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平日6

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 しばらくすると周囲が静かになりました。
 私に婦女暴行をしようとした連中は、ぴくりとも動きません。
 全員、白目を剥いて泡を吹いています。
 お仕置きはこのくらいでいいでしょう。
 静かになったところで、当初の用事をすませることにします。

「ちょっと、訊きたいことがあるのだけど」
「ひっ! た、たすけてっ!」

 私は以前イブさんと一緒にいた人物に声をかけます。
 しかし、なぜか怯えたように震えています。
 しかも、マジカルフレイムの射程範囲外に蹴り出して引きずってから、いまだに尻餅をついたままです。
 私は彼を見下ろす形になっています。
 これでは、ちゃんと話ができません。
 私はしゃがみ込んで、彼と視線の高さを合わせます。

「訊きたいことがあるのだけど、いい?」
「こ、殺さないでっ!」

 私が声をかけると、彼は尻餅をついたまま、後ずさりします。
 これは困りました。
 悪人をお仕置きするところを見らせたせいか、どうやら怯えられてしまったようです。
 今回は魔女っ子衣装を着る暇が無かったので、正体を見られてしまっているのです。
 魔女っ子というのは正義の味方であると同時に、武力を持った存在でもあります。
 武力を持っているということは、一般人を怯えさせてしまう可能性があるということです。
 だから、魔女っ子は正体を隠します。
 正体がわからないけれど、自分達を護ってくれる存在。
 だからこそ、魔女っ子はみんなの人気者なのです。

「か、金なら払うっ! 見逃してくれっ!」

 助けてもらったから、お礼をする。
 その気持ちは嬉しいですが、受け取るわけにはいきません。
 それを受け取ってしまったら、みかじめ料を脅し取る893と一緒になってしまいます。
 そのあたりを説明することにしましょう。
 私は目を見て話すために、彼の顎を軽く掴み、こちらへ向けさせます。
 そして、安心させるために、にっこりと微笑みます。

「お金はいらないから、質問に答えてくれる?」
「わ、わかった! なんでも話す!」

 ふう、よかったです。
 話を聞いてくれるようです。

「イブさんを捜しているのだけど、どこにいるか知らないかしら?」
「イブさん?」

 彼が怪訝そうな顔で、私を見てきます。

「イブさんを捜して、どうするんだ? まさか、イブさんを襲うつもり――」
「マジカルパンチ」
「ぐわっ!」

 あ、いけません。
 失礼なことを言われたので、反射的にマジカルパンチを繰り出してしまいました。
 いくら失礼なことを言われたからといって、暴力はいけません。
 謝ることにします。

「ごめんなさい。でも、あなたも悪いのよ。変なことを言うんだから」

 彼はまた怯えたような表情になりましたが、先ほどよりは落ち着いています。
 質問を続けることにします。

「イブさんと私はお仕事の同僚で友達なの。今日、イブさんがお仕事を無断で休んだから、捜しているのよ」
「そ、それは、足抜けした人間を捕まえるため、とか?」
「マジカルパンチ」
「ぐわっ!」

 あ、しまった。
 再び失礼なことを言われたので、またマジカルパンチを繰り出してしまいました。
 不良っぽい格好をしているせいか、どうも反射的に攻撃してしまいます。
 長年、いつ襲われても反撃できるように、魔女っ子の修行をしていたせいです。
 これは、とっとと用事をすませた方がよさそうです。

「それで、イブさんがどこにいるか知っている?」
「し、知らない。でも……」
「でも?」
「……イブさん、急に可愛い服を着るようになったから、不良から足を洗ったと思われて、最近、よく他校の不良に絡まれているみたいだ。返り討ちにしているみたいだけどな」

 そういえば、私もイブさんが絡まれているのを見たことがあります。
 そういう事情があったとは知りませんでした。

「でも、仕事を無断で休むなんて、どこかで襲われてなきゃいいけど」

 どうやら彼はイブさんを心配しているようです。
 不良っぽい格好をしていますが、根は優しいのでしょう。
 しかし、そういう事情なら、急いで捜した方がよさそうです。

「俺、仲間に声をかけて、イブさんを捜す。もう、行っていいよな?」
「いいけど、その前にイブさんが行きそうなところを教えて。私も捜すから」
「ああ、わかった」

 彼は私に情報を提供すると、慌てた様子で走り去りました。
 これからイブさんを捜しに行くのでしょう。
 イブさんはお友達から慕われているようです。
 私もイブさんのお友達として、頑張って捜すことにします。
 とはいえ、一人では限界があります。
 だから、協力を頼むことにします。
 私はスマホを取り出して、電話をかけます。

「もしもし、キララです。店長さんですか? ちょっと、お願いしたいことがあるんですけど……」

 こんなとき、本物の魔女っ子なら、魔法で人を捜すのでしょう。
 ですが、私にはそんな魔法は使えません。
 だから、人海戦術に頼ることにしました。
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