たまゆら ――婚外カノジョの掟

あまの あき

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たまゆらの恋

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 お礼は伝えなければいけないけれど、色々考えると話しかけるのは気まずい。
 恐らく、化粧ポーチがないと朝メイクする時に困ると思ってわざわざ届けてくれたのだろう。電話にも出なかったし、私が悪いことは間違いない。
 化粧直しに必要なものだけを入れて持ち歩けばいいのに、何でもかんでもポーチに入れてしまうタイプなので、今ごろポーチがないとメイクするのに困っていたのは確かだ。さすが美容男子と言うべきか、大変気の利いた対応で助かった。助かったのではありますが……。『声聞こえましたよ』なんて言われたら、恥ずかしくて気絶してしまう。
「お、おはよう。き、昨日はポーチありがとう。お陰で助かったよ」
 通常通り無表情で出勤してきた小山内くんにびくびくしながらお礼を言った。不自然なほど声が上ずっている。どうか気づかれませんように。
「うぃーす。えらい重いから変なオモチャでも入れてんか思た」
 余計な一言は加えられていたけど、例の件には触れられなかったので静かに胸を撫で下ろした。
「朝から仲良いね。二人はほんとに家を行き来する仲なの?」
 私たちのやり取りを聞いていた加藤さんがにやにやしながら訊いてきた。
「まあ、そうっす……」
「まさか! 行き来なんかしてないよ」
 無責任に認めそうな言葉を遮り、全力で否定した。
「別にうち来たかったら来てもいいっすよ。俺はクリーン、、、、な男なんで」
 にやりと笑う顔に悪意を感じた。どうせ言いたいのはクリーンじゃない方のくせに。
「結構です。行きたくありません!」
 グリーンよりもクリーンを選ぶ方が健全だけど、小山内くんと話しをしていても胸がときめかないのだからどうしようもない。
 結局、私は健全でない方を選んだのだ。

 仕切り直して婚外恋愛を始めてからというもの、霧が晴れたように視界良好になって仕事まで妙に捗るようになった。
 恋愛の持つ日常生活への影響は、自分が思っているよりもはるかに大きいと思う。良くも悪くも作用する。特に、私のような単純な人間であれば効果効能が分かりやすい。
 自覚があるほど恋の恩恵を受けている私だけど、職場では表に出ないように細心の注意を払っている。
 入社以来、同じチームの人にも碧川さんに気があるのかなんて訊かれたことはない。慰安旅行で現場を目撃した小山内くんぐらいだ。來未や聡子にも気づかれていないのだから、案外、愛人に向いているのかもしれないなんて、不倫を毛嫌いしていたはずの私が考え始めるまでにそう時間はかからなかった。
「うちの奥さんが許可してるんだから、職場の人にどう思われようと関係ないんだけどね、ほんとは」
「そうですよね。でも、芸能人とかが不倫すると奥さんが許しててもみんな旦那さんを叩くじゃないですか。ああいうことが職場でも起きそうな気がします」
「今の時代は正義中毒みたいなのが多いからね」
 碧川さんは、奥さんが許可しているのだから堂々とすればいいと言っていたけれど、何かあった時に叩かれるのは碧川さんなので、バレないようにしましょうと私からお願いした。
「おれはいいけど、一葉ちゃんが職場で白い目で見られたり、働きづらくなったら困るもんね。どうしても、相手の女性への風当たりが強くなるから」
「私は平気ですよ。でも、碧川さんは立場もあるし、黒い噂はない方がいいと思います」
「優しいね、一葉ちゃんは」
「そんなことないですよ。碧川さんが優しいから、うつったのかもしれません」
「そういうところが優しいんだよ」
 マンションの前まで送ってくれると、周りをきょろきょろしてから別れのキスをしてくれた。雲の如く軽い口づけ。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい……」
 本当は部屋に来てほしいのに、小心者なので自分からはなかなか誘えずにいる。
 正直言って、思っていた関係とは少し違った。
 どんな美辞麗句を並べようと奥さんが許可していようと不倫は不倫だし、会うのはホテルか私の家ですることと言えばエッチだけなんだろうなと思っていた。奥さんはうちはレスじゃないと言っていたし、その上で外にカノジョをつくるような人は性欲旺盛なんだろうと踏んでいた。
 半分セフレのような関係になると覚悟していたし、大きな声では言えないけれどちょっぴり期待していたところもあった。
 五年しなくても平気だったので、自分は特別性欲が旺盛な方ではないと思っていたけれど、碧川さんに会うといつも「今日はするのかな」って期待してしまう。
 けれど、いつも期待外れだ。一緒にご飯を食べたり、飲みに行ったり、映画館や絵画展など、まだ数えるほどしか会えていないけれど、どれも健全なデートばかりで。うちに来た時も手料理を食べて、Netflixでドラマを観て爽やかにご帰宅。帰り際に毎回キスはするけれど、だいたいそれだけ。不思議なことに、正式な婚外カノジョになってからまだ一度もしていない。
 今夜もキスだけだった。何度も振り返りながら帰って行く碧川さんの背中にさえ欲情しそうな自分がいる。
 今ならまだ間に合うかもしれない。
『今日はイチャイチャしたいな』とLINEでメッセージでも送れば、戻って来てくれる可能性はある。
 でも、言えない。もし『今夜は奥さんと先約があるから』なんて返事がきたら、気が狂ってしまう。私は奥さんみたいに、碧川夫妻の事情をすべて知りたいとは思わない。寧ろ、奥さんの話題は避けている。だから、奥さんと同じようにオープンにされたらと思うと怖い。
 以前は勇気を振り絞って誘ったこともあったけど、あの頃とは状況が違う。
 碧川さんはしたくならないのかな? 体が目当てじゃないっていうアピール?
 やっぱり……奥さんとする方がイイのかな。もしかしたら、今ごろ奥さんと……。
 そんなことを考え出すと、覚醒して眠れなくなる。
 私としないなら、奥さんともしないでほしい。奥さんと週一でしているのなら、私とは週二回以上してほしい。回数で張り合ってどうするんだと自嘲してしまうけど、それが愛人の醜い願望だ。
 待っていてもダメなら、次こそは頑張って誘ってみようかな。
 どうか「今日は奥さんとするから無理なんだ」と言われませんように。
 二日ほど我慢してから『明日飲みに行きませんか』とLINEでメッセージを送った。
 いくら許可をもらっているとはいえ、家庭のある人を当日に誘うのはよくないと思い、できるだけ前日までに誘うようにはしている。向こうは『今日ご飯行かない?』と普通に誘ってくるけれど。
 相変わらず堂々としているのに、体を求めてこないのはなぜなんだろう。『いいよ』という返事を見ながら考えた。答えは分からなかった。
 自分自身に喝を入れるため、当日はお気に入りの下着を身につけた。出番もなかったのに、少しエロい下着も持ってはいるけれど、以前碧川さんが薄いピンクの下着を見てかわいいと言っていたので、あまり過激なのは好きじゃないのかもしれないと勝手に思っている。
 色っぽい奥さんは私が見たこともないようなすごい下着を持っていそうなので、清純っぽい方が目新しいのかなとか偏見めいたことを思ったり。何も知らないくせに、奥さんは我が強そうだから碧川さんの好みよりも自分の好みを押し通しそうだと推量して、じゃあ私は従順になってポイントを稼ごうとか、せこいことばかり考えてはほくそ笑んでいる。
 そんなことでポイントは稼げないし、奥さんに対抗できるわけでもない。
 そもそも私は、同じ土俵にすら立てていないのだ。存在を許可されているということは、その時点で奥さんの不戦勝なのだ。奥さんは私と闘う気さえない。「奪えるものなら奪ってみなさい」ではなく「よろしければうちの主人をお貸ししますわよ」の構えだ。
 私はただ、碧川夫人からご主人をお借りしているだけ。それを忘れてはいけない。所詮、彼は他人のモノだ。奪おうとした瞬間にこの関係は破綻し、私も壊れるのだろう。

「そんなに飲んで大丈夫? お酒、強くないんでしょ?」
 後で誘わなきゃと思ったら緊張して、お酒がぐいぐい進んだ。いつものように碧川さんは人一倍顔が赤いけれど、まだ酔ってはいない。
 聡子に訊けばきっと雰囲気の良さそうなバーをたくさん知っているだろうけど、誰と行くのなんて訊かれたら困るので、自力で検索した。口コミもそうあてにはならないけれど、ないよりはましだ。
 立地的には少し奥まった場所にあるけれど、赤い扉が印象的な静かでおしゃれなバーを見つけた。"Fate" (運命)というお店の名前もロマンティックだ。
 小さなお店はほぼ満席だった。ウイルスのせいでお酒を扱うお店は未だに客足が戻らないところも多いと聞くけれど、このお店はそんな心配はなさそうだ。店内はカップルや女性同士のお客さんで賑わっている。主に私ぐらいの世代の女性がターゲットなのだろう。
 お酒の種類が多くアンティークっぽいお店のつくりもおしゃれ。何よりオーナーさんがイケメンなのはポイントが高い。
 調子の乗っておかわりしたスパークリングワインが体内で効果を発揮し、私の体をふわふわとさせ始めていた。
 泥酔して意識を失ったら綿密な(?)計画が水泡に帰す。それだけは避けたい。
「良いお店だったね」
「ネットで探したから不安だったんですけど、当たりでしたね」
 早々に店を出ると、次どこへ行こうかという話もなく、碧川さんはタクシーを拾ってうちの住所を告げた。
「顔が赤くなってるのも色っぽくていいね」
 お? もしかして、碧川さんも今夜はその気だった?
 がっかりした気持ちでタクシーに揺られていたのに、その一言にテンションが上がった。こういう時にバイブスぶち上げと言えばいいのだろうか。酔ったふりも忘れてしまいそうだった。
 いつもはマンションの前までなのに、今夜は一緒に階段を上ってくれている。部屋に行くということはそういうこと、よね。
 恋愛の仕方も忘れたみたいに興奮して家の前に着くと、碧川さんは「じゃあここで」と予想外に寒いことを言った。いや、寒くはない。紳士的と言うべきか。でも、今の私には寒いとしか形容できなかった。
「……私ってそんなに魅力ないですか?」
 甘えた声で可愛く「もっと一緒にいて」とおねだりできたら、こんなに悩むこともないのにと思いながら、悲観的な訊き方しかできない自分が嫌になる。
「ええ? まさか。どうしたの? いきなり」
「だっていっつも家の前まで来て帰っちゃうから。やっぱりお、奥さんみたいに大人の色気がある人じゃなきゃ魅力感じないのかなって」
 二人でいる時はなるべく奥さんの話題は出さないようにしているのに、つい口をついて出てしまった。比べたくないのにどうしても比べてしまう。
 私が言い終えるのとほぼ同時に彼の腕が勢いよくほろ酔いの体を抱きしめた。
「そんなわけないだろ」
 待ち焦がれていた瞬間に、体の芯から発熱するのを感じた。いつになく男性的な言葉遣いにも。
 部屋に入ると、ベッドへ直行した。
 いつもより丁寧に整えたベッド。布団に乾燥機をかけ、ダニ専用の掃除機で吸い、シーツも洗って準備は万端。ムードづくりのためにAmazonで間接照明も購入したけれど、今夜は出番がなさそうだ。
 ベッドに座ると、碧川さんはゆっくりと私の髪を撫でた。最初こそ子どもの髪を撫でるような手つきだったけれど、徐々に熱っぽい手つきに変わっていった。その変化にゾクゾクする。
「一葉ちゃんに魅力を感じないなんてあり得ないからね。仕事中も時々、思うんだ。別室に連れて行って襲いかかってやろうかなって。小山内と親しげにしてるのとか見ると、頭に血が昇っちゃって。仕事中に何考えてんだってね。ちゃんと仕事しろよ」
 自嘲的な笑いを浮かべ、碧川さんは言った。
「そうなんですね。全然知らなかった」
 仕事中は私と目を合わせることもないから、オンとオフをしっかり切り替えているものだと思っていた。意外な告白に少し萌えた。
「普段は必死で紳士面してるからね。一葉ちゃんは真面目で遊び慣れた感じもないし、会う度にしようって言うような男には幻滅するだろうなって思ったんだ。こいつ、体目当てじゃないなんて口だけじゃんって。そう思うと、なんか怖気づいちゃって。それでなくても、おれは一葉ちゃんに対して不誠実な付き合い方してるしさ。最低だけど、嫌われたらヤダなって」
 奥さんともレスじゃないって言ってたし、色気の足りない私には滅多に欲情しないのかと不安だっただけに、本心を聞いて肩の力が抜けた。怖気づいた理由が愛おしい。
「碧川さんは本当に気にしいなんですね。そんなことで嫌いになったりしないですよ。逆に、いつもさっさと帰っちゃうのがショックだったんですから。……イチャイチャしたいなって思ってるのは、私だけなんだなって」
「またそんな可愛いこと言うと、会う度に襲っちゃうよ」
「ふふっ。楽しみにしてますね」
「うわぁ。おれもう信用ないじゃん」
 嘆く姿を見て笑うと、笑い事じゃないよと碧川さんも笑った。
 ほろ酔いの頬に触れ「ほっぺ熱いね」と笑う彼の親指を口に含んだ。一瞬驚いた顔をした後、彼はすぐに悩ましい目つきになって親指で私の口内を愛撫した。ねっとりとした指に直接触れてもいない恥部まで弄られているような感覚に陥り、下着が蜜液で湿っていくのを肌で感じた。羞恥でさらに体が熱を帯びる。
 気を抜いたら涎を垂れそうなほど、口元がだらしなく緩む。指で舌を撫で回されるのが気持ちいいなんて、私は今日まで知らなかった。
 初めての国を旅するように、碧川さんが与えてくれるものを甘受すれば未知の快楽と出会うことができる。知らなくても生活に支障はないけれど、知ってしまったらもう知る前には戻れなくなる。
「エロい顔、するね」
 言いながら下顎を親指で下げ、とろけそうな私の舌を彼の舌が舐めた。
「ん……」鼻から声が抜け、身悶えた。
 しなやかな舌が唇や頬の内側や舌を愛撫する。キスとは違う、淫らな行為に心酔した。
 パンストの表面を滑るように内腿を撫でながら、彼の手が近づいてくる。恥ずかしいと思う心とは裏腹に、足が開いてしまう。この先、彼の指や舌がどこへ向かうのか体が勝手に期待しているみたいだ。ショーツの奥が焼けるように熱い。
 大袈裟だと言われても、私は碧川さんとひとつになる瞬間のために生きている気がする。
 パチンパチンと皮膚と皮膚がぶつかる音がやけに生々しく響く。
 抱き合ってお互いの体を触れ合わせている私たちは、勾玉のように美しい音を奏でているのだろうか。
 それとも――。
 
 その夜、初めて一緒にシャワーを浴びた。
 家のものとは違う石鹸の匂いがしたら奥さんに申し訳なくて、今日までお風呂どうぞって言えなかった。でも、他の女のニオイを漂わせて帰る方がよほど残酷だと今ごろ気がついた。碧川さんが奥さんを抱いて、シャワーも浴びずに私の部屋に来たらと思うと吐き気がする。奥さんがどこまで許容できるのか分からないし、自分がされたら嫌なことはするべきではない。不倫している時点ですでに矛盾しているのだけど。碧川夫人は不倫は許容範囲なので。
 酔っていたせいもあるのか、お互いに体を洗い合うだけで童心に帰ったようにはしゃいで、変なテンションになった。
 楽しいひとときが永遠に続きそうな気がしたけれど、お風呂から上がると碧川さんは帰って行った。
「あともう少しだけ」の一言を大きなオブラートに包んで嚥下し、笑顔で見送った。一日の最後に泣き顔を見せるのは嫌だから。
 部屋に独りになると、大袈裟な寂しさが襲いかかってくる。
 ほんのり湿っている乱れたシーツにはまだ彼と私が混ざったようなにおいが微かに残っている。頬を寄せると堪らない気持ちになる。
 会う度に碧川さんが私を抱かないのは、離れた後に私が苦しむことを想像してのことだったのかもしれない。
 ひとつになるということは、ふたつに戻る時がくるということだ。身を引き裂くほどに痛くて当然だ。
 どんなに痛くても、飽きるまで一緒にはいられない。
 解っていながら私はスケジュールアプリを開き、次はいつ会えるかと画策していた。


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