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第一章 森の中のマンドラゴラ
006.ぎゃあ!
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メイが考えに没頭している。
それを待つ間、ぼーっとしているのも暇だな。
俺も考え事をすることにする。
俺の名前はケイ。
記憶が曖昧でフルネームは思い出せないけど、うっすらとそう呼ばれていた記憶がある。
社会人として働いていたという記憶は無いので、おそらく学生だったのだろう。
中学二年生の少年少女がアレな感じになる病からは回復していた気がするので、高校生くらいだと思う。
クラスメートの顔は思い出せないけど、それなりに友人はいた気がする。
授業を受けて、部活動をして、友人と馬鹿話をして。
そんな学生生活を送っていたのだろう。
だけど、それも全てリセットだ。
異世界転生したからには、人間関係も日常生活も、何もかもがリセットされる。
学校を転校するとか、そんなこととは比にならないくらいリセットされて、何もかもが変わる。
それを寂しいと思う反面、楽しみにしている自分もいる。
新しい出会い、新しい世界。
それらが待っているとすれば、期待するなという方が無理だろう。
しかし、不満が無いわけではない。
「植物は無いよなあ」
そうなのだ。
今の自分は植物。
人間はおろか、動物ですらない。
これでは異世界生活を満喫するのは難しい。
希望があるとすれば、チート能力だ。
自分には、異世界転生につきもののチート能力は無いのだろうか。
「マンドラゴラって、魔法植物だよな」
だとすれば、チート能力として可能性があるのは、魔力が高いとかだろうか。
魔力なんて、これまでの人生で感じたことはない。
けど、一応、身体の中を流れる魔力を感じようとしてみる。
「・・・うん、無理」
もともと魔力なんて知らないのに、それがチート級になったかどうかなんて、分かるはずがない。
しかし、まだ諦めるのは早い。
もしかしたら感じることができないだけで、自分の身体に膨大な魔力が眠っている可能性はあるのだ。
どうすれば、それが分かるだろうか。
やはり、魔法を使ってみるとかだろうか。
「ふむ・・・」
何となく集中とかしてみる。
魔法の使い方なんて知らないけど、こういうのはイメージが大切だと思う。
あとは、呪文だろうか。
「こほん・・・ファイヤー(ぽそっ)」
手を前に突き出して、呪文っぽいものを唱える。
イメージしたのは炎の魔法だ。
しかし、何も起こらない。
「・・・まあ、そうだよな」
予想はしていた。
使ったこともない魔法なんてシロモノが、呪文を唱えたくらいで使えるわけがない。
これはあくまで検証だ。
本当に使えないかを検証して、実際に使えなかったという結果が確認できた。
そういう検証結果だ。
だから、俺は別に恥ずかしいことをしたわけじゃない。
そう自分を納得させているというのに、
「あの、ケイ?何をしているんですか?」
「!?」
怪訝そうな顔をしながら、メイがこちらに声をかけてきた。
俺はびくりと身体を震わせる。
「・・・もしかして・・・見てた?」
「はい?何をでしょう?」
もしかしたら何も見ていなくて、たまたま今のタイミングで声をかけて来ただけの可能性もある。
そういう希望を抱くが、次の言葉でそれが打ち砕かれる。
「ケイが真面目な顔で『ファイヤー』とか言っているから、気を遣って声をかけなかったんですけど、何か邪魔しちゃいましたか?何も起きないから、もういいかなって思って声をかけたんですけど」
「・・・・・」
「ケイ?」
俺は思いっきり息を吸い込む。
この身体に肺があるのか分からないけど、とにかく思いっきりだ。
そして、限界になったところで、一気に吐き出す。
「ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「きゃあっ!」
メイが俺の叫び声に悲鳴を上げるが、それを気遣う余裕なんかない。
「うあああああああああ!!!」
ごろごろ
「ああああああああああ!!!」
ごろごろごろごろ
「あああああぅぅぅぅぅ!!!」
ごろごろごろごろごろごろ
「ケ、ケイ?どうしたんですか、突然悶えだして?」
中学二年生の少年少女がアレな感じになる病にかかっているときならともかく、その病から回復した状態で今の行動を人に見られるのは、ダメージが大き過ぎる。
まともな精神では耐えられない。
また一つ検証することができた。
どうやら俺には、精神面でのチート能力は無さそうだ。
でも、それが検証できたからといって、全く嬉しくない。
地面を転がりながら、俺はそんなことを考えていた。
それを待つ間、ぼーっとしているのも暇だな。
俺も考え事をすることにする。
俺の名前はケイ。
記憶が曖昧でフルネームは思い出せないけど、うっすらとそう呼ばれていた記憶がある。
社会人として働いていたという記憶は無いので、おそらく学生だったのだろう。
中学二年生の少年少女がアレな感じになる病からは回復していた気がするので、高校生くらいだと思う。
クラスメートの顔は思い出せないけど、それなりに友人はいた気がする。
授業を受けて、部活動をして、友人と馬鹿話をして。
そんな学生生活を送っていたのだろう。
だけど、それも全てリセットだ。
異世界転生したからには、人間関係も日常生活も、何もかもがリセットされる。
学校を転校するとか、そんなこととは比にならないくらいリセットされて、何もかもが変わる。
それを寂しいと思う反面、楽しみにしている自分もいる。
新しい出会い、新しい世界。
それらが待っているとすれば、期待するなという方が無理だろう。
しかし、不満が無いわけではない。
「植物は無いよなあ」
そうなのだ。
今の自分は植物。
人間はおろか、動物ですらない。
これでは異世界生活を満喫するのは難しい。
希望があるとすれば、チート能力だ。
自分には、異世界転生につきもののチート能力は無いのだろうか。
「マンドラゴラって、魔法植物だよな」
だとすれば、チート能力として可能性があるのは、魔力が高いとかだろうか。
魔力なんて、これまでの人生で感じたことはない。
けど、一応、身体の中を流れる魔力を感じようとしてみる。
「・・・うん、無理」
もともと魔力なんて知らないのに、それがチート級になったかどうかなんて、分かるはずがない。
しかし、まだ諦めるのは早い。
もしかしたら感じることができないだけで、自分の身体に膨大な魔力が眠っている可能性はあるのだ。
どうすれば、それが分かるだろうか。
やはり、魔法を使ってみるとかだろうか。
「ふむ・・・」
何となく集中とかしてみる。
魔法の使い方なんて知らないけど、こういうのはイメージが大切だと思う。
あとは、呪文だろうか。
「こほん・・・ファイヤー(ぽそっ)」
手を前に突き出して、呪文っぽいものを唱える。
イメージしたのは炎の魔法だ。
しかし、何も起こらない。
「・・・まあ、そうだよな」
予想はしていた。
使ったこともない魔法なんてシロモノが、呪文を唱えたくらいで使えるわけがない。
これはあくまで検証だ。
本当に使えないかを検証して、実際に使えなかったという結果が確認できた。
そういう検証結果だ。
だから、俺は別に恥ずかしいことをしたわけじゃない。
そう自分を納得させているというのに、
「あの、ケイ?何をしているんですか?」
「!?」
怪訝そうな顔をしながら、メイがこちらに声をかけてきた。
俺はびくりと身体を震わせる。
「・・・もしかして・・・見てた?」
「はい?何をでしょう?」
もしかしたら何も見ていなくて、たまたま今のタイミングで声をかけて来ただけの可能性もある。
そういう希望を抱くが、次の言葉でそれが打ち砕かれる。
「ケイが真面目な顔で『ファイヤー』とか言っているから、気を遣って声をかけなかったんですけど、何か邪魔しちゃいましたか?何も起きないから、もういいかなって思って声をかけたんですけど」
「・・・・・」
「ケイ?」
俺は思いっきり息を吸い込む。
この身体に肺があるのか分からないけど、とにかく思いっきりだ。
そして、限界になったところで、一気に吐き出す。
「ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「きゃあっ!」
メイが俺の叫び声に悲鳴を上げるが、それを気遣う余裕なんかない。
「うあああああああああ!!!」
ごろごろ
「ああああああああああ!!!」
ごろごろごろごろ
「あああああぅぅぅぅぅ!!!」
ごろごろごろごろごろごろ
「ケ、ケイ?どうしたんですか、突然悶えだして?」
中学二年生の少年少女がアレな感じになる病にかかっているときならともかく、その病から回復した状態で今の行動を人に見られるのは、ダメージが大き過ぎる。
まともな精神では耐えられない。
また一つ検証することができた。
どうやら俺には、精神面でのチート能力は無さそうだ。
でも、それが検証できたからといって、全く嬉しくない。
地面を転がりながら、俺はそんなことを考えていた。
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