森の中のマンドラゴラ~異世界は平和だったので、おっぱいとたわむれることにする~

かみゅG

文字の大きさ
56 / 75
第二章 七不思議の中のマンドラゴラ

056.くさいのニャッ

しおりを挟む
 美術室へ行くのはいいのだが、よく考えたらマズくないだろうか。
 あそこには隠しカメラらしきものがある。
 それを調べに行くわけだが、あれがもしも本当に隠しカメラだとしたら、俺とポチも撮られることになってしまう。

「ポチ、肖像画に見られないように行けるか?」
「絵が見てくるニャッ?」
「念のためだ」

 ポチは首を傾げながらも、低い姿勢で美術室に侵入し、壁に沿って肖像画のもとまで辿り着く。
 この角度なら肖像画からは真横なので見えないはずだ。

「それでどうするニャッ?目潰しするニャッ?」

 俺が肖像画に見られないようにしたいと言ったからだろう。
 ポチがそんな提案をしてくる。

「具体的には?」
「目に画鋲を・・・」
「却下だ」

 夜の学校で俺も考えたことは秘密だ。
 それに、隠しカメラらしきものがあると分かった今、分かりやすく目を塞ぐのは問題がある。
 もし、リアルタイムで監視されているとしたら、俺とポチが侵入していることがバレる。
 万が一、他にも隠しカメラがあれば今さらなのだが、それでもリスクは減らしたい。

「肖像画をほんの少しだけ壁から外してくれるか」
「わかったニャッ」

 ポチが壁から肖像画を離す。
 そのわずかな隙間を俺は覗き込む。
 壁と肖像画の裏は、表が側に目が描かれている付近から、糸のようなもので繋がれていた。
 だけど、落下防止の糸じゃない。

「ケーブル・・・」

 俺が機械に詳しいわけじゃない。
 だけど、それはケーブルに見えた。
 絵にはレンズが埋め込まれていて、それは壁から伸びたケーブルに繋がっている。
 壁を壊して、壁の中を調べれば、もう少し何か分かるかも知れない。
 でも、そこまでする必要はないだろう。
 何かがあるということは十分にわかった。
 これがカメラだろうが、ただの覗き穴だろうと、大した違いはない。
 学校内が監視されているのは確実だからだ。
 問題は何のために監視しているかだけど、そこまではわかりそうにない。
 メイにとって危険かどうか判断するのは、いったん保留だな。
 生徒の安全を守るために監視している可能性もある。
 俺はポチにお願いして肖像画を壁に戻してもらう。

「次に行こう。出るときも肖像画に見られないようにな」
「了解ニャッ」

 俺とポチは美術室を後にした。

 *****

 次は家庭科室だ。
 俺はここは初めて来る。
 メイと一緒に夜の学校を探検したときは、ここまでは来なかった。
 先にポチと像が争っているのを見かけたからだ。

「ポチは家庭科室に入ったことがあるか?」
「無いニャッ。あそこは嫌なにおいがするのニャッ。くさいのニャッ」
「くさい?生ゴミとかの匂いか?」
「うーん、食べ荒らされた動物の死骸の匂いに似ていたのニャッ。でも、それよりくさかったのニャッ」

 ポチは狩りをすると言っていたから、動物の死骸を見たことがあるのだろう。
 逆に俺は無い。
 生ゴミと動物の死骸はくさいという点では同じだけど、臭さの種類が違うような気がする。
 生ゴミは食べられるものが腐ったものだけど、動物の死骸は食べられないものも混ざっている。
 たとえば、腸の中身とかだ。
 腸自体はモツとして食べることができるが、その中身とはつまり、排泄される直前の排泄物のことだ。
 具体的に言うと、う〇このことだ。
 動物の死骸は、いわば生ゴミとう〇こが混ざった匂いなのだろう。
 そう考えると、なんとなくイメージできる。
 けど、ポチはそれよりもくさいと言った。
 得体の知れないものが、家庭科室にある。
 そんな想像が思い浮かんで、背筋が震えるような感じがした。
 今の俺の身体は、夜の学校でポチに切られて、真ん中から皮一枚で繋がっている状態だ。
 それを、根っこを絡み合わせてくっつけている。
 植物の身体だから、接ぎ木のように繋がるか、そうでなくても根っこが伸びて元に戻るだろうと考えてのことなのだけど、自分の身体が頼りない。
 手のひらサイズで元々頼りない身体だけど、いつもより頼りなく感じる。
 引き返したい。
 そんな考えが頭に浮かんだ。
 だけど、そんなことは知らないポチは、足を止めない。
 気付いたら、家庭科室の前まで来ていた。

「中に人はいないみたいニャッ」

 ポチがそっと家庭科室の廊下側の窓から中を覗いて教えてくれる。
 扉が閉まっているせいか、においはしない。

「扉を開けるニャッ」

 ポチが少しだけ扉を開ける。
 そして、そのまま少し待つ。
 けれど、中からにおいが漂ってくることは無かった。
 今日はにおいの元は無いのかも知れない。

「中に入るニャッ」

 ポチが扉をもう少し開けて、するりと身体を滑り込ませる。
 そして、内側から扉を閉める。
 さて、どこから調べようか。
 そう考えかけたところで、その必要がないことに気付く。
 木製のテーブルの上に置かれていたのは、校庭にあるはずの像だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...