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不思議生物1

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 月曜日になりました。
 昨日と一昨日、イブさんはお仕事に来ませんでした。
 もしかして、逃げ損ねたのでしょうか。
 そう思って電話をかけたところ、それが杞憂であることがわかりました。

「心配かけてわるかったな。仕事を無断で休んだことは謝っておいたよ」

 電話に出たイブさんは、そう言いました。
 厄介事に巻き込まれたので、念のため土日は外出せず、月曜日からお仕事に行くそうです。
 厄介事というのは、軟禁された件のことでしょう。
 どうやら、無事に逃げられたようです。
 イブさんを軟禁した連中については、店長さんに後のことをお願いしました。
 店長さんのお友達の部下らしいので、その人から一言言ってもらえば大丈夫だと思います。
 魔女っ子は、見えないところのフォローも忘れないのです。

 そんな些細な出来事はありましたが、今日からまた学校です。
 私は自宅を出て、ソラと合流します。
 ついでに、リクも合流してきました。

「おはよう、ソラ」
「おはよう、キララ。なんだか大きな荷物を持っているね」
「おっす、キララ。重そうだな。持ってやるよ」

 ソラとリクと朝の挨拶をします。
 リクは気を利かせたつもりか、私の鞄を持とうとしてきます。
 でも、渡すわけにはいきません。
 これは大切なものなのです。

「触るなヤリチン! 女の子の大切なものを奪おうとするなんて、なに考えてるの!」
「ちょっ! わかったから、いちいち叫ぶな! 近所の目というやつをだな……」

 私の声に驚いたリクは手を引っ込めます。
 まったく、油断も隙もありません。
 リクが普段付き合っている性的にゆるゆるな女どもならいざ知らず、私は身持ちが固いのです。

「でも、キララ。重そうだけど大丈夫? 持つの手伝おうか?」
「ありがとう、ソラ。大丈夫よ。中身は服だから、そんなに重くないの」

 リクとは違い、ソラは優しいです。
 女性の扱いがわかってる紳士です。

「……おまえ、俺とソラで反応が違い過ぎねえか?」
「黙れヤリチン。 女の子の服でいやらしいことをしようとしても、そうはさせないわよ」
「しねえよ!」

 リクがなにやら文句を言っていますが、ソラとリクの行為は全く違います。
 何が違うかというとデリカシーです。
 女の子の荷物を強引に奪って持つのは、優しさとは言えません。
 そんな俺様系男子は、いまどき流行らないのです。
 そんな男子に惹かれるのは、頭とお股がゆるゆるな女どもだけです。
 リクがいる側とは反対の腕で鞄を持って、朝の通学路を歩きます。

「キララ、服って何の服なの? 体操服じゃないよね?」
「放課後になったら教えてあげるわ。楽しみにしていて」

 通学の途中、ソラが尋ねてきたので、答えます。
 今日持ってきた服は、いつもの魔女っ子衣装ではありません。
 部活で話題が出たヒーローショーで使う予定の衣装です。
 私が魔女っ子衣装の制作を協力してもらっているお店に作ってもらったのです。

「なんだよ。また、キララとソラだけの秘密かよ」

 私とソラが会話をしていると、リクが横で拗ねたような台詞を言います。
 そんなリクを見ながら、私は考えます。
 今回はショーをするために衣装をしました。
 しかし、ショーは衣装だけでおこなうことはできません。
 それを着る人間が必要です。
 そして着る人間は主役だけではありません。
 雑魚役も必要です。
 私は思い出しました。
 リクの部活の先輩には、あの人達がいます。
 あの人達なら、その役にぴったりではないでしょうか。
 具体的には悪の組織の構成員の役です。

「そうね。リクにも手伝いをお願いしようかしら?」
「おっ。俺にして欲しいことがあるのか? いいぜ。やってやるよ」

 リクは内容も聞かずに協力を承諾します。
 リクは、性的には信用できませんが、約束したことは信用できます。
 女子の膜は破っているでしょうが、約束を破ったことはありません。

「じゃあ、お願いするわ。詳しいことは後日話すわね」
「おお」

 これで出演者は揃いそうです。
 他の部との合同になってしまうので、部長に話をする必要はありますが、おそらく大丈夫だと思います。
 思い付きで提案したヒーローショーですが、本格的なものになりそうです。
 やる気が出てきました。

 そうだ。
 どうせなら、イブさんにもショーに出てもらうのは、どうでしょうか。
 彼女は悪の組織の女幹部にぴったりです。
 最近はゴスロリ衣装を着ているようですが、あの衣装はヒロインが着ることもありますが、悪役が着ることもあります。
 悪の組織の女幹部が着る衣装としても、成立すると思います。
 問題は他校の生徒ということですが、学校間の交流と言えば、なんとかなると思います。

「燃えてきたわ」
「キララ、やる気だね」

 頭の中でショーの計画を立てながら、私達は学校へ向かいました。
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