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かみゅG

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薬物依存のススメ

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 今日のお客様は中学生くらいの二人組です。
 二人ともブレンドコーヒーを飲んでいます。
 少年と少女ですがお付き合いしているかどうかは微妙です。
 なぜなら、テーブルの上に勉強道具を広げているからです。
 今日はこの二人の会話に耳を傾けてみましょう。

「コーヒーおかわりお願いします」
「わたしもお願いします」

 おっと、お仕事です。
 私は二人のカップにブレンドコーヒーを注ぎます。

「どうも」
「ありがとうございます」

 この喫茶店にはブレンドコーヒーの飲み放題というメニューがあります。
 二人が頼んだのは、そのメニューです。
 注いだばかりのブレンドコーヒーを一口飲むと、問題集に取り掛かります。
 しばらく、シャープペンシルを走らせる音だけが響きます。

「ふぁあ」
「大きい欠伸だね」

 少年が欠伸をして、少女が笑います。
 でも、笑っている少女も寝不足に見えます。
 目の下に隈があります。

「コーヒー飲んだだけじゃ眠気が取れないな」

 男の子が欠伸を誤魔化すように言います。
 それを聞いて、私は少し残念になります。
 コーヒーには確かに眠気を覚ます効果があります。
 しかし、本当は香りや味を楽しんで欲しいです。
 せめて、香りや味で気分転換をすることで、勉強疲れを取って欲しいです。
 けれど、コーヒーをどう飲むかはお客様の自由なので、そんなことは言えません。
 声をかけることなく、私は少年と少女の会話に耳を傾けます。

「眠気を吹き飛ばす、とっておきの方法を教えてあげようか」

 少年の言葉を聞いて、少女が鞄から何かを取り出します。
 それは小さな瓶のように見えました。

「これを何本も飲むと眠気が吹き飛んで、徹夜しても平気になるよ」
「おいおい、ヤバイ薬じゃないのか?」

 少女は瓶を少年に渡します。
 それを受け取った少年は怪訝そうな顔をします。
 そんな少年に対して、少女は笑顔を向けます。

「違うよ。カフェインがたっぷり入ったドリンクだよ。合法だよ」

 少女はそう言いながら、鞄から同じ瓶を取り出して、自分で飲みます。
 そして、もう一本取り出して、飲み干します。
 ああいうドリンクは、一日何本までとか何時間開けるとか無かったでしょうか。
 一度に何本も飲んで大丈夫なのでしょうか。

「そんなに飲んで大丈夫か?」

 少年も同じことを考えたのか、少女を心配そうに見ます。
 しかし、少女は笑顔のままです。

「大丈夫だよ。心臓がちょっとドキドキするけど、そのおかげで勉強にも集中できるよ」
「心臓がドキドキって、カフェインの摂り過ぎじゃないのか?」
「そうかも知れないけど、受験勉強のためだから仕方ないよ。
 受験が終わったらやめるから大丈夫だよ。
 いけない薬と違って、自分の意志でやめられるよ」
「どうなっても知らないぞ」

 少女は笑顔のままです。
 少年は怪訝そうな顔のままです。
 少年は瓶をテーブルに置くと、コーヒーを飲みます。
 少女はその瓶を手に取ると、三本目を飲み干します。

「せっかく、とっておきの方法を教えてあげたのに」
「カフェインの摂り過ぎって身体によくなさそうだしな」

 少年の言う通りだと思います。
 確かカフェインには依存性があったはずです。
 大量のカフェインは覚せい剤よりも依存性が強いと聞いたことがあります。
 摂り過ぎはよくありません。
 コーヒーにもカフェインは入っていますが、嗜むくらいなら問題ありません。
 けれど、ああいうドリンクは濃度を高めたカフェインが大量に入っているのです。
 それを何本も飲んで身体によいわけがありません。

「だって、よく考えてみて。身体によくないなら、お店で買えるわけないでしょ。
 副作用があるなら、買うときに許可がいるはずでしょ。それがないんだよ」
「それはそうだけど、やっぱり心配だよ。ドキドキするって心臓に負担かかってるだろ」
「飲み過ぎて救急車で運ばれる人もいるみたいだね。
 でも、カフェインが原因だって診断されないことが多いみたいだよ」
「なんでなんだ?」
「きっと合法だからだよ。でも、いつかは違法になるかも知れないね。
 だけど、受験が終わるまでは大丈夫だと思うよ。どう?飲みたくなった?」
「やめておくよ。やっぱり怖いし」

 少女は少年の頑固さに呆れた視線を向けます。
 少年は少女の笑顔に心配そうな視線をむけます。
 少女はドリンクを飲むのをやめるつもりはなく、少年はとめるつもりはないようです。
 きっと少女が言うように合法だからなのでしょう。
 ですが、合法だったものを違法に変えるのは、時間がかかるのではないかと思います。
 その間、違法になるかも知れないものから身を守るものは、自分の判断だけです。
 少年の判断と少女の判断は、それぞれどういう結果をもたらすのでしょうか。
 興味はありますが、私が結果を知ることは無さそうです。
 いえ、もしかしたら、ニュースで知る可能性はあるかも知れません。

「お会計お願いします」
「ありがとうございました」

 今日はとても興味深い話を聞くことができました。
 明日はどんな話を聞くことができるでしょうか。
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