ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!

みなはらつかさ

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第六話 九月五日(月) おじいちゃん、おばあちゃん孝行

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「アユムちゃん、お電話終わった?」

 おばあちゃんから尋ねられたので、「うん」と返事。

「じゃあ、今日も前世のお話聞かせてくれるかしら」

「おお、いいねえ。頼むよ、アユム」

 おばあちゃんとおじいちゃんから、前世トークを頼まれてしまいました。

 二人はバーシと違って、ボクの前世話をあくまでも「ホラ話」として楽しんでるわけで。そのへん、ちょっともにょるけど、おじいちゃん&おばあちゃん孝行はしておきたい。

 リビングソファの角っこに腰掛けて、話のネタを考える。

「インターネットの話は、前したでしょう……? 何がいいかなあ?」

 ボクも、前世で長生きしたわけじゃないからね。どうしてもこう、話の幅が狭い。

「じゃあ、お豆腐の話でもしようか!」

 ちょっと最新の話でもないけど、お豆腐の話でも。

 豆乳を固めたものと説明すると、そこはおじいちゃん、料理人。ビビッと反応!

「へえ、豆乳をねえ?」

「うん。健康にもいいんだよ!」

 ドヤァ。健康オタクの面目躍如!

「なんか、東のほうに、そういう感じの料理ありませんでしたっけ?」

「どうだったかなァ? 聞いたことあるような気もするけど」

 二人とも、興味津々! ふっふっふっ。

 せっかくなので、湯豆腐についても説明。

 鍋料理については以前話したことがあるけど、野菜オンリーな湯豆腐については、初耳なようで。

「ほー、そりゃアユムが好きそうだねェ」

「んー、ボクはあんまり食べたことがないんだけどね。でも、こっちでも食べてみたいかな」

 前世では、ほんとに食が細かったからねー。そのときの取りこぼしを取り返すように、がっつり食べてみたいな。

「今度、作ってみるかー。マエへさんおばあちゃんも、食べるだろ?」

「いいですねえ」

「わ! 楽しみぃ!」

 おじいちゃんは、おばあちゃんをさん付けで呼ぶ。いわゆる姉さん女房で、おばあちゃんのほうが、一つ歳上なんだよね。

 おじいちゃんが、常連さんだったおばあちゃんに惚れ込んで、猛烈アタックで口説き落としたらしい。おじいちゃん、アツいねえ~。

 それにしても、おじいちゃんの湯豆腐かあ。お豆腐の入手が難易度高そうだけど、楽しみだなあ。

「しかし、アユムがよく口にする醤油って調味料、アルクお父さんと研究してみるかねェ」

 口ひげを撫でながら、お醤油の利用を検討するおじいちゃん。

「ほんと!? ボク、お醤油の味が恋しくて! 楽しみ~!」

「はっはっはっ。まあ、色々調べてみるよ」

 ボクが小さい頃から訴えている、お醤油の味。おじいちゃんもスイッチ入ったかな?

 まあ、こうしてよく「醤油、試してみるよ」って言いつつ、なんやかんやで放置されることが多かったんだけどね……。

 今度こそ、期待!

 ボクも何か出来ないものかと思うけど、インターネットのないこの世界。気軽に東方の異国の情報収集なんて出来ないわけで。

 不便だ。

 なにか、いい策はないかなあ?

「アユムちゃん、そろそろご飯にしない?」

 おばあちゃんに言われ、時計を見ると六時。ボクらにとっては、夕食の時間だ。

「そうだね。ハーちゃん呼んでくる」

「よろしくね」

 二人に見送られ、二階へ向かうのでした。


 ◆ ◆ ◆


 ハーちゃんを連れてきて、ダイニングテーブルに着席。おじいちゃんは、調理中。

 おばあちゃんが何かのテレビ番組を見ていたので、一緒に見る。ちょうど、健康食品として、ヨーグルトが紹介されているところだった。

「うわあ! ヨーグルト、向こう・・・でも健康食品だったんだよ! 食べたいなあ」

「おねーちゃん、ほんとこういうの好きだよね」

 肩をすくめる、我が妹。

「えー。おいしいし、お腹がきれいになるんだよ? ハーちゃんもやってみようよ」

「酸っぱいから、ニガテなんだよねー」

 眉をしかめられてしまう。

「ヨーグルトじゃなくて悪いけど、カレーシチューだよ」

 おじいちゃんが、シチューとパンを配膳していく。おお、ボクが、前世の記憶から掘り出した料理じゃあないですか!

「作ってくれたんだ!」

「せっかくだからな。アユムの言うのが、きちんと再現できたかどうかわからんが、試してみてくれ」

 というわけで、一家四人いただきますの詠唱とポーズ。

 ……ごくっ。

「おいしい!」

「お、アユムのお墨付きだ。二人はどうだい?」

 二人とも、おいしいとの反応。

「よし、アルクにも試させてみるか」

 顔をほころばす、おじいちゃん。

「さて、あいつらのまかないも作ってやらんとな」

 おじいちゃんが、サンドイッチを作り始める。お父さんもお母さんも、このあたりの時刻は多忙だから、休憩中にパパッと食べられる料理を、いつもおじいちゃんが作って持っていくんだ。

「お疲れ様。ボクは、歯を磨いて、明日の用意をしたら寝るね」

 これ以上起きていると、日課ロードワークに差し障る。

 三人に別れを告げ、自室に戻るのでした。
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