ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!

みなはらつかさ

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第二十二話 九月十八日(日) 大地祭! ―前編―

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 今日は、朝から忙しい。「大地と水と天に感謝する祭り」、通称「大地祭」が開催されているからだ。

 市民たちが、大いに飲み食いするこのお祭り。当然、うちも大忙しなわけで。

 いつもは十一時開店なのだけど、今日は九時から店を開けている。いやもう、ビールやおつまみが、飛ぶように売れる売れる!

 注文を書き、厨房に伝達。今日は、おじいちゃんも助っ人に入っています。

「A、行ってきます!」

 「A行ってきます」は、この店で「食事してきます」の符丁。おじいちゃんが、なんとなくノリで決めたらしい。

 台所に着き、朝に作り済みのサンドイッチを牛乳で流し込む。……ふう、人心地ついた。

 食器だけ片したら、即座に戦線復帰。ちなみにハーちゃんはまだ小五なので、お友達とお祭りを見に行ってます。ボクも五時に上がったら、行きたいなあ。

「いらっしゃいま……あ」

 バーシ、クク、シャロンが入口に立ってるじゃないですか。しかも、ククもシャロンも、こないだバーシが見立てた服だ。

「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」

 営業モードで、空き席に三人を案内する。

「大変そうだねえ」

「そりゃもう!」

 小声で、バーシに答える。

「ご注文は?」

「パンケーキ三つと、私、メロンソーダ」

「あたしはコーヒーフロート。シャロンは……いつも通り、ミルクセーキでいいよな?」

 シャロンがこくりとうなずくので、「かしこまりました」と、厨房にオーダー伝達。その後も店内を忙しく飛び回り、三人と話す暇なんてなし!

 三人の注文が出来上がり、席へと運ぶ。

「抜けだせなそう?」

「無理! 五時半になったら、中央噴水に行くから、待ってて!」

 小声でそれだけ言い残し、また店内を飛び回るのでした。


 ◆ ◆ ◆


「アユム、上がっていいわよ」

 お母さんのお許しが出た! やっと五時だー! はああああ……疲れた!

 体力に自信アリなボクをしても、さすがにしんどい。

 ともかく、シャワー浴びて、おめかしして、噴水へ!

 ……あ、いたいた!

 噴水に三人がいたので、近づく。

「お疲れさーん」

 のほほんと、バニラソフトクリームを食べてるバーシに労われる。うう。ボクも、服屋の娘に生まれれば良かったかなあ?

「ほんと疲れたよー。でも、そのぶん、軍資金いっぱいもらっちゃった~」

 それはそれでと、むふふと、ほくそ笑む。

「あ、そうだ。言う暇なかったけど、二人とも、新しい服似合ってるね! さすが、バーシセンス!」

「あんがとなー。エンブレムがかっけーぜ。シャロンもイカしてるよな!」

 ククがシャロンと肩を組むと、彼女が照れてうつむく。

「今日のシャロンは、なんだか静かだね」

「いや~……初めて着るタイプの服なんで、照れくさいんす」

 もじもじと、人差し指を突き合わせる。

「こいつ、この服を巡って、おばさんとかなり、バチバチしたらしいぜ。最後には、根負けさせたわけだけど」

「へえ~。やっぱり、お母さん厳しいんだね?」

「厳しいというか、ママ、ちょっと生真面目すぎるんすよ」

 肩をすくめ、ため息を吐くシャロン。幸せが逃げちゃいますよー?

「ボクも、ソフトクリーム食べたくなっちゃった。買ってくる!」

 ソフトクリーム屋台へ、ぴゅー! チョコソフトを買いました。

「バーシー。一口ずつシェアしよー」

「いいよー」

 まだ口をつけてない部分を、ぱくっとひとかじり。甘~い。冷た~い!

 今度は、こちらのチョコソフトを差し出すと、バーシもひとかじり。それにしても、女の子って、平気でこういうことやるよね~。ボクもすっかり、女子ワールドに馴染んだもんです。

「ククたちは、やらないの?」

「んー? なんかさっき、アユムんとこで甘いの食べたから、ソフトクリーム気分じゃなくって」

「で、姉さんが食べないなら、自分も……って感じっすね」

 ほんと、二人は仲良しだねー。

「とりあえず、歩きながら話さない?」

 バーシの意見に、全員賛成。

 日の沈みつつある、ライトに照らされた街を、散策するのでした。
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