ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!

みなはらつかさ

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第三十話 九月二十三日(金) プチ家出!? ―前編―

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 夕方、裏口の呼び鈴が鳴ったので、どなたでしょー? と開けてみれば、なにやら大荷物を持ったシャロンが。

「こんばんは。どしたの? 遊びに来たにしては、妙に荷物が多いね?」

「家出したっす。何も言わずに、泊めてくれるとありがたいっす」

 一瞬固まった後、「えーっ!?」と叫ぶ、ボクでありました。


 ◆ ◆ ◆


「いやァ、嬢ちゃん。そこを、『ハイそうですか、どうぞ』というわけにァいかねェよ」

 ボクでは持て余してしまったので、とりあえず、おじいちゃんに話を振ってみた。

「そこをなんとか、お願いするっす! 食料も持ってきたんで!」

 困って、顔をおじいちゃんと見合わせる。

「そもそも、なんで家出なんて話になったのさ」

「小テストあったっすね?」

「うん、あったね」

 ユニオン語だったな。ユニオンは、前世でいうイギリスみたいな国。

「それの結果が悪くて、ママ、『最近できた、お友達が良くないんじゃない?』って、言うんすよ。自分のことで、どうこう言われるのはいいんすけど、アユムっちたちのことを悪く言われるのは、ガマンできなかったっす」

 うーん。それは、その場にいなかったボクも、カチンとくる話だな。横のおじいちゃんも、眉をしかめている。

 でも、個人的感情は、一旦飲み込んで。

「なら、ボクのうちに家出なんて、かえって良くなかったんじゃない?」

「いつもだったら、こういうとき、姉さんの家に行くんすけど、間が悪いことに、姉さんち、今日親戚が遊びに来てるんすよ」

 なるほど。

「とりあえず、親御さんには電話させてもらうけどいいかい? このままじゃ、話が大事おおごとになっちまわァ」

「……そうっすね、ユーカイだとか、ヘンな話になってもご迷惑っすし」

 それを受け、電話へ向かうおじいちゃん。

「とりあえず、今日は泊めるしかないか。もう、夜になるし」

「そうさせてもらえると、ありがたいっす」

「おばあちゃん、いいよね?」

 お願いすると、こくこくうなずく。

「おねーちゃん、このおねーちゃんだーれ?」

 そこにやってきた、ハーちゃん。

「ああ、シャロン。ボクのお友達」

「はじめましてっす」

「はじめまして」

 互いにお辞儀。

「ハンコーキって聞いてたっすけど、そんな感じしないっすね?」

「いろいろあってね。直ったみたい」

 互いに、小声で耳打ちする。

 なんか電話口が騒がしいので、おじいちゃんのほうに近づくと、どうも雲行きが怪しい。

「アユムは関係ないでしょう。そりゃ、娘さんが反抗期抜けだせないわけだわ」

 あちゃー。口論になっちゃってる。

 「代わって」と、肩を叩く。

「お電話代わりました。アユムです。おじいちゃんが失礼なことを言ってしまい、すいません」

「あなたが? うちのシャロンを、たぶらかさないでもらえます?」

 キョーレツな人だな。カチンとくるのを、ガマンガマン。

「たぶらかすだなんて。ただ、普通の友達付き合いをしているだけですよ。今日はもう夜になってしまいますので、明日、うちで話し合いませんか? うちは『トマラン』という食堂で、電話帳に住所が載ってますので。シャロンがご心配でしょうけど、きちんともてなさせていただきますので。それでは、失礼します」

 ふう。有無を言わせず、押し切ったぞ。

「すまんな、アユム。お前のこと悪く言われたら、頭に血が上っちまった」

「ううん、ありがとう、おじいちゃん。でも、ときと場合によるね」

「面目ない」

 しゅんとするおじいちゃん。こんなおじいちゃん、珍しいな。

「それより、シャロンの持ってきた食料って、カップ麺とかでしょ? ちゃんとしたの、食べさせてあげる。ね、おじいちゃん?」

「おう。任せてくんな」

「え、そんな。悪いっすよ」

 手を振って、遠慮するシャロン。

「なァに、一人ぶん多く作るのも一緒よ。遠慮なく、食べてくんな」

「……ゴチになるっす」

 これは断りきれないと悟ったか、シャロンが折れた。

「お風呂は?」

「まだっす」

「じゃあ、入っていきなよ。今、用意するね」

 というわけで、お風呂の準備。

 おじいちゃんは、調理中。何ができるのかな?

 とりあえず、今日はシャロンを落ち着かせることに、専念しよう。

 しかし、いろんなご家庭があるもんだねー。
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