸っぱい飲み物を飲んでいます。
今日はこの二人の会話に耳を傾けてみましょう。
「ヒナが死んじゃったの」
おっと、女の子の口から、いきなりハードな話題が出てきました。
初々しい初恋の話でも聞けると思ったのですが、予想外でした。
男の子は、ぎょっとしながらも、女の子の話に耳を傾けます。
「いつ死んだの?」
「おととい」
ヒナというのは女の子の妹でしょうか。
呼び捨てにしているから姉ではなさそうです。
「それで昨日学校を休んだんだ。心配したよ」
「ごめんね」
男の子と女の子は同じ学校です。
女の子は学校を休んだようですが、男の子は知らなかったようです。
親御さんが学校に連絡しなかったのでしょうか。
ご家族が亡くなって動揺していたのかも知れません。
「もうお葬式は終わったの?」
「ううん、まだなの」
女の子は一昨日ご家族が亡くなってお葬式もまだのようです。
そんなときに、こんなところに一人でいて大丈夫なのでしょうか。
少し心配になります。
ご家族が捜していたりしないでしょうか。
「ぼくもお墓参りに行くよ」
男の子は女の子のことを心配そうに、そう言います。
けれど、女の子は首を横に振ります。
「お父さんとお母さんがお墓は作らないって言うの」
「え?どうして?」
「ヒナが死んだことをご近所に知られたくないからだって」
おや、話がちょっときな臭くなってきました。
「お父さんとお母さんはヒナが遠くに行ったことにするって言うの」
女の子は悲しそうな顔をしています。
そんな女の子に、男の子が気遣いながら話しかけます。
「でも、その・・・死体はどうするの?」
男の子は『死体』という単語を言いづらそうにしています。
けれど他の単語が思いつかなかったのでしょう。
結局、その単語のまま女の子に話しかけました。
男の子の質問に女の子が答えます。
「まだ決まっていないの。
お父さんは山に埋めに行くって言ったんだけど、
お母さんは袋に包んで生ゴミに出せば大丈夫だって言うの。
それでヒナの死体はまだお家にあるの」
女の子は悲しそうな顔をしています。
男の子は青い顔をしています。
「死体を・・・生ゴミで出すの?」
「うん。後で見つかることがないから、その方がいいんだって。
生ゴミの回収日は明日なの。だからそれまでヒナはお家にいるの」
「そう・・・なんだ」
男の子は青い顔をしながら、なんとか相槌を打ちました。
でも、気分が悪そうです。
それに気づいているのか気づいていないのか、女の子は話を続けます。
「お父さんとお母さんは、ヒナはお空に飛んで行ったって言うの。
ヒナは死んじゃったから、もう飛べないのにね。
なんで嘘を言うんだろうね」
「えっと・・・魂が天国に行ったって言いたかったんじゃないかな?」
男の子は女の子の親御さんをフォローしようとしています。
けれど私は、あれ?と思いました。
女の子は『死んじゃったから、もう飛べない』と言いました。
もしそれが言葉通りの意味だったとしたら、どうでしょう。
人間は空を飛ぶことができません。
空を飛ぶことができるのは鳥類です。
ヒナというのは、もしかしてペットの名前なのではないでしょうか。
だとすると、親御さんが行っているのは、死体遺棄というわけではありません。
きっと、そうに違いありません。
安心しました。
「ヒナのお墓を作ってあげたかったな。
でも、ご近所に知られちゃいけないから仕方がないのかな」
ですが、情操教育としては、どうなのでしょうか。
子供にとって、死というのは等しいものです。
死を理解できていない子供は、家族が死んでも虫が死んだくらいにしか感じません。
死を理解したばかりの子供は、虫が死んでも家族が死んだくらい悲しみます。
そんな子供の価値観が大人になっても変わらなかったら、どうなるのでしょうか。
ペットと人間の死体を同じように処理するようになったら、どうなるのでしょうか。
死体を生ゴミに出した親御さんは、自分の死の間際に、それを知るのでしょうか。
私には想像することしかできません。
「お会計お願いします」
「ありがとうございました」
今日はとても興味深い話を聞くことができました。
明日はどんな話を聞くことができるでしょうか。
男の子と女の子ですが仲のよいお友達なのでしょうか。
男の子は炭酸飲料のレモンスカッシュを飲んでいます。
女の子は果汁100%のオレンジジュースを飲んでいます。
どちらも甘酸っぱい飲み物を飲んでいます。
今日はこの二人の会話に耳を傾けてみましょう。
「ヒナが死んじゃったの」
おっと、女の子の口から、いきなりハードな話題が出てきました。
初々しい初恋の話でも聞けると思ったのですが、予想外でした。
男の子は、ぎょっとしながらも、女の子の話に耳を傾けます。
「いつ死んだの?」
「おととい」
ヒナというのは女の子の妹でしょうか。
呼び捨てにしているから姉ではなさそうです。
「それで昨日学校を休んだんだ。心配したよ」
「ごめんね」
男の子と女の子は同じ学校です。
女の子は学校を休んだようですが、男の子は知らなかったようです。
親御さんが学校に連絡しなかったのでしょうか。
ご家族が亡くなって動揺していたのかも知れません。
「もうお葬式は終わったの?」
「ううん、まだなの」
女の子は一昨日ご家族が亡くなってお葬式もまだのようです。
そんなときに、こんなところに一人でいて大丈夫なのでしょうか。
少し心配になります。
ご家族が捜していたりしないでしょうか。
「ぼくもお墓参りに行くよ」
男の子は女の子のことを心配そうに、そう言います。
けれど、女の子は首を横に振ります。
「お父さんとお母さんがお墓は作らないって言うの」
「え?どうして?」
「ヒナが死んだことをご近所に知られたくないからだって」
おや、話がちょっときな臭くなってきました。
「お父さんとお母さんはヒナが遠くに行ったことにするって言うの」
女の子は悲しそうな顔をしています。
そんな女の子に、男の子が気遣いながら話しかけます。
「でも、その・・・死体はどうするの?」
男の子は『死体』という単語を言いづらそうにしています。
けれど他の単語が思いつかなかったのでしょう。
結局、その単語のまま女の子に話しかけました。
男の子の質問に女の子が答えます。
「まだ決まっていないの。
お父さんは山に埋めに行くって言ったんだけど、
お母さんは袋に包んで生ゴミに出せば大丈夫だって言うの。
それでヒナの死体はまだお家にあるの」
女の子は悲しそうな顔をしています。
男の子は青い顔をしています。
「死体を・・・生ゴミで出すの?」
「うん。後で見つかることがないから、その方がいいんだって。
生ゴミの回収日は明日なの。だからそれまでヒナはお家にいるの」
「そう・・・なんだ」
男の子は青い顔をしながら、なんとか相槌を打ちました。
でも、気分が悪そうです。
それに気づいているのか気づいていないのか、女の子は話を続けます。
「お父さんとお母さんは、ヒナはお空に飛んで行ったって言うの。
ヒナは死んじゃったから、もう飛べないのにね。
なんで嘘を言うんだろうね」
「えっと・・・魂が天国に行ったって言いたかったんじゃないかな?」
男の子は女の子の親御さんをフォローしようとしています。
けれど私は、あれ?と思いました。
女の子は『死んじゃったから、もう飛べない』と言いました。
もしそれが言葉通りの意味だったとしたら、どうでしょう。
人間は空を飛ぶことができません。
空を飛ぶことができるのは鳥類です。
ヒナというのは、もしかしてペットの名前なのではないでしょうか。
だとすると、親御さんが行っているのは、死体遺棄というわけではありません。
きっと、そうに違いありません。
安心しました。
「ヒナのお墓を作ってあげたかったな。
でも、ご近所に知られちゃいけないから仕方がないのかな」
ですが、情操教育としては、どうなのでしょうか。
子供にとって、死というのは等しいものです。
死を理解できていない子供は、家族が死んでも虫が死んだくらいにしか感じません。
死を理解したばかりの子供は、虫が死んでも家族が死んだくらい悲しみます。
そんな子供の価値観が大人になっても変わらなかったら、どうなるのでしょうか。
ペットと人間の死体を同じように処理するようになったら、どうなるのでしょうか。
死体を生ゴミに出した親御さんは、自分の死の間際に、それを知るのでしょうか。
私には想像することしかできません。
「お会計お願いします」
「ありがとうございました」
今日はとても興味深い話を聞くことができました。
明日はどんな話を聞くことができるでしょうか。
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